【指さし】の5段階発達・自閉症児は3段階以降が困難

2020年10月14日

指さしの5段階発達

子供は早い子では9ヶ月頃から【指さし】をしはじめます。しかし、その頃の【指さし】は、1歳半健診などでチェックされる【指さし】とは違います。自閉スペクトラム症児でも出来る【指さし】です。

見ただけでは同じ「ものに指をさしている」動きの【指さし】ですが、月齢を重ねるにつれ機能と役割が変わっていきます。

その過程で、自閉スペクトラム症児には、出来る【指さし】と出来る【指さし】に分かれます。それにより言語発達も影響されてきます。

今回は、指さしの機能的な発達を「5段階」に分けて説明していきます。

【指さし】をする前段階(足場づくり:scaffolding)

最初に【指さし】をするまでにも、必要な発達があります。それは、生後5ヶ月頃からはじまります。

指さしをする前の段階(足場づくり)

自分から【指さし】をするためには、前段階として、大人や他のひとが指を指した方向や物見ようとする行動の獲得が必要になります。

生後5~6ヶ月ごろ

大人や他のひとの【指さし行動そのもの】に注目をするようになります。

指さした対象物が、指と触れるように近い場合には、時には、対象物に注目しているように見えることもありますが、赤ちゃんはそこまで発達していません。また、真似して人差し指で対象物を触ることも見られますが、それは指差しとは異なります。

補足:京都大学の名誉教授でもあられて障害発達心理学をご専門とされている立命館大学の山田洋子教授らは、自発的な指さしは模倣からはじまるものではないとしています。

山田洋子教授

山田・中西(印刷中)の事例からも,大人が乳児の自発的指さし行動を,強化したり修正する働きは認めるが,自発的指さし行動が模倣から開始される説は否定している。

教育心理学研究 31巻 (1983) 3号 Pp. 255-264「指さし行動の発達的意義」秦野 悦子 p.259

生後7~8ヶ月ごろ

大人の指さす方向を見て、対象物を探せるようになってきます(応答的共同注意)。生後10ヶ月ごろまでにほとんどの子どもができるようになります。

これは、お母さんや養育者に抱っこ(一体化)され、その場面や注意を共有している時に成立しやすくなります。

このころの赤ちゃんはまだ、自分が他のひととやりとりをしていると、他のものには注意を向けられない発達段階です(二項関係)。同様に、自分がおもちゃなどの物を扱っているときにも、近くに人がいても注意を向けられません。なので抱っこされ一体化されているようなときに見られ始めます。

生後8~9ヶ月ごろ

はじめて自発的な【指さし】ができるようになります。(後述)

自発的指さしは、1歳半まで【すべての子どもできるようになります。自閉症児でもです。

一歳半健診でチェックされる【指さし】かどうかはまた別問題です。

自発的指さし行動は,8~9か月から始まり(中略)遅くとも18か月迄に100%の子どもが何らかの指さし行動を行う

「指さし行動の発達的意義」 p.259

【指さし】の発達過程

お待たせしました。ここから【指さし】の「5段階」発達の説明です。

自閉スペクトラム症児は第2段階まではこなせますが、第3段階からの発達が難しくなります。そのため、指さしの確認が、自閉スペクトラム症かどうかの判断基準にも使われています。

第1段階【興味】の指さし

生後8~9ヶ月ごろ

自発的指さしの第一段階の意味合いは、興味驚き再認を表すものです。お母さんに抱っこされるような安心している状態で、動いている物などに対してやり始めます

お気に入りのものなどには、いつも決まって指さししたりもします。

その出現状況としては,抱かれている時などに,動くもの,光るものなど,視線の上方にある,やや目立つ物に対して,あるいは,外界変化に対して,凝視し,驚ろいたように指をさす。また,日常なじみの対象にも指さし行動が生じ(中略),見ると必ず指さし行動を始める特定対象の存在も認められている

「指さし行動の発達的意義」p.259

【指さし】する際には、声を発するようにもなってきます。その際にお母さんやそばにいる養育者が、子どもに対して話してあげることで、言語発達も促されることが多くの先行研究で明らかになっています。詳しくは下記のページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

指さし行動に発声が伴われる傾向は,指さし行動初出直後の子どもでも観察され,10~11か月以降,50~70%の指さし行動に何らかの発声が伴うようになる

「指さし行動の発達的意義」p.262
指さしをしている1歳の自閉症児

第2段階【要求】の指さし

生後11ヶ月前後

自分の気持ちの中だけ「欲しいよー」と思いながら指さすのが【要求】の指さしです。これは多くの子で、1歳頃までにみられるようになります。

第2段階の「要求」は,11か月前後から出現し(中略),12か月頃には,ほとんどの者(80%)が使用する。

「指さし行動の発達的意義」p.260

ここまでが自閉スペクトラム症児でもできる指さしでした。息子も興味、要求の指さしは普通に出来ていました。

第3段階【叙述】の指さし

~ ここからが自閉スペクトラム症児では難しくなってくる指さしです ~

叙述の指さし

生後11ヶ月~1歳3ヶ月までに

他のひとの注意を引くために「あっ」と声を出して指さす、「見て!」といった感じで指さすのが【叙述】の指さしです。

用語ポイント

叙述とは「物事について順序立てて相手に伝えること」です。例)「事件をありのままに叙述する」

この時、子どもはその対象物お母さん(養育者)の顔を交互に見ます(交互凝視)。それはこの指さしが表示伝達の機能が含まれているためです。そのため、そのひとが反応してくれるまで、指さししたり声を出したりが続きます

対象を指示した後,他者にそれを教える行為であり,母親が応答する迄,発声や指さし行動が持続することが,特徴的である

「指さし行動の発達的意義」p.260

この【叙述】の指さしができるということは、その子が「自分」と「他のひと(または物)」という二項関係のみの認識世界から、「自分」と「他のひと」と「物」という3者を含んだ認識世界に発達を成し遂げた証拠です。

指さしと三項関係

すなわち、三項関係の成立を意味していて、【叙述】の指さしを繰り返しながら、自ら積極的に他のひととある物を共有しようとする共同注意を深めていっているということなのです。

ここの発達は自閉スペクトラム症児では困難が生じることが分かっています。

ポイント

自閉スペクトラム症児では、この「二項関係」→「三項関係」認識への発達に困難が生じます。そのため、叙述の指さし以降の発達が見られない(遅い)ことが多いです。

18か月迄に自発的伝達手段としての叙述の指さし行動が認められない場合,①対人・対物的認知発達,②社会的相互関係能力,③前言語的伝達行動の各発達領域に関する,何らかの発達上の躓き,歪みが生じることを強調している。

「指さし行動の発達的意義」p.262

2歳でまだ二項関係の世界にいる自閉症児の様子が下記でご覧いただけますので、ご参考になさってください。共同注意がないことがよくお分かり頂けると思います。

一歳半健診の指さしチェック

指さしを指標にその子が自閉スペクトラム症児かどうかを考える際に、1歳6ヶ月までに【叙述】の指さしが出来ているかが重要になってきます。

そのため一歳半健診でも絵カードを用いた指さしチェック項目が設けられています。詳しくは下記のページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

第4段階【質問】の指さし

生後12ヶ月ごろ

「これなあに?」というような意図で対象物を指さして、大人の応答を待つときに使われるのが【質問】の指さしです。

これは、知らない物へ関心を抱き名称を知りたいという行動の他に、すでに知っている物の名前を確認するためにも繰り返し行われる行動です。

他のひととのやりとりや交流を楽しむ手段でもあるのです。忙しさを理由に「はいはい」とおろそかにしてはいけません(笑)

自分が知っている物の名前について指差して、大人が違う名前を答えたりすると、「違うよ」とというような仕草を交えて、自分が知っている名前を聞くまで繰り返し質問の指さしを続けるなどの様子もみられるようになります。

第5段階【応答】の指さし

生後12ヶ月前後から1歳6ヶ月ごろ

「猫ちゃんどれ?」に対して「これだよ」という感じで指をさすような、聞かれたことに答えるための機能をもつ指さし【応答】の指さしです。

第4段階までの指さしが、子どもが自分の興味や関心があるものに対して指さしをして他のひとの注意を引くという行動でしたが、第5段階の【応答】の指さしは、他のひとからの指さしに対して、意味を理解し、自分がどのように行動するべきか考える必要があります。

知的、社会的因子の関与が高いものです。

知的障害を伴う自閉スペクトラム症(自閉症)の息子は、2歳半頃に獲得できました。下記動画の「1:05」頃から確認できます。

まとめ

今回は、自発的な【指さし】の「前段階」と「5段階の発達過程」について、詳しく見てきました。

自閉スペクトラム症児でも、指さしが出来ること、どの指差しが難しいかがよくお分かりいただけたと思います。

また、指さし行動があるときに周りの人が反応し声掛けしてくれることで、言語発達も促されます。指さしがよく出る幼児期には、きちんと対応してあげたいものですね。忙しくておろそかにしてしまいがちですが…。心と時間にゆとりである母親でありたいと思わされます…。(罪悪感!!)

今回はこの辺で。最後まで読んで下さって、ありがとうございました!