【WISC-Ⅳ】結果の見方|これさえ見れば疑問は全て解消!

2021年1月19日

WISC-Ⅳ_結果の見方_わかりやすい解説

【WISC-Ⅳ】結果の見方について、項目の用語の説明だけではなく、それが意味することを、初めての人でも分かりやすく、順序だてて説明していきます。

結果の項目がたくさん

田中ビネー知能検査Vでは、数値としては全体的なIQ1つだけ求められますが、【WISC-Ⅳ】では、CHC理論という最新の知能理論に基づいて5つ(必要に応じて7つ)のIQが求められます。

さらにIQ以外にも、たくさんの項目数値化されて求められます。

保護者に渡される検査結果だけでも、下記のような項目があります。

項目合成得点
(IQ)
パーセンタイル順位
「後ろから」どのくらいの順位か?
信頼区間90%
考えられる誤差
全検査IQ(FSIQ)48<0.145-56
言語理解指数(VCI)550.152-67
知覚推理指数(PRI)600.457-72
ワーキングメモリー指数(WMI)540.151-65
処理速度指数(PSI)580.356-72
【WISC-Ⅳ】 検査結果の例(その1)知的障害の息子の場合

なぜ項目がたくさんあるの?

理由は下記になります。

理由は

CHC理論に基づき、5つの知能要素を採用し、認知機能の【弱み】と【強み】を解明するため

詳しく見ていきましょう。

CHC理論に基づき、

その理由は、【WISC-Ⅳ】がCHC理論という最新の知能理論に基づいて問題が作成されているからです。

この理論は、検査結果を読み取るために必要な情報なので、簡単に説明しておきます。

CHC理論

画像はWikipediaより

CHC理論とは、知能は単一な「一般的な能力」だけで成っているのではなく、3層構造であるという最新の知能理論モデルです。

  • CHC理論(Cattell–Horn–Carroll理論)
    • 第Ⅲ層の「一般的な能力(g)」は、その人の知能の土台のようなもの
    • それは、第Ⅱ層(幅広い能力)の10の要素から成り立っている(画像では8個の丸)
    • 第Ⅱ層は、さらにそれぞれ第Ⅰ層(狭い能力)の複数の要素から成っている
    • 各要素は、多少の凸凹はあるが極端な差が生じることは少なく、正の相関を持っている可能性が高くなっている

5つの知能要素を採用し、

WISC-ⅣとCHC理論の知能因子

【WISC-Ⅳ】では、CHC理論でいわれている10の要素から、下記5つの知能要素を採用しています。

  • 結晶性知能(Gc)…知識量語彙量論理的思考能力
  • 流動的な推論(Gf)…推理力ひらめきに関する能力
  • 視覚的処理(Gv)…視覚に関する能力
  • 短期記憶(Gsm)…聴力に関する能力
  • 処理速度(Gs)…集中力注意力に関する能力

認知機能の【弱み】と【強み】を解明するため。

上記の知能要素をそれぞれ数値化することにより、検査を受けた子の認知機能の【弱み】と【強み】が分かるようになっているのです。

WISCは知的な突出性、学習障害、認知の強さや弱さを特定する評価群の一部として使える。

Wikipedia「児童向けウェクスラー式知能検査」より引用

【弱み】と【強み】が分かれば、発達面で心配がある子に対して適切な支援をする手立てを考えられるようになるからです。

POINT

検査の結果をうけて、一人ひとりのニーズに応じた指導計画を立て行動面社会性への支援をする手立てを考えられるようになる

WISC-IVを使い方により、学習障害や認知欠如などへの介助など教育的調停を行うための情報が得られる。

Wikipedia「児童向けウェクスラー式知能検査」より引用

例えば上記の例では下記のようなことが分かります。

POINT

検査結果の例(その1)では、ワーキングメモリー指数が最も低いことが分かる。

ワーキングメモリーが弱い場合、新しいこと・資料を学ぶときに、より多くの繰り返しが必要になる可能性が高いことが分かる。

そのため、常にメモの活用が必要。作業に慣れまで、何をすべきなのかということや、工程をメモに書いて貼っておくという支援が有効的である、などということが分かる。

また、悩むことが少ないように

他にも悩むことが少なくても済むような情報が載っています。詳細は後の章で説明する「結果の見方」で解説しますが、概要はこんな感じです。

POINT

検査結果の例(その1)では、同年齢集団の中では、彼よりも数値が低い子はあまり存在しないことが分かる。つまり、悩むことなく特別な支援を必要とする子のクラスに在籍していいと言える。

また、検査当日、風邪気味だった、空腹だったから受け直したいと思っても、この検査を例えば10回受けた場合、9回は信頼区間内の数値になる。状況に応じた数値の上下のことも考えられているので、信頼度は高い、つまり、短期間で何度も受ける必要はない、ということがわかる。

これらが、【WISC-Ⅳ】の検査結果の項目がたくさんある理由です。

【WISC-Ⅳ】で分かる認知機能は?

4つの認知機能

【WISC-Ⅳ】では、検査結果の採点から、その子の4つの認知機能言語理解知覚推理ワーキングメモリー処理速度を、下記の4つの指標として算出します。この指数の数値がIQです。

POINT

【WISC-Ⅳ】では、検査を受けた子の、言語理解知覚推理ワーキングメモリー処理速度の4つの認知機能をIQとして数値化することができる。

それらの認知機能を構成している、CHC理論に基づく知能要素は下記になります。

認知機能の種類構成する知能要素
言語理解指標(VCI)結晶性知能(Gc)
知覚推理指標(PRI)流動的な推論(Gf)と 視覚的処理(Gv)
ワーキングメモリー指標(WMI)短期記憶(Gsm)
処理速度指標(PSI)処理速度(Gs)

【WISC-Ⅳ】は、4つの知能要素を測るため、問題自体も4つに大分類されています。問題例は、下記ページで詳しく説明しています。 

4つの認知機能、どんな機能?

4つの指標は、下記のようなことが分かる数値です。

  • 言語理解指標(VCI):この子は、言葉理解して考える力はどのくらいかな?
  • 知覚推理指標(PRI):言葉ではなく、見て理解して考える力はどのくらいかな?
  • ワーキングメモリー指標(WMI):人の話を聞く力はどのくらいかな?
  • 処理速度指標(PSI):機械的な単純作業のスピードはどれくらいかな?

WISC-IVでは全般的な知的能力を示す全検査IQ(FSIQ)と、以下に示す4つの構成スコアが結果として示される。

  • 言語理解指標(Verbal Comprehension index、VCI)
  • 知覚推理指標(Perceptual Reasoning Index、PRI)
  • ワーキングメモリ指標(Working Memory Index、WMI)
  • 処理速度指標(Processing Speed Index、PSI)
Wikipedia「児童向けウェクスラー式知能検査」より引用

上記からも分かるように、【WISC-Ⅳ】では、IQが別の表現として乗っているため、【WISC-Ⅳ】の結果の見方を説明する前に、少しIQについても説明しなくてはなりません。

【WISC-Ⅳ】で分かるIQ

前提1:IQは「合成得点」として表現される

合成得点とは、複数の得点を合成して算出した得点である。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #12」より引用

【WISC-Ⅳ】のIQは「合成得点」と表現される、と捉えると分かりやすいです。

検査から合成得点を算出する方法は、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

前提2:IQの種類は【DIQ】

IQは2種類存在しており、【WISC-Ⅳ】では同年齢集団の中でのその子の位置を示す【DIQ】が求められます。もう一つのIQは、その子が何歳の人と同じかを示す【従来のIQ】であり、田中ビネー知能検査Vなどで求められます。

IQについては、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

ここまでの情報を読んでいただければ、下記の結果の見方について無駄に頭を悩ませることはなくなりました!

お待たせしました、結果の見方を一項目ずつ見ていきましょう!

【WISC-Ⅳ】の結果の見方

下記は知的障害ではない一例です。ここにある項目について詳しく説明していきます。(この例で読み取れる情報の詳細説明は、最後に載せています。)

項目合成得点
(IQ)
パーセンタイル順位
(「後ろから」どのくらいの順位か?)
信頼区間90%
(考えられる誤差)
全検査IQ(FSIQ)821278-88
言語理解指数(VCI)580.355-69
知覚推理指数(PRI)1046196-111
ワーキングメモリー指数(WMI)1005093-107
処理速度指数(PSI)861880-96
【WISC-Ⅳ】 検査結果の例(その2) 数値参考:「通常学級におけるインクルーシブ教育の実践」星槎大学 岩澤 一美准教授

4つの指数(VCI、PRI、WMI、PSI)

上記で説明したように、その子の言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の認知機能をIQとして数値化した項目です。

IQが低い項目がある場合

上の例では、言語理解指数が他の指数に比べて低いことが分かりますね。すると、下記のようなことが分かるのです。

POINT

言語理解が弱い場合、こちらの言っている指示や説明を、理解できていないことや自分の言いたいことを上手く表現できていない可能性が高いことが分かる。

そのため、常に本人が分かる言葉での指示・会話が必要。

例)「あれ取って」「早くしなさい」「片付けなさい」などの抽象的な指示ではなく「棚に置いてある、ペンを、お母さんに下さい」「朝ご飯は、7時30分まで」「脱いだ靴下を、カゴに入れて」などわかりやすい言葉で、簡潔に、ゆっくりと伝える必要がある、ということが分かる。

このように、4つの指標としてのIQからその子の【弱み】と【強み】が簡単に読み取れ、結果を見た人が支援につなげることができます。各項目のIQが低い場合の支援法については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

全検査IQ(FSIQ)

簡単には、全検査IQがその子の総合的なIQというイメージです。

全検査IQは、4つの指標の「評価点合計」を合計し、そこから算出することで求められます。

4つの指標の平均ではありません。

「評価点合計」については「前提1:IQは「合成得点」として表現される」項目にリンクを貼った「【WISC-Ⅳ】合成得点(IQ)の求め方」ページで詳しく説明いています。

日本版WISC-Ⅳの最大の特徴は、10の基本検査の実施で5つの信頼できる合成得点(FSIQ、VCI、PRI、WMI、PSI)が算出可能(中略)になったことではないだろうか。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #5」より引用

全検査IQが70以下は、知的障害か?

もし全検査IQが70以下の場合は、知的障害の可能性が高いです。しかし知的障害はこの検査結果だけでは診断されません。

知的障害については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

【パーセンタイル順位】

WISC-Ⅳ_結果の見方_パーセンタイル

パーセンタイルは「自分の下には何パーセントの人がいるのか?」が分かる統計学で用いられる数値です。

例えば、パーセンタイル順位が20の場合は、同年齢集団の中には、その子どもよりも得点の高い子どもが80%存在することを意味する。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #12」より引用

よって、IQのパーセンタイルは、数字が大きいほど喜ばしいものとなります。

POINT

100人の母集団の場合、パーセンタイルは「50」が真ん中(中央値)、「99」はとても良い順位、「1」はとても悪い順位。「1」以下、「99」以上は小数点でも表される。

IQの分布は正規分布であることは上記リンク「【IQ】と【DIQ】違いと求め方|ビネーは従来のIQ、WISCはDIQ」ページでも説明していますが、平均的なIQほど人数の割合高いです。

POINT

平均的なIQほど人数の割合が高いため、IQが低いと、パーセンタイルの数値が一気に「2」や「3」と小さくなってしまう

息子のWISC-Ⅳの全体的なIQは48だったのですが、そのパーセンタイルが「<0.1」でちょっとビックリしました。しかし確率論と分かると納得でき、この数値の人はあまりいないということが、はじめて数値的に分かり参考になりました

厳密には異なりますが、分かりやすく言うと、下記のイメージです。

  • 知的障害と言われるIQ69 → パーセンタイル2(後ろから数えて2番目)
  • 平均レベルの真ん中であるIQ100 → パーセンタイル50(後ろから数えて50番目)
  • 超人的なIQ130 → パーセンタイル98(後ろから数えて98番目、ほぼ先頭)
  • ※息子の実例:全体的なIQ48 → パーセンタイル0.1(後ろから数えて0.1番目。すごい表現だ…)

聞き慣れない言葉ですが、実は一度は目にしたことがあるであろう、母子手帳に乗っている乳幼児の体重・身長の身体発育曲線に使用されています。

WISC以外のパーセンタイルの例

【信頼区間】

「同じ検査を受け直したとして、今回との誤差はどのくらい考えられる?」という信頼区間という情報も同時に結果として提示されます。

一度の検査から得られた得点は、さまざまな要因による誤差を含んでいる可能性がある。したがって、私たち刊行委員会は、検査結果を解釈および報告する際には、「点」ではなく、一定の幅、すなわち「区間」を用いることを推奨しているこの区間が信頼区間である。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #12」より引用
POINT

90%信頼区間の場合、10回同じ検査を行えば、確率として9回程度の頻度で「合成得点は○○~●●」という結果が得られる、ということ

日本版WISC-Ⅳでは、信頼水準が95%の場合の信頼区間と、90%の場合の信頼区間が用意されている。95%信頼区間は、90%信頼区間よりも幅が広く、子どもの得点の解釈が難しくなることから、通常は90%信頼区間を使用することが推奨されている。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #12」より引用

補足:上記以外に算出できる2つのIQ

【WISC-Ⅳ】では、全検査IQ(FSIQ)、4つの指標としてのIQ(VCI、PRI、WMI、PSI)以外に、さらに2つを求めることも可能です。

その項目が載っている人もいると思うので、簡単に説明しておきます。

  • 一般的知的能力指数(GAI:General Ability Index)…言語理解指標(VCI)と知覚推理指標(PRI)から算出
  • 認知熟達度指数(CPI:Congntive Proficiency Index)…ワーキングメモリ指標(WMI)と処理速度指標(PSI)から算出

GAIは結晶性能力、言語性流動性推理能力、非言語性流動性推理能力を反映する指標、CPIは熟達して自動化され、情報を流暢に処理する能力を反映する指標と言うことができる。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #11」より引用

GAIは全検査IQを構成する4つの指標がとても乖離してしまい、正確な全検査IQの推定が難しい場合に、全般的な知的能力として使用することができます。

学習面でつまずいている子どもではWMIやPSIが弱い場合が少なくない。あるいは、運動機能に障害のある子どもはPSIの実施が困難である。これらの指標の弱さが必要以上にFSIQを引き下げ、先に述べた知能と学力のディスクレパンシーによる判断に支障をきたすことがある。こうしたときにGAIを全般的知能能力の推定に用いた方がよい場合がある。

日本文化科学社「日本版WISC-IVテクニカルレポート #11」より引用

4つの指標から全検査IQを算出する方法は、「【WISC-Ⅳ】合成得点(IQ)の求め方」ページで説明しています。

また、子供の全検査IQとGAIの間の重大な不一致は、学習障害を示している可能性があるという情報もあります。 

Significant discrepancies between a child’s FSIQ and GAI may indicate a learning disability. 

Resources by HEROESUnderstanding Your Child’s WISC-V Scores" より引用

まとめ

今回は、【WISC-Ⅳ】の結果の見方を、必要な情報も含め説明してきました。

【WISC-Ⅳ】の概要、検査方法、どんな子が受けているかなどは、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!