自閉症?ただの子供らしさ?専門医はどう判断する?|息子が診断された時の実例も

自閉スペクトラム症の特性と、定型発達の幼児期の特性は非常によく似ています。一般の小児科医では「その子が自閉症スペクトラムかどうか」の言及を避けるほどです。慎重な発達外来では、月一回の診察を半年続け、その後に判断するほどです。
今回は、その子が自閉症かどうか、どのように診断を下されるのか見ていきます。息子が2歳5ヶ月で診断された時の様子もまとめています。
自閉症・自閉症スペクトラム(ASD)の診断
◆参考◆自閉症と自閉症スペクトラムの違いはこちら
その子が自閉症スペクトラムかどうかは、専門医が、母親への「問診」と「その子を観察」することで診断されます。具体的な内容を見ていきましょう。
国際的な診断基準がある
自閉症スペクトラムの原因は、現代でもこれといった確定的なものはありません。
そのため、自閉スペクトラム症は、ICD-11やDSM-5に載っている操作的診断基準を参考に判断されます。診断基準の内容はとても複雑なので、下記ページで詳しく解説しています。
その子の様子から診断する
専門の臨床医は、操作的診断基準と照らし合わせて診断を行うというより、その子の視線や表情、やりとりで判断しているようです。1)
お茶の水女子大学大学院の教授であり、NHKのすくすく子育てやハートネットTVの解説でもおなじみの榊原医師も、その子が自閉症かどうかは、会った時のその子の様子で分かるとおっしゃっています。

私たち臨床の医師は,(中略)診察室に入るときの行動,表情,知らない他人(つまり私たち)に会ったときの子どもの視線や表情,そしてこちらからの働きかけ(名前を呼ぶ,年齢を聞く,簡単な質問をするなど)に対する子どもの視線の動きや表情,体の動きなどから診断を行っているのである。
日本音響学会誌63巻7号〔2007)Pp.365-369 「特集―小特集言語障害を通して再考する音声語情報処理― 自閉症児の言葉」榊原 洋一 p.368
1歳6ヶ月児健康診査でも発達チェックに利用されている共同注意に関する言動は、素人でも判断しやすいポイントです。具体的な様子は下記ページにまとめていますので、ご参考になれば幸いです。
血液検査や脳波検査は?
脳波検査や血液検査は、特に子どもが小さい頃は、しないことが多いと思います。理由は下記ページにまとめています。
ASDの診断は難しい
自閉症スペクトラムの診断は難しく、一度診断されても何年か経つと「もう自閉症とは言えない」と判断される子もいるほどです。下記ページで説明していますので、ぜひあわせてご参考になさってください。
ASDう受け入れることも難しい
愛しのわが子が自閉症スペクトラムだなんて、親としては受け入れるのが辛いです。障害需要については下記ページにまとめています。どなたかのご参考になれば幸いです。
息子がASDと診断された時のこと
私は息子が2歳3ヶ月のときに、発達外来に予約しようと決意しました。そして、2歳5ヶ月で発達外来へ行き、その日にASDと診断されました。その日の流れを簡単にまとめました。
発達外来【受診の内容】
問診票の記入
大学病院の総合受付後、小児科・発達外来の受付へ。そこで発達につての問診票を渡され、待合スペースで記入しました。問診票はよくある発達チェックの内容で、チェックしたり、気になる点を記載していきます。
手元にその問診票はありませんが、参考までに、有名なM-CHATという「子供を対象とした自閉スペクトラム症のリスク評価アンケート」内容について、後日別ページでご説明しますね。
話しを戻しまして。その後、順番が来るまで待合スペースで待ちました。その時の様子はこちら。
息子は当時多動もあり、キッズスペースでは楽しそうに過ごせていましたが、別の科の方までウロウロしてしまう時間も長く大変でした。
しかし、発達外来に来ているという大義名分(笑?)もあり、一般的な場所にいるときよりも、気持ちは楽な感じで面倒を見られました。
息子の観察
そして診察室へ呼ばれます。
発達の遅れのある2歳時ですので、息子に対しては難しいテストなどは出来ません。
なので、診察内容は、お医者さんと簡単にやり取りをしたり、親から聞き取りをしている間の息子の様子を観察する程度です。
多動もあり診察室のドアを開けすぐ出ていこうとするので、診察中は看護師さんなどが何とか相手をしてくださいました。
親への聞き取り
親に対しては、発達についての問診票をもとに行う聞き取りです。
あわせて私は、上記の待合室(キッズスペース)での動画も含め、日常生活で息子の気になる様子の動画を見てもらいました。
その後、その場で診断を告げてもらいました。その内容は長くなるので、まずは下記の参考情報を2つご説明します。
【参考1】病院サイトの診察内容
対象
- 12歳までのこども
- 精神神経疾患全般に対する診断・治療
- 発達障害
- 注意欠陥多動性障害
- 統合失調症などの精神病性障害
- つ病・躁うつ病などの気分障害
- 不安障害
- 摂食障害など
診察方法(思春期のお子さん枠)
- 各種類の質問紙による症状評価
- 構造化面接
- 頭部CT・MRI(画像検査)
- SPECT(脳血流検査)
- 脳波
- 神経心理検査など
診察方法は、”思春期のお子さんに対する外来診察での取り組み” の枠のみの記載でした。
なので2歳の息子に対しては、診察内容の上2つでの診断結果となります。
【参考2】診察してくれたお医者さん
息子を診断してくださったのは、発達外来の診療部部長で、教授の先生でした。
その先生の専門分野は、一般精神医療、認知行動療法、精神神経薬理。認定医としては、精神保健指定医、精神保健判定医、日本精神神経学会精神科専門医・専門研修指導医という情報でした。
診断結果
お医者さんからの診断は、その場で言ってもらえました。
結果は「まだ3歳前なので確定はできませんが、自閉症スペクトラムと言えるでしょう。」というものでした。
先生はこちらからの質問にも丁寧に答えてくださいました。そして、アドバイスは、下記のようなものでした。
- 既に親子教室に通っていたので、今はそのようなサポート、つまり療育を続ける程度でいいでしょう
- 後にてんかんなど発症する子もいるので、頭の片隅に覚えておいてください
その時には保育園には退園していたため、特に書類も必要なかったので診断書などはもらわず、口頭での診断のみで終了しました。
次回診察は
希望すれば、また診てくださるとのことでした。
私はその受診で納得でき、質問も解消していため、次回予約はしませんでした。
お医者さんも、病院が行う治療はなく、療育は基本的に地元の支援センターがメインになるため、相談がある時にはまた来てくださいねという感じでした。
診断から一ヶ月後:てんかん発作
上記診断から一ヶ月後のことです。息子は初めて【てんかん発作】を起こしました。大発作というカクカクした発作の後、意識を失いチアノーゼも出現しました。救急車で近くの三次救急の病院へ搬送してもらいました。
発達外来の診療部の先生から言われていたばかりだったので、その的中に驚きでした。
結果、息子は【難治性てんかん】でした。
ちなみに自閉症・自閉スペクトラム症の子が全員【てんかん】を発症するわけではないので、ご不安になってしまった方は安心してくださいね。
自閉症児に脳波検査を行う医師は多いが,それは脳波所見が自閉症の診断に必要だからではなく,自閉症児の15%前後がてんかんを合併し,過半数でてんかん性の脳波異常が見出されるからに過ぎない。脳波から自閉症の診断はできないのである。
榊原 洋一
参考文献の引用
1) 操作的診断基準を使って診断する事は少ない
私たちは前述の診断基準に当てはめながら確定診断を行うのだろうか。私を含めて大部分の自閉症を診る医師は,診断基準を使って診断することは少ない。診断基準はむしろ後から診断を確認したり,あるいは報告書に記載するときの証拠として利用することが多いのである。
榊原 洋一
まとめ
今回は小さい子どもの自閉スペクトラム症の診断はどのようにされるのかを、息子の実例も併せて記載しました。
上記にも書いたように思春期の子どもではまた様子が違うかもしれません。しかし基本的には、操作的診断基準を背景に、専門医が様子を見て診断をするというイメージです。
自閉スペクトラム症は早期発見・早期療育できるに越したことはありません。
発達の専門病院や外来は、予約制かつ予約もすぐに埋まってしまいます。もしお子さんの発達で不安を感じている方がいらっしゃたら、早めに行動してみてはいかがでしょうか。
専門家と話して共感してもらえたり、専門家の目からわが子がどう映るのかも大切なので、余力が出来たらぜひ専門外来への予約をしてみてください。
読んで下さってありがとうございました!