【一歳半健診で指さしできず引っかかった!】この子は自閉症なの?

2020年5月15日

一歳半健診に引っかかったら確認するポイント指さし編

自閉症の息子は1歳6ヶ月の時、1歳半健診で出される【応答の指さし】問題には正解していませんでした。自分の好きなように【指さし】はするのに。1歳半健診の指さしチェックのような【指さし】では期待に応えてくれない…。

他にも1歳6ヶ月児健康診査(一歳半健診)のチェックで「うちの子、指さしができずに引っかかった!」と、わが子の発達が正常かどうか、不安になるお母さんは多いと思います。

私も長男の発達にが1歳代で不安を覚えた頃、目の前のわが子をほっといてネット検索に没頭していました。しかし、口コミサイトを見れば「きっと大丈夫」の嵐。本当に?

本日は理系の私が当時知りたかった情報を、研究者や医師の研究内容からまとめてみました。

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下記では自閉症の他に、自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)という用語が出てきます。それらの違いについては「【自閉症】【自閉スペクトラム症】【発達障害】の違いとは?」ページで詳しく解説していますので、是非あわせてご覧ください。

【考察1】「指さししない=自閉症なのか」から考える

指さしをしている1歳の自閉症児

1歳半で指さししないとその子は自閉症なのでしょうか?

いえ、自閉症の赤ちゃん・子供も指さしするので「一歳半で指さししない=自閉症」ではありません。

遅くとも18か月迄に100%の子どもが何らかの指さし行動を行う

教育心理学研究 31巻 (1983) 3号 Pp. 255-264「指さし行動の発達的意義」秦野 悦子 p.259

しかし自閉症児の【指さし】は、1歳半頃には定型発達児の指さしとは、違いが出てきます。

冒頭にも書きましたが、ポイントは、その【指さし】が、親の期待に応えてくれるような【応答の指さし】や【叙述の指さし】かどうかです。

下記で詳しく見ていきましょう。

【考察2】「指さしの種類」から考える

指さしの5段階発達

定型発達児の【指さし】

自閉症かどうかを考えるにあたり、定型発達児の【指さし】を知る必要があります。

【指さし】は9ヶ月頃からはじまり、脳の発達段階により、1歳前後にかけて5段階で発達していきます。その段階で、それぞれその役割や意味合いも違ってきます。詳しくは下記のページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

自閉症児の【指さし】

では自閉症児の場合はどうでしょう。

自閉症児でも第2段階の【要求】の指さしまでは健常児と同様に発達できます。

しかし、第3段階の【叙述】の指さし以降の発達困難なのです。

要求の指さしのように、自分がほしいものを手に入れるために他者を利用する行為や身振りである「原命令(Proto-imperatives)」と、叙述の指さしのように他者と周囲を共有しようとする行為である「原叙述(Proto-declaratives)」行動において、自閉症児は「原叙述」行動にのみ、困難さを持っている

東北大学大学院教育学研究科研究年報第58集・第2号(2010年)「自閉症児における情動的交流遊びによる共同注意行動の変化」李熙馥・田中道治・田中真理

論文で見つけた自閉症児の症例でも、共通して指さしの発達が遅かったことが分かります。下記ページでご確認ください。

一歳半検診でのチェック

そこで一歳半検診では、上記で見てきた理由から、第3段階の【叙述】の指さしが出来ているかどうかをチェックしているのです。

18か月迄に自発的伝達手段としての叙述の指さし行動が認められない場合,(1)対人・対物的認知発達,(2)社会的相互関係能力,(3)前言語的伝達行動の各発達領域に関する,何らかの発達上の躓き,歪みが生じることを強調している。

教育心理学研究 31巻 (1983) 3号 Pp. 255-264「指さし行動の発達的意義」秦野 悦子 p.262

1歳半の定型発達児が最終段階の【応答の指さし】を行えている様子は、こちらの動画をご覧ください。

でも一歳半で質問内容を理解できるの?

いくつかの絵が描いてある一枚のカードを見せて「ワンワンどれ?」に対して叙述の指さしが出来ないのは、まだ言葉が分からないからじゃないの?という疑問も出てきますよね。

一歳半検診で使われるカードは、日常生活で一歳半の子どもが何度も目にして養育者からその言葉を声掛けしてもらっているような絵が並んでいます。そのため定型発達児であれば、理解をしているという前提でテストがされているのです。

その点(言語発達)については、以下でも説明します。

【考察3】「指さし以外の項目」も併せて考えてみる

実はこの指さし(共同注意)と言語発達は、とても相関性が強いものであることは、先行研究より明らかになっています。

伝達的指さし行動(communicativepointing)と後の言語発達との相関が高いことを,Bates(1979)も明らかにしている。

教育心理学研究 31巻 (1983) 3号 Pp. 255-264「指さし行動の発達的意義」秦野 悦子 p.255

一歳半検診でもその子が話せる語彙数のチェック項目も設けられていますよね。これは必然的にリンクしてくるチェック項目なのです。

自閉症スぺクトラムのお子さんの多くは、ことばの遅れを伴っています。こうしたお子さんは、ことばだけでなく視線があいにくかったり、ジェスチャーや身振りなどによるコミュニケーションにも課題があるのが特徴です。

参考:日本小児科学会東京都地方会 こどもの健康週間2019

一歳半検診の指さしチェックを問題なく通過できるような子どもは、その時点で複数の言葉を話せていると思われます。少なくとも3語以上話せているはずなので、話せる言葉以上の単語の意味を理解している、つまり、定型発達児であれば、指さしチェックの質問内容は理解でき応答できる力をもっていると言う前提のものなのです。

言語発達の詳しい内容については下記のページをご覧ください。

まとめ

今回は、1歳6ヶ月児健康診査(一歳半健診)などで行われる【指さし】チェックができるかどうかから、その子が自閉スペクトラム症児かどうかを考えるポイントを見てきました。

しかし、何と言っても相手はまだ一歳半の赤ちゃん。

一歳半健診が行われるような知らない場所で、知らない人々、赤ちゃんにとっては長い時間の滞在、初めてのイラストのカードに、初めてのテスト。眠たい時間かもしれないし、お腹がすいてるかもしれない、オムツが気持ち悪いかもしれないし。暑かったり寒かったりするかもしれない。それらを我慢させているかもしれない環境下で、持っている力を発揮できなくても当たり前です。

なので一歳半検診で指さしチェックに引っ掛ったからと言って、その子に障害がある子とは言い切れないと思います。

その子が自閉症・自閉スペクトラム症児かどうかは、総合的に考えていくのが合理的だなと思います。ASDの森でも、色んな角度から考えられるお手伝いができるようにしていきたいです。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!