【特別支援教育コーディネーター】とは?

特別支援教育コーディネーターとは?

特別支援教育コーディネーターとは?

特別支援教育コーディネーターとは、障害がある子が的確な特別支援の教育を受けられるように、関係各機関の窓口となり、校内外の特別支援を推進するための役割を担う先生のこと。

校長が指名

資格があるわけではなく、校長(園長)によって学校(園)の中から適任と思われる先生が指名されます。

各学校の校長は、特別支援教育のコーディネーター的な役割を担う教員を「特別支援教育コーディネーター」に指名し、校務分掌に明確に位置付けること。

文部科学省 ?特別支援教育の在り方に関する特別委員会 論点整理 参考資料12「特別支援教育の推進について(通知)」文部学省初等中等教育局長 銭谷眞美 平成19年4月1日

求められる資質

特別支援教育コーディネーター指名の際に求めらる資質には、下記のようなものが挙げられます。

  • 交渉力や人間関係調整力
  • 教育に関する一般的な知識
  • 障害のある児童生徒の発達や障害全般に関する一般的な知識
  • 障害のある児童生徒の教育に関する法令の知識、教育課程や指導方法
  • 障害児本人・保護者、障害児の担任の立場になって相談を受けられるカウンセリングマインド

なぜ必要?

インクルーシブ教育システム推進のため

現在、国は世界と並行してインクルーシブ教育システムを推進しており、そのためには特別支援教育が重要になります。インクルーシブ教育システムについては、下記ページで詳しく説明しています。

特別支援教育には、関係機関との連携が必要

障害児への特別支援教育に対しては、専門性の高い教育だけでなく、医療や専門機関(心理、PT、ST、OTなど)との連携、行政・民間のサービスも含めたコーディネートが必要になります。

小・中学校においては,教職員の配置や施設・設備の状況は必ずしも十分な状況ではなく,各学校での対応には限りがあるために,盲・聾・養護学校や医療・福祉機関との連携協力が大切です。

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所「第1章 特別支援教育コーディネーターとは

連携が必要な例

例えば幼稚園の先生の声では、障害児への指導に関して、専門の巡回相談員が園に来て集団の中での幼児の様子を観察してもらい、指導・助言を受けられたことは、支援方法の見直しや全職員の情報共有などに繋がり、大きな成果があったというものがありました。参考:文部科学省「幼稚園における障害のある幼児の受け入れや指導に関する調査研究」奈良県桜井市

また、障害児や特別な支援が必要とされる子どもについては、全員に対して幼児から学校卒業まで「個別の教育支援計画」などを作成することが文部科学省により定められています。これは、教育機関が中心となって作成するのですが、その内容は上記の関係機関と協力して作成するものなのです。

特別支援教育コーディネーターが必要になってくる

つまり、障害のある子どもたちが適正な特別支援教育を受けることは、一人の担任だけで・校内だけで完結できるような簡単なものではありません。

そのため、特別支援教育のための業務は、国全体で「校務」として位置付けられました。

そこで、どんな子でも皆と同じ環境で学べるインクルーシブ教育システムを作るためには、各校に最低でも1人ずつ特別支援教育コーディネーターが必要なのです。

特別支援教育コーディネーターは,保護者や関係機関に対する学校の窓口として,また,学校内の関係者や福祉,医療等の関係機関との連絡調整役としての役割を担う者として,位置付けられています。

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所「第1章 特別支援教育コーディネーターとは」

特別支援教育コーディネーターを校務として明確に位置付けることにより,学校内の教職員全体の特別支援教育に対する理解のもと学校内の協力体制を構築するとともに,小・中学校又は盲・聾・養護学校と関係機関との連携協力体制の整備を図る。

文部科学省 ?特別支援教育について 資料3「特別支援教育コーディネーター養成研修について ~その役割,資質・技能,及び養成研修の内容例~」平成22年10月

役割

特別支援教育コーディネーターの役割は主に下記です。

  • 校内の特別支援教育の充実
    • 特別支援教育関係情報の収集
    • 特別支援教育の理解の推進のための資料の作成、校内研修の企画運営
    • 校内児童生徒の実態の調査・把握・整理・分析→校内への共通理解の推進
    • 個別の教育支援計画等の作成
  • 校内の教員からの相談窓口
  • 保護者に対する窓口
    • 相談窓口
    • 理解啓発のための資料作成・配布、研修の企画運営
  • 校外機関に対する窓口
    • 医療機関や専門機関(心理、PT、ST、OTなど)、行政・民間のサービス機関への相談、連絡調整
    • ネットワークの構築

特別支援教育コーディネーターは,校内や福祉,医療等の関係機関との間の連絡調整役として,あるいは,保護者に対する学校の窓口として,校内の関係者や関係機関との連携協力の強化を図るためのものです。

独立行政法人 国立特別支援教育総合研究所「第1章 特別支援教育コーディネーターとは」

知識が少ない場合は

任命された先生に専門知識がない場合は、特別支援教育のための校外研修などに出席します。(しかし、それが負担になるという声もあり、先生の負担を減らす取り組みもまだまだ必要そうです。)

特別支援教育コーディネーターの専門性として、障害についての専門性を高めるべき、という声があるが、障害全部がわかる人は誰もいない。(中略)校外研修だけでは、本人、職場の仲間の負担になる。コーディネーターが学校で研修をできるような、そういう制度とセットで考えるべき。

文部科学省 初等中等教育局特別支援教育課「資料6-5:特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第12~14回)における教職員の確保及び専門性の向上に関する主な意見」平成24年02月

文部科学省が挙げる特別支援教育コーディネーターの研修内容例は、下記のようなものです。多くの都道府県等が、下記のような研修を行っています。

  • 小・中学校の特別支援教育コーディネーター養成研修の内容例
    • 特別支援教育コーディネーター概論
    • コーディネーターに求められる個人情報の管理
    • 支援体制の構築とチームによる支援
    • 特別な教育的ニーズのある児童生徒の教育の実践に関すること
    • 事例研究 チームによる支援(演習)
    • 連絡・調整力の養成・向上(演習)
    • コーディネーションの計画と評価
  • 特支援学校においては、さらに下記も追加される
    • 関係機関とのネットワークの構築
    • 事例研究 ネットワークの構築(演習)
  • 参考:文部科学省  特別支援教育について 資料3「特別支援教育コーディネーター養成研修について ~その役割,資質・技能,及び養成研修の内容例~」平成22年10月

私立大学院にも、子どもの保育教育に携わっている社会人向けに、文部科学省が認定する「職業実践力育成プログラム」として、夜間に「特別支援教育コーディネーター育成コース」が設けられているところもありました。

例)関西国際大学 特別支援教育コーディネーター養成コース(履修証明プログラム)

その他に、特別支援学校や児童発達支援センター等から支援も得ながらで補っていきます。

特別支援学校のコーディネーターは

前述したように、専門知識の少ない地域の学校へも支援するための機能も任されます。幼稚園、保育所等なら児童発達支援センターもその役割を担います。

盲・聾・養護学校の特別支援教育コーディネーターは,これらに地域支援の機能として,(3)小・中学校等への支援が加わることを踏まえ,(4)地域内の特別支援教育の核として関係機関とのより密接な連絡調整が期待される。

文部科学省 ?特別支援教育について 資料3「特別支援教育コーディネーター養成研修について ~その役割,資質・技能,及び養成研修の内容例~」平成22年10月

多くの学校が配置済み

これまで見てきたとおり、国が学校・園の先生の中に「特別支援教育コーディネーター」を配置することを推進しています。

平成19年4月に学校教育法の一部が改正され、特別支援教育が法的にも位置付けられました。本件においても、各学校においては、校内委員会が設置され、特別支援教育コーディネーターが指名されるなど、特別支援教育の体制整備が進められてきました。

埼玉県教育委員会「個別の教育支援計画・個別の指導計画を活用した指導事例集」平成22年3月

そのため、既に公立の幼稚園、小・中学校では多くの特別支援教育コーディネーターが指名されています。

平成25年度現在のコーディネーターの指名率は,幼稚園62%,小学校99%,中学校93%,高等学校83%であり,幼稚園・高等学校の体制整備が課題となっている。

文部科学省 ?特別支援教育の在り方に関する特別委員会 論点整理 参考資料12「特別支援教育の推進について(通知)」文部学省初等中等教育局長 銭谷眞美 平成19年4月1日

特別支援教育体制整備状況調査(平成30年度)
(中略)
・特別支援教育コーディネーターの指名 61.9%【公立96.9% 私立42.8%】

文部科学省 新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会 議資料3「幼児教育段階の特別支援教育に関する学びの場の現状と課題」国立特別支援教育総合研究所 上席総括研究員 久保山茂樹 令和2年5月21日

学校の中には、教室に入れなくて保健室までは行ける子どもの対応や医療との窓口として、保健室の先生が特別支援教育コーディネーターに任命されている所もあるようです。

特別支援教育コーディネーターについては、養護教諭を担当にしている学校が多いが、それに加えて、主幹、主任クラスの人を付けるような学校経営上の配慮をしないと難しい。

文部科学省 初等中等教育局特別支援教育課「資料6-5:特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第12~14回)における教職員の確保及び専門性の向上に関する主な意見」平成24年02月

今回はこの辺で。最後まで読んで下さってありがとうございました!