【多動】だと自閉症?原因は?ADHDの診断項目とは?

2021年3月6日

多動な子は自閉症なの?

多動な子は、自閉症・自閉症スペクトラム(ASD)なのでしょうか?

今回は、上記の疑問と併せて、多動の子の様子や原因、いつ頃おさまるのか、などについても見ていきます。

多動=自閉症スペクトラムではない

多動な子だから自閉症スペクトラムというわけではありません。自閉スペクトラム症の診断基準に多動性の項目はありません。

多動性の障害はADHD

多動に特化した障害に「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」というものがあります。

ADHDでは主に、注意力の維持、集中力、課題の持続性(課題を終わらせる能力)に問題がみられます。また、過剰に活動的であったり衝動的であったりすることもあります。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

ADHDは自閉スペクトラム症ではありませんが、関係性が高く混同されがちです。詳しくは後述します。

小さい頃の特徴

ADHDの小さい頃の主な特徴は、他の子に比べて異常に活動的・衝動的であり、持続性や注意力がないことなどが挙げられます。しかし、タイプが3つあり↓、わりと複雑です。

ADHDの3つのタイプ

ADHDは、多動・衝動性のタイプ、不注意のタイプ、その2つが混合したタイプの、つのタイプがあります。その程度は、軽度から重度まで人それぞれです。

診断基準

世界的な操作的診断基準である【ICD-10】の診断項目内容では、ADHDの特徴を下記のように定義しています。

  • ADHDの特性
    • 認知の働きを要する活動の持続性の欠如
    • 認知障害は普通に見られ、運動と言語の発達遅延が頻繁にある
    • 正常な注意力と節度の欠如
    • まとまらず統制されない過度の活動性
    • 一つの活動から他の活動へと、いずれの活動も完全に遂行しないまま移る傾向

対人関係にも影響が

  • 他の子供たちからは、評判が悪く、孤立しがち
  • 大人たちとの関係では、社会的に抑制が欠けることが多い

対人関係では、抑制に欠けることから、孤立してしまうこともあります。

多動は徐々におさまってくる

多動は、小学生なって何年かすると(10歳くらい)と徐々に治まることが多、と何人かの医師や心理士から聞きました。

ただし、その子が、多動・衝動性と不注意の特性が混合したタイプのADHDだった場合、多動性は抑えられるようになっても、不注意の特性は残ってしまいます

多動児の衝動性と多動性は、成長するに従っていくぶん治まる傾向がありますが、ADHDの小児の多くは成長後も不注意が改善しません。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8

多動だとADHD?

では、多動な子はみなADHDなのでしょうか?

いいえ、そうでもありません。

2歳では判断はできない

2歳くらいでは、その子がADHDと診断されるような多動の特性を持っているのかを見極めるのは難しいのです。

子どもが家庭での家族との関係の中だけで生活しているうちは、ほかの子どもと比較する機会も少ないため、その子の多動性や不注意が特異なレベルのものなのかどうかを保護者が判断することは難しいでしょう。特に赤ちゃんのうちにADHDに気づくことは困難です。

たまひよ「【医師監修】ADHD(注意欠陥多動性障害)の赤ちゃんの行動特性(症状)と診断方法、サポートの仕方」より引用

落ち着きのなさは定型発達児にもみられる

歩き始めの1歳位の子や、自我が芽生えて自分なりに行動したい2歳位の子も、親の手を振り払ってあっち行ったりこっちへ行ったりします。それは定型発達児でも見られる興味好奇心によるもので、正常な行動です。

落ち着きのなさや注意不足は、幼児期の子どもにはよく見られるものです。

たまひよ「【医師監修】ADHD(注意欠陥多動性障害)の赤ちゃんの行動特性(症状)と診断方法、サポートの仕方」より引用

定型発達児であれば、周りの状況理解や言語発達という部分が成長し、日常生活での繰り返しの穏やかな言い聞かせ(←大切なポイント。詳しくはこちらのページにて)も加わることで、徐々に集団行動ができるような落ち着きを獲得していきます。

4~5歳が1つのポイント

ICD-10では、ADHDは5歳未満」で認められることと定義されています。

F90 多動性障害
Hyperkinetic disorders

早期発症(通常5歳未満)で、認知の働きを要する活動の持続性の欠如、及びまとまらず統制されない過度の活動性を伴い、一つの活動から他の活動へといずれの活動も完全に遂行しないまま移る傾向によって特徴づけられる。

厚生労働省サイト「疾病、傷害及び死因の統計分類」> 2.基本分類表及び内容例示表>イ.ICD-10(2013年版)準拠内容例示表>第5章 精神及び行動の障害(F00-F99)

4~5歳になっても一般的な集団行動ができずに困っている場合、ADHDの可能性が高くなると言えるかもしれません。

ADHDの徴候の多くは4歳までに気づかれ、ADHDの症状が12歳までにはほぼ明らかになります。しかし、中学生になるまで、学業成績や社会生活に大きな悪影響を及ぼさないこともあります。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

参考

参考までに子供達が経験した幼児教室では、2歳半~3歳11ヶ月児ののクラスは、おどろくほどみんな集団行動がしっかり出来ていました。多動の子がいるととても浮く感じです。でも先述の通り、その多動の子もADHDかどうかはまだ分かりません。

1歳半~2歳半の親子クラスでは、多動の子はそこまで浮きません。

ADHDと自閉症スペクトラムの関係性

2つとも発達障害

ADHDも自閉スペクトラム症も、発達障害の1種です。

下記は両者の関係性を図にしたものです。ピンクが自閉症スペクトラム、グレーががっていますが水色がADHDです。

自閉スペクトラム症とは?

つまり、自閉症スペクトラムの子がADHDの特性も持っていたら「併発」している、という表現になります

自閉症スペクトラムでも多動の子もいれば、多動でない子もいる、という感じです。

併発することも多い

自閉症スペクトラムとADHDは、併発することが多いです。

息子は知的障害を伴う自閉スペクトラム症児ですが、ADHDも併発しています。

多動・衝動性は歩けるようになってから目立ち、6歳頃には治まりました。13歳の現在は、不注意のADHDと言える状態です。

多動児の衝動性と多動性は、成長するに従っていくぶん治まる傾向がありますが、ADHDの小児の多くは成長後も不注意が改善しません。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8

参考までに多動・衝動性がひどかった頃の様子は下記でご覧いただけます。

自閉症と多動の動画
Youtube【自閉症の特徴 No.6/11】2歳5ヶ月 発達外来の待合室|自閉症と診断された日

小さい頃は、一瞬も目を離すことができないような(これを「多動」といいます)、そんな子が多いのです。

 大きくなるにつれこのような多動や、ここで書いたような奇妙な行動は次第におさまってきますが、コミュニケーションの障害や社会性の問題、こだわりなどは残ることが多いのです。

自閉症のしおり~ 障害の正しい理解のために ~ NPO法人 岡山県自閉症児を育てる会

混同しやすい

ADHDも自閉症スペクトラムと同様に、社会性コミュニケーションなどにも影響を及ぼすため、混同しやすいものです。

就学前のADHD児では、コミュニケーションに問題があり、社会的対人関係に問題があるように見えます。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

ADHDの診断方法

医師による問診

ADHAは、ICD-10の診断項目の内容に従って、医師による問診で診断が下されます。

自閉症スペクトラムと同様、臨床検査などでは判明しません。詳しくはこちらのページにて。

ポイント

ポイントは、少なくとも2つの異なる状況で症状が見られるということです。

症状が少なくとも2つの異なる状況(典型的には家庭と学校)でみられる必要があります。家庭または学校でしか症状が現れず、その他の場所では現れない場合には、ADHDとみなされません。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

小さいうちは判断が難しいので、就学時頃に診断する機会が多くなってきます。

親は幼稚園ぐらいから落ち着きがないなあ、どうしようかなあと心配しはじめて、小学校入ってもなかなか座ることができない、他の子と歩調が合わないと感じたときに受診されることが多くなります。

関西医科大学第7回市民公開講座「おちつきのない子供たち」安原 昭博(関西医科大学附属香里病院小児科部長)2005年1月29日

また、就学児では、学習障害の原因解明のためにADHDの有無を心理学的に検査することもあります。あくまで診断は医師が行うので、心理士からは傾向を指摘してもらいます。

学習障害が多くみられることから、ADHDの有無を明らかにするため、また、不注意の原因や併存する問題として特定の学習障害の有無を確認するため、多くの小児が心理学的検査を受けます。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

多動の原因

しつけのせいではない

多動の原因は、しつけのせいではありません。

多動児は、しばしば向こう見ずで衝動的で事故を起こし易く、熟慮の上の反抗的態度ではなく不注意な規則破りなので、しつけに問題があるように見られてしまう。

大人たちとの関係は、社会的に抑制が欠けることがしばしばで、正常な注意力と節度の欠如を伴う。他の子供たちには評判が悪く、孤立しがちである。認知の障害は普通に見られ、運動と言語の発達の特異的な遅延が並外れて頻繁にある。二次性の合併症には、非社会的行動及び低い自己評価が含まれる。

厚生労働省サイト「疾病、傷害及び死因の統計分類」> 2.基本分類表及び内容例示表>イ.ICD-10(2013年版)準拠内容例示表>第5章 精神及び行動の障害(F00-F99)

原因は不明

ADHDの原因は、現代でも不明です。それは他の発達障害と同様です。

遺伝、出生前環境因子が報告されている

ADHDの原因は明確にはなっていませんが、自閉スペクトラム症同様、遺伝的要因や妊娠中の子宮内環境要因が報告されています。

ADHDの具体的な原因として判明しているものは1つもありませんが、多くの場合、遺伝的(受け継がれる)要因が存在します。他の危険因子として、低出生体重(1500グラム未満)、頭部のけが、脳の感染症、鉄欠乏症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、鉛中毒や、出生前にアルコール、タバコ、コカインにさらされることなどがあります。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

遺伝的要因が76%とされるが[10]、家庭環境の要因を十分に分離できていないという指摘もある[11]。重要な環境要因は、胎児期の薬物、アルコールおよびタバコの暴露、周産期の問題、そして頭部外傷である[12]。2020年に発表されたADHDの環境危険因子、保護因子、バイオマーカーに関するメタ分析によると、危険因子として確実性が高いのは妊娠前の肥満、皮膚炎、子癇前症、妊娠期のアセトアミノフェン暴露であった[13]。危険因子の疑いが強いものは、妊娠期の喫煙、小児喘息、妊娠期の体重超過、ビタミンD不足などであった[13]。

Wikipedia「注意欠陥・多動性障害」より引用

脳の機能障害

原因は不明ですが、ADHDの症状が出る理由は、脳内のホルモンや脳のネットワークに関連する機能障害とされています。

ADHDは、脳の機能異常により、脳内の神経伝達物質(ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン)に偏りが生じていることが原因で起きるといわれています。

(中略)しかし近年では新たな説として、脳のあらゆる部位が同調してネットワークをつくる「脳のネットワークの機能」が障害されてADHDを発症するのではないかといわれています。

MedicalNote「ADHDの原因―遺伝は関係する?」国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部 部長 稲垣 真澄医師の回答より引用

なので厳しく指導したら、定型発達児のようにできるというものではありません。

ADHDの多動性は、正しい環境設定や医療介入が必要とされており、むしろ抑えつける方法はよくないとされています。

多動症状をただ押さえ込むようなスタンスの治療方針は良い結果を生みません。

厚生労働省 e-ヘルスネット ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療

ADHDの対応方法については、後の章「ADHDの【対応法】【治療法】」をご覧ください。

誤った情報

食品添加物

多動は、砂糖や食品添加物のせいなのではなか、と聞くこともあります。しかし、多くの研究から、食品のせいではないことは明らかになっています。

砂糖を含む食べものを食べた後に過剰に活動的になったり衝動的になったりする小児もいますが、研究により、ADHDは生まれつきのものであり、食べものや環境的要因が原因でADHDが発生することはないことが明らかになっています。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

テレビなどの見過ぎ

ADHDもその他の発達障害も生まれつきの脳の機能障害のため、テレビの見過ぎなどで発症することはありません。何事もやりすぎは弊害がり似たような症状をきたすことはあるかもしれませんが。

ADHDの原因でないものとして、食品添加物や食物アレルギーは関係ありません。砂糖、牛乳、コーヒー(カフェイン)などは大丈夫だろうと思います。環境中のアレルギー性物質は原因になるかどうかわかりませんが、まず大丈夫だろうと思います。親の育児の間違いではない。テレビを見すぎたりテレビゲームをやりすぎてもADHDにはなりません。

関西医科大学第7回市民公開講座「おちつきのない子供たち」安原 昭博(関西医科大学附属香里病院小児科部長)2005年1月29日

ADHDの対応法・治療法

行動療法が基本

ADHDの対応・治療は、行動療法、つまり専門的な療育が基本になります。

幼児期の場合

多動や自閉症スペクトラムは、小さいうちは診断がつかず親御さんの不安が長期化してしまい負担が大きいことは国として重要視しています。

なので国が推奨する「児童発達支援」は診断が確定していなくても、発達に不安がある子全員が受けられるようになっています。

特にお子さんが小さいうちは、その子を治療するというよりも、適正な環境設定や声掛けの方法を親御さんに伝えてくれる感じです。定型発達児の子育てでもとても参考になり、無駄なことはないので、一度見学など行かれるのも一つの手だと思います。

行動療法(ABA:applied behavior analysis)ではADHDを持つ子に対して、社会生活がうまくいけるようにトレーニングをします。またその保護者に対しては、この病気について特徴を理解させ適切な対応ができように訓練をします。

関西医科大学第7回市民公開講座「おちつきのない子供たち」安原 昭博(関西医科大学附属香里病院小児科部長)2005年1月29日

就学期の児童の場合

ADHDだけでは、特別支援学校や支援学級には入れません。詳しくはこちらのページにて。

普通の小学校に通っていても、発達に気になる点があり保護者が希望する場合には、全員個別の教育支援計画を作成することが国から義務付けてられており、小学校側に配慮のお願い、そして先生方・保護者への理解啓発をお願いできます。公立の小学校であれば、必ず一人は特別支援教育コーディネーターの役割を担っている先生がいるので、保護者の窓口になってくれます。

薬物療法

あまりにもひどく、日常生活がままならない場合、補助的に薬物療法も取り入れることもあります。日本では、現在、3種類の薬が認可されています。

行動療法と刺激薬の両方を用いて治療します。薬を使用することで、症状の緩和の助けになり、学校や他の活動に小児が参加しやすくなります。特に、年齢の低い小児ではこの併用が有益です。就学前の小児では、行動療法だけで十分なことがあります。

MSDマニュアル 家庭版「注意欠如・多動症(ADHD)」最終査読/改訂年月 2018年 8月

専門医のあいだでは昔からよくいわれていますが「ADHD治療薬はそれだけで治る魔法の薬ではない」ということです。ADHDの薬物治療はあくまでも、患者さんが日常生活を不便なく行えるようにするための補助的な役割にすぎません。ですから、まずは後述する「環境調整」やペアレントトレーニング、ソーシャルスキルトレーニング(SST)などの「行動療法」を用いて、ADHD症状の緩和を図ります。それらでも生活が改善しない場合において、はじめて薬によるADHD治療が行われます。

MedicalNote「ADHDは薬物治療で治る? 薬の種類と特徴」社会福祉法人青い鳥 小児療育相談センター 神経小児科の原 仁医師の回答より引用

現在ADHDの治療薬(コンサータ®、ストラテラ®、最近発売されたインチュニブ®など)は、これらの神経伝達物質の働きを調整して作用するようにつくられています。

MedicalNote「ADHDの原因―遺伝は関係する?」国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部 部長 稲垣 真澄医師の回答より引用

二次障害を起こさないためにも

適切な対応をしてあげないと、自尊感情が低くなり、二次障害が起こる可能性が高くなります。また、学習に集中できず、必然的に学力が低くなってしまいます。

ADHDのこどもたちへの対応が不適切な場合、反抗的な態度や攻撃的な行動をきたす問題行動が現れること、学習の遅れ、精神的ストレスからメンタルヘルスの異常をきたすことがあり、適切な早期介入が重要であると考えられています。

国立精神・神経医療研究センター「ADHD(多動性症候群)」より引用

【参考】ケトン食との関連

ケトン食は、日本ではてんかん療法の1つですが、発達障害にも効果があると言われています。大変そうなので難治性てんかんの息子でもやりませんでしたが。

ケトン食は、先天代謝異常症・てんかんだけでなく、発達障害・自閉症・認知障害・アルツハイマー、頭部外傷や脊髄外傷、そしてがんにも効果があると言われている。

第 21 回大阪府栄養士会研究発表会「小児のてんかんとてんかん食について」大阪府立母子保健総合医療センター 小児神経科 研究所免疫部門 副部長 柳原 恵子先生

自閉症スペクトラムかどうかを考える

その子が自閉症スペクトラムかどうかは、共同注意などの2歳前後の発達を見る、または振り返ることで判断します。その子が自閉症スペクトラムかどうかを考えるポイントは下記にまとめています。

▶1・2歳の場合

▶3歳以降の場合

実際の自閉スペクトラム症児(自閉症)の発達の様子については、下記ページに詳しく載せています。ご参考になれば幸いです。

さいごに

多動な子=自閉症スペクトラムではないこと、また、小さいうちはADHDの診断は難しいことが分かりました。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!