子どもの【言語発達】を伸ばしたい!大人がしてあげられる重要な1つのこと
子どもの言葉の能力を出来るだけ刺激してあげたいと思ったとき、または、大切なわが子の言葉が遅くて心配になったとき、その子にどうしてあげることがよいのでしょうか?
今回は、子どもの言語発達を伸ばしてあげたい時に、周りの大人がその子にしてあげられる、簡単で重要な【1つ】のことについてお伝えします。
結論
子どもの言語発達を伸ばすために最も重要なことは、親と長時間一緒に過ごし、たくさん言葉掛けをしてもらうことです。
子どもの言語発達は、親との関わり合いがとても重要だということが、多くの先行研究で明らかになっています。
長時間、親子で一緒に過ごすことが、脳の右上側頭回の発達性変化や言語理解機能に好影響を与えていることを明らかにしました。今回の知見により発達期の親子での相互作用が子供の言語発達に重要であることが示唆されます。
東北大学加齢医学研究所「親子で過ごす時間が子どもの言語理解と関連脳領域に影響~脳形態イメージングにより解明~」平成27年1月30日
重要なポイント
「親」ということ
乳時期からたくさん言葉掛けをすることの重要性は昔から言われていますが、その言葉掛けは、他人では効果が薄く、親だと効果が高いことは、脳トレで有名な川島隆太教授の過去の研究でも明らかになっています。
「他人と話すより家族と話すほうが脳の前頭前野は発達する」ということが、今までの研究から明らかになっています。理由は、他人よりも安心して会話ができるため、脳がリラックスしてよく働くからと考えられています。
Active Brain CLUB「親子の会話の質が子どもの自己肯定感を高める」2020.02.21
乳幼児に親が話しかけること、親子で経験を共有することは子供の言語能力を高める一方、親による虐待などで子供の言語機能を低下させ脳の形に影響を与えることが分かっている。
Medical Tribune「親子で過ごす時間、長いほど子供の言語発達に好影響―東北大」2015年02月17日
共同注意
一方的な言葉掛け、テレビの音声では意味がないと聞きました。ただ親と一緒にいることだけが言語発達を促すわけではないということです。
親と子が、共同注意している際の言葉かけが重要です。
乳児は、乳児の注意の外にある物体ではなく、子供が注意を向けている物体について親が話すときに共同注意を行う可能性が高いためです。1)
心理言語学をご専門とされている、カナダ・カールトン大学の廣谷昌子准教授も、脳波検査の事象関連電位を測定する方法を用いた研究で、共同注意は乳児が新しい単語を学ぶのを助けると結論付けています。2)
共同注意に代表される指さしと言語発達の関連性についても、多くの先行研究がなされています。詳しくは下記ページにまとめています。
多くの自閉症児は言語発達が遅いのですが、その一因がこの共同注意の発達が上手くいかないためと言われています。
前言語期からの言葉掛けも大切
共同注意自体は生後間もなくから準備段階が始まり、何かを伝えその情報を共有しようとする叙述の指さしは、早い子では言葉が喋れない9ヶ月から出現します。
つまり子どもの言語発達には、話しはじめる前の時期(前言語期)からの、大人の言葉掛けが大切なことが分かります。定型発達児の言語発達については下記ページで詳しく説明しています。
子どもがより注意を傾ける声を考える
乳児は人工音より人間の声、低い音域(男性)より高い音域(女性)の声に反応しやすいことが分かっています。
さらに抑揚豊かにゆっくりと話しかけるマザリーズと呼ばれる話し方を好み、親は自然とそのような話し方をしていることが観察されています。
それらのことから、前言語期から母親をはじめ周りの人々からの優しい声掛けが大切なことが分かります。
専門家の研究結果
母親が費やした【時間】と【程度】に左右される
複数の大学の心理学教授であるマイケル・トマセロ(Michael Tomasello)教授は、世界的に最も権威のある発達心理学者の一人です。
世界トップクラスの学術研究機関であるマックス・プランク進化人類学研究所の所長でもあるトマセロ教授は、特に幼児期の言語獲得をご専門とされる言語学者でもあり、複数の分野の専門家として認められている世界でも数少ない科学者の一人です。
そんなトマセロ教授は、乳児の非言語的コミュニケーションや、幼児の言語コミュニケーションのスキルは、共同注意に費やした時間と、その際に母親が言語を使用した程度から予測できると述べています。3)
母親をはじめとする養育者が、早期から、より一緒にその環境を共有し、その際に言葉掛けをしてあげることが子どもの言語発達に大切なことが分かりますね。
母親の【言葉掛け】と【環境】に関連
イギリスの大学で発達心理学をご専門とされているジョン・オーツ(John Oates)教授も、子どもの言語発達は、母親の言葉掛けとその環境に密接に関連していると述べています。4)
研究により、母親の言葉掛けの78%は子どもが焦点を合わせているものに一致していると報告しています。そして、言語発達に遅れのある子どもに関しては、そのパーセンテージは50%だけでした。
共同注意が共有されている際に、言葉掛けをすることがいかに有効であるかが分かります。
参考文献の引用 1)~4)
1) 共同注意について
Infants are more likely to engage in joint attention when the parent talks about an object that the child is attending to as opposed to an object outside of the infant’s attention.
Wikipedia Joint attention
乳児は、乳児の注意の外にある物体ではなく、子供が注意を向けている物体について親が話すときに共同注意を行う可能性が高くなります。
2) 廣谷昌子准教授の研究結果
This study investigated the role of joint attention in infants’ word learning. […] Thus, social cues have an impact on how words are learned and represented in a child’s mental lexicon.
Developmental Neuroscience. 20 (6): 600?605. “Joint attention helps infants learn new words: event-related potential evidence“. Hirotani, Masako; Stets, Manuela; Striano, Tricia; Friederici, Angela D. (2009)
この研究では、乳児の単語学習における共同注意の役割を調査しました。[…] したがって、社会的手がかり(共同注意)は、単語が子供のメンタルレキシコン(個人の脳内に記憶された語に関する知識の総体/語彙)でどのように学習され表現されるかに影響を及ぼします。
3) Tomasello教授の研究結果
It was found that two measures–the amount of time infants spent in joint engagement with their mothers and the degree to which mothers used language that followed into their infant’s focus of attention–predicted infants’ earliest skills of gestural and linguistic communication.
Monogr Soc Res Child Dev. (1998) 63(4):i-vi, 1-143. “Social cognition, joint attention, and communicative competence from 9 to 15 months of age" M Carpenter, K Nagell, M Tomasello
乳児のジェスチャーおよび言語コミュニケーションの初期のスキルは、2つのことから予測できることがわかった。乳児が母親と対象物に向ける二人の注意が持続する(joint engagement:共同注意)ことに費やした時間と、母親が乳児の注意の焦点に続く言語を使用した程度である。
4) 言語発達と母親の言語・環境との関連性
For children with typically developing language skills, there is a close match between maternal speech and their environment
Wikipedia Joint attention
一般的に言語スキルを発達させている子供にとって、母親のスピーチと彼らの環境の間には密接な一致があります
さいごに
今回は、子どもの言語発達を促すためには、周りの大人がなるべく共同注意に時間を費やし、その際に言葉掛けをしてげることが重要なことが分かりました。
1歳半前後での言語発達に不安がある方は、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました!