【1歳6ヶ月児健康診査】とは?発達障害のチェック項目は?

1歳6ヶ月児健康診査の発達チェック項目、健診の位置づけや目的について、詳しく見ていきます。

チェック項目はどんなもの?

1歳6ヶ月児健康診査では、下記のようなチェックを行います。

  • 身体的な発達チェック
    • ひとり歩きできるか
    • 手先の動きはどうか
    • 視力
    • 聴力
    • 心音
    • 歯科
    • 予防接種
  • 発達障害のチェック
集団健診と個別健診

私の住んでいる地域の1歳6ヶ月児健康診査では、最初に保健センターで集団健診を受け、そこで「個別健康診査受診票」もらいます。その後、個別(自分)で予約した医療機関へ受診票を持って行くと、無料(公費)で内科健診をしてもらえます。

集団検診は、前提として、初めての環境で親子共々緊張して、子どもが普段の様子でないことは想定済みのチェックになっています。

そのため、問診票や保護者からの聞き取りも重要になります。

発達障害のチェック

1歳半ですとまだ自閉症かどうかの診断はできない月齢です。なので発達障害のチェックでは、主に知的発達社会性・行動の確認が行われます。

知的発達(指さし、ことば等)

応答の指さしができるか、積み木やおもちゃなどを使って言葉での指示に従えるか確認します。

【指さし】と【言語の発達】は、関連例があることが分かっているので、この2つ知的の発達具合をチェックします。

指さし

定型発達児の【指さし】は5段階発達で、1歳半には獲得しているものですが、自閉症・自閉スペクトラム症児では獲得に時間がかかったり、困難であったりします。詳しくは、下記ページをご覧ください。

ちなみに、知的障害を伴う自閉スペクトラム症(自閉症)の息子は、一歳半健診でチェックされる【応答の指さし】は、2歳半頃になってから獲得できました。下記動画の「1:05」頃をご覧ください。

自閉症児は応答の指さしがなかなか出来ない
Youtube【自閉症の特徴 No.3/12】2歳半 1歳半健診の指さしがやっと出来た頃

ことば

言葉に関するチェックは、上記の他にどのくらい言葉が出ているかも確認し、有意味語を3語以上話せていることが(保護者からの聞き取り確認も含めて)分かれば問題なしと見なされます。

1歳6ヶ月以降で言語発達に不安がある場合は、下記ページをご覧ください。

定型発達児の言語発達については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

社会性の発達

保健師さんなどと対面して、コミュニケーションを通して共同注意が成立しているかなどを確認します。

共同注意の代表的な行動は、上述した「指さし」が代表的ですが、それ以外にも、下記のような点を短い間で確認します。

  • 会ったときに「こんにちは」と声を掛けて、目が合うかな?
  • こんにちはの真似ができるかな?
  • 少し慣れてきたあたりで、おもちゃの「はい、どうぞ」と手渡したものを受け取れるかな?
  • その時の視線はおもちゃだけでなくて相手にも向いているかな?
  • おもちゃへの興味を共有できるかな?「ちょうだい」にも応えられるかな?
  • できた時に褒められて嬉しそうにしてるかな?

行動の発達

保護者が記入した問診票や聞き取りも含めて、下記のような点などを確認します。

  • 日常生活上で、簡単なやり取りや指示に従えていますか?
  • 状況に応じて少し待ったりできますか?
  • 大人の真似をしますか?おもちゃや人に興味を示していますか?

気になる点が目立つ場合は?

先述した通り、1歳6ヶ月児健康診査は普段の様子ではないことが前提のチェックなので、正確に回答、応答できる場合のみが正常と判断されるわけではありません

その環境下、初めてのおもちゃや見慣れない絵カードに対しての総合的な反応、保護者が記入きた問診票や、保護者からの聞き取りを含めて判断されます。

それでも気になる点が目立つ場合は、保護者にその旨が伝えられます。

国立研究開発法人 国立成育医療研究センターによる乳幼児健康診査 身体診察マニュアルでは、単に「様子を見ましょう」というあいまいな指示は避け、保護者に具体的に次に取るべき行動伝えるように示されています。

この年齢の子どもは緊張してやりとりに応じられないことが良くあるが、これらの様子が目立つ場合は再評価が必要である。フォローアップを行い、医療機関や療育機関へ紹介する。保護者から普段の様子や育児で気になること・育てにくさがないかどうかを確認することも大切である。

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 平成29 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」平成30年3月 p.2

また短時間であることや、医師による検査を含めた詳細な診察でもないので、そこで病名が確定診断されることはありません。

時間をかけた詳細な診察ではないので、保護者に所見があったことを伝える際には、疑いであっても病名を伝えることは慎重にすべきである。不安を与えるのが健康診査の目的ではない。

乳幼児健康診査 身体診察マニュアル p.2

その他のチェック項目

身体的発育異常、精神的発達障害(知的障害、言語発達遅滞など)以外のチェック項目のは、下記のとおりです。

  • 熱性けいれん
  • 運動機能異常
  • 神経系・感覚器の異常(視覚、聴覚、てんかん性疾患など)
  • 血液疾患(貧血など)
  • 皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など)
  • 循環器系疾患(心雑音など)
  • 呼吸器系疾患(ぜんそく性疾患など)
  • 消化器系疾患(腹部膨満・腹部腫瘤、そけいヘルニア、臍ヘルニア、便秘など)
  • 泌尿生殖器系疾患(停留睾丸、外性器異常など)
  • 先天異常
  • 生活習慣上の問題(小食、偏食など)
  • 情緒行動上の問題(指しゃぶり、多動、不安・恐れなど)
  • その他の異常(児童虐待など)

参考:国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 平成29 年度子ども・子育て支援推進調査研究事業「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」平成30年3月

ここまでは1歳6ヶ月児健康診査のチェック項目について見てきました。続いて、立ち位置や目的について説明いていきます。

法律で定められている健診

1歳6ヶ月児健康診査(一歳半健診、1歳6ヶ月健診などとも呼ばれる)は、3歳児健康診査とともに、法律母子保健法「第二章 母子保健の向上に関する措置」の第十二条)で定められている健診です。

市区町村の責務として、実施が義務づけられている健診なのです。

(健康診査)
第十二条 市町村は、次に掲げる者に対し、厚生労働省令の定めるところにより、健康診査を行わなければならない。
一 満一歳六か月を超え満二歳に達しない幼児
二 満三歳を超え満四歳に達しない幼児

e-Gov 母子保健法

目的は?

健康状態の把握

1歳6ヶ月児健康診査をはじめ、全ての乳幼児健診において、もっとも大きな目的は、健康状態の把握という点です。

これは上記の母子保健法が、国民の健康維持と現代病予防を目的としている「健康増進法の第九条第一項に規定する健康診査等指針」と調和が保たれた内容で行われているためです。

(健康診査の実施等に関する指針)
第九条 厚生労働大臣は、生涯にわたる国民の健康の増進に向けた自主的な努力を促進するため、健康診査の実施及びその結果の通知、健康手帳(自らの健康管理のために必要な事項を記載する手帳をいう。)の交付その他の措置に関し、健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針(以下「健康診査等指針」という。)を定めるものとする。

e-Gov 健康増進法

この健康状態の把握については、個人レベルで疾病を早期発見して早期対応することはもちろんのこと、地域レベルの母子保健事業を計画する際の参考にもなっています。

1歳6か月児健康診査では、身体的発育、運動発達・精神発達、身体所見の異常の有無をチェックする。先天異常の多くはすでに発見され医療機関で相談を受けていることが多い時期であるが、効率よく全身を診察して身体的健康状態を評価することが求められる。

国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 乳幼児健康診査 身体診察マニュアル

相談場所の提供

健診では、普段なかなか出会えない専門家の方々と出会えて相談できる場所にもなっています。

保健師さんや栄養管理師さん、歯科衛生士さんや心理士さんからアドバイスを貰えるのは、子育てに不安を感じている母親にとって、心強い機会になります。

ママが普段気になっていることを小児科医や保健師に相談することもできます。近隣との関係が薄れ、育児をサポートしてくれる人が周りに少なくなっている現在、定期的な乳幼児健診は、ママの不安を緩和する、精神的な支えにもなる貴重な機会にもなっています。

医療法人博仁会 尾木医院 乳幼児健診(乳児健診)とは?どんな目的があるの?

不適切な養育の確認

こちらは大きな目的ではありません。乳幼児健康診査 身体診察マニュアルでも、項目の最後「その他の異常(児童虐待など)」というようにカッコ書きで書かれている文言です。

身体的、精神的項目以外のチェック項目が「その他の異常(児童虐待など)」だけだったので、そのチェックもしていますよという意味で、今回あえて書かせていただきました。

【参考】1歳未満児の健診は、"法的には" 義務づけられていない

1歳6ヶ月児健康診査、3歳児健康診査以外の乳児健康診査については、法律では定められているわけではありませんが、日本ではほとんどの赤ちゃんが受けられています。

1ヶ月児健康診査は、赤ちゃんが生まれた病院の多くがそこで行っていたり、他の医療機関での受診を依頼しています。身体測定の他に、黄疸や心音の確認、おへその状態、先天性股関節脱臼の確認やモロー反射の様子、母乳やミルクのあげ方や量などを診てもらいます。

3~4ヶ月児健康診査・9~10ヶ月児健康診査に関しては、ほとんどの市区町村が母子手帳の別冊などで受診票を配布し、医療機関に委託という形で行われています。

まとめ

今回は、【一歳半健康診査】の目的とチェック項目について詳しく見ていきました。

このサイトをご覧になる方が主に心配されるであろう「精神的発達障害(知的障害、言語発達遅滞など)」のチェック方法や考え方については、上記リンク先などの別ページにて詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!