自閉症児の言葉【特徴】は?|まとめ

2021年6月18日

自閉症の言葉の特徴

自閉症児の言葉には、言語発達の遅れ、オウム返しなど特徴があります。今回は、自閉症児の言葉の特徴を、表面化する時系列でまとめています。また、知的障害を伴わない自閉スペクトラム症の言葉の様子も、実例をあげながら簡単にまとめました。

はじめに

このページでは自閉症を「知的障害を伴う自閉スペクトラム症」と定義します。詳しくは、下記ページをご覧ください。

さらに「自閉症児は話すのか?」というよくある疑問については、下記ページをご覧ください。

自閉症の言葉の特徴

自閉症児の言葉の特徴を表面化する順番にまとめると、下記になります。

  • 言語理解の低さ
  • 言葉の遅れ
  • オウム返し←反響言語(即時性)
  • 独特な韻律(イントネーション等)
  • ひとり言←反響言語(遅延性)
  • 通常の会話のやりとりができない

ここでの言葉は、喃語や擬音語調のことではなく、「ママ」「ワンワン」などを含む有意味語のこととしています。

ポイントは、全てが全員に当てはまるというものではないという点です。

自閉スペクトラム症は、定型発達の人から、古典的な自閉症と呼ばれる人までの一連の流れの中で、いろんなタイプが存在し、100人いたら100通りの特性があります。(なぜまとめて自閉スペクトラム症とよばれるようになったかはこちらのページをご覧ください)

自閉スペクトラム症概念図
ケンブリッジ大学発達精神病理学科サイモン・バロン=コーエン教授による自閉症スペクトラム障害図(2011)画像はwikipediaより

そのため、自閉スペクトラム症の診断基準もたくさんある項目の中の一定数に該当することで診断されますが、言葉の特徴もそいうった感じです。

知的障害を伴う自閉スペクトラム症の場合、言葉の特徴が集まりやすいため、今回このようにまとめております。

6つの特徴

①言語理解の低さ

言語理解の低さは、知的機能の障害によるもの、つまり、知的障害が影響している特徴です。(参考:ICD-10>第5章>F70-F79)

知的障害児の乳幼児期の特徴についてお知りになりたい方は「知的障害の定義・程度の具体例」ページをご覧ください。

②言葉の遅れ

言葉の遅れは、自閉症児に一番よく見られる特徴です。

自閉症の最も顕著な特徴は,言語発達の著明な遅れあるいは,言語発達が見られないことである。

日本音響学会誌63巻7号〔2007)P365−369 「特集―小特集言語障害を通して再考する音声言語情報処理― 自閉症児の言葉」p.366

どのくらいだと言葉が遅れているかについては、下記にまとめています。

これは、知的障害と自閉スペクトラム症の特徴の両方が影響しています。

知的障害の影響

前項目「①言語理解の低さ」があると、同時に言葉の遅れにも繋がります。知的障害のページに詳しく書いていますが、軽度の知的障害だと、言葉の遅れは表面化しない事もあります。

自閉スペクトラム症の影響

「言葉の遅れ」自体は、自閉スペクトラム症の診断基準ではありませんしかし、自閉スペクトラム症の特徴の影響受けて「言葉の遅れ」に繋がります。ややこしいですね。

どういうことかと言うと、自閉スペクトラム症の特徴である「共同注意のなさ」により、言語習得のための機会少ないことが影響するのです。

ただの知的障害児であれば「共同注意」に関しては、定型的に発達をしていきます。

特に共同注意に代表される「指さし」は、言語発達との関連が明らかになっていますが、自閉症児は指さしの発達が困難と言われています。自閉スペクトラム症の診断基準にも「身振りの理解やその使用の欠陥」が含まれています。例えば、自閉スペクトラム症であれば、1歳半健診でチェックされるような応答の指さしは定型的には発達出来ない事が多いため、1歳6ヶ月児健康診査のチェック項目に含まれているのです。

いつも一人マイワールドにいて手のかからない自閉症児が、いつも「見て見て」「これ何?」と関わってくる定型発達児に比べて、言語習得の機会が少ないのは当然ですね。

しかし、自閉症児でも、遅いながらも共同注意や認知力の発達により、応答の指さしや、ことばも徐々に出てくる子もいます。これも人それぞれです。

③オウム返し

オウム返しは、自閉スペクトラム症の特徴です。

自閉症児のオウム返しの動画
Youtube【自閉症の特徴 No.9/11】オウム返し 2歳

自閉スペクトラム症の診断基準にも、反復的な会話(反響言語)が明記されています。(参考:DSM-5>ASD>B.(1))

オウム返しは、専門的には即時性反響言語と言います。定型発達児でも小さい頃はオウム返しはするのですが、それらについては、下記ページで詳しく説明しているので、ぜひそちらも併せてご確認ください。

Parents of PDD children often report that their children do not use the language they have to communicate. It is difficult to carry on a con-versation with autistic children who are often uncommunicative and make irrelevant, repetitive remarks that recur in conversation

Fine, Jonathan & Bartolucci, Giampierro & Ginsberg, Gary & Szatmari, Peter. “The Use of Intonation to Communicate in Pervasive Developmental Disorders. Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines. " (1991).
↑ 和訳概要

PDDの子供たちの親は、子供たちがコミュニケーションをとる必要のある言語を使用していないと報告することがよくあります。しばしばコミュニケーションが取れず、会話の中で繰り返される無関係で反復的な発言をする自閉症の子供たちと会話を続けることは困難です

④独特な韻律

韻律とは、疑問文のときには尻上がりな調子にしたり、重要な単語は強調したりなど、発話での抑揚、音調、強勢、音長、リズムのことを指しますが、自閉症児(者)では、その韻律単調だったり、コンピューター的と表現される話し方をする、という特徴があります。

小児神経学や発達障害の臨床、脳科学をご専門とされている、お茶の水女子大学の榊原洋一教授は、自閉症児の語用障害はまだ十分に解明されていないとしつつも、自閉症児が独特な韻律になる理由について、その認知能力部分に障害があるためではないかと述べています。

榊原洋一教授
榊原洋一教授 画像はNHKより

自閉症児(者)の言語の韻律の形成障害は,その背景に韻律の認知障害があることを示している。

日本音響学会誌63巻7号〔2007)P365−369 「特集―小特集言語障害を通して再考する音声言語情報処理― 自閉症児の言葉」p.368

自閉スペクトラム症者が主人公となっているドラマでは、中居正広さん主演の「ATARU」や、山崎賢人さん主演の「グッド・ドクター」が記憶に新しいですが、お二人とも独特な韻律で演じられていますので、文字で読んでピンとこないという方は、ドラマを観ていただくとお分かりいただけると思います。

自閉症のドラマATARU
TBS 日曜劇場「ATARU」
フジテレビ「グッド・ドクター」

自閉症児(者)全員がそのような話し方をするわけではありませんが、複雑な会話ができない小さいうちは、韻律も自閉症かどうか判断するとき1つの手掛かりになります。

In general. autistic speakers, relative to both the AS and control groups, underutil-ized functionally useful patterns of intonation to convey meaning. and overutilized patterns that were appropriate in only certain, very specific, circumstances.

Fine, Jonathan & Bartolucci, Giampierro & Ginsberg, Gary & Szatmari, Peter. “The Use of Intonation to Communicate in Pervasive Developmental Disorders. Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines. " (1991).
↑ 和訳概要

一般に、自閉症の話者は、アスペルガー症候群グループと定型発達グループの両方と比較して、意味を伝えるために機能的に有用なイントネーションのパターンを十分に活用していませんでした。そして、特定の非常に特殊な状況でのみ、過剰に利用されているパターンでした。

⑤ひとり言

ひとり言も、オウム返しと同じ反響言語の一種で、遅延性反響言語と言われています。こちらも自閉スペクトラム症の特徴です。

診断基準には、常同的な会話として明記されています。(参考:DSM-5>ASD>B.(1))

「独特な韻律」との表出順は、その子の発達状況によって逆になることもあると思います。

今回は、まだ自閉スペクトラム症についてあまり知らない方だと、ひとり言は、街中などで一人で話している成人や、セリフやアナウンスの内容をそのままコピーして話すことをイメージしやすいと思いまして。それだと認知・言語発達が多少進んでからかなので、この順番にしました。現に自閉症(知的障害を伴う自閉スペクトラム症)の息子もこの順番で表出しました。

自閉スペクトラム症の人がひとり言を話す理由などについては、下記ページで詳しく説明しているので、ぜひそちらも併せてご確認ください。

⑥通常の会話のやりとりができない

社会的コミュニケーションや対人的相互反応が苦手なことは、自閉スペクトラム症の特徴です。

診断基準にも「相互の対人的・情緒的関係の欠落で、(中略)通常の会話のやりとりのできない」の明記が含まれています。(参考:DSM-5>ASD>A.(1))

「通常の会話のやりとりができない」なんて、とてもおおきなくくりで、人により特性が様々ですが、やりとりが独特という風に捉えてください。あくまで一例ですが、下記動画もご参考にしてください。会話のレベルは知的障害によっても異なります。

自閉症_社会的コミュニケーションの欠落の様子の動画
Youtube【自閉症の特徴 No.11/11】言葉の遅れ・社会的コミュニケーションの欠陥 4歳

It appears as if autistic/PDD children are unable to build on their listener’s communica-tion to develop a reciprocal social conversation. Thus. it is the social use of language that appears to be the essential impairment in autistic/PDD children, not the formal aspects of language development.

Fine, Jonathan & Bartolucci, Giampierro & Ginsberg, Gary & Szatmari, Peter. “The Use of Intonation to Communicate in Pervasive Developmental Disorders. Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines. " (1991).
↑ 和訳概要

自閉スペクトラム症の子供たちは、相手のコミュニケーションに基づいて相互の社会的会話を発展させることができないように見えます。したがって。自閉スペクトラム症の子供たちの本質的な障害であるように見えるのは、言語発達の形式的な側面ではなく、言語の社会的使用です。

※引用文中にある「PDD」は広汎性発達障害を意味する略語です。自閉スペクトラム症が普及される前に使用されていた用語です。今回は、自閉スペクトラム症と訳しました。

自閉スペクトラム症のことばの様子

自閉スペクトラム症児の言語の特徴が一通りではないことは前述した通りですが、自閉スペクトラム症と範囲を広げると、下記のような例も挙げられます。

●「重度の自閉症」と紹介されている作家の東田直樹さんの場合

…言語理解もあり、頭の中では言語化できるが、話そうとすると言葉が消えてしまう。長期間のトレーニングにより、補助ツールを使用することで内面を表現出来るようになった。

文字盤ポインティングは、話そうとすると消えてしまう言葉を引き出すために考えたコミュニケーション方法で、僕は画用紙に書かれたキーボードと同じ配列のアルファベットを、ローマ字打ちで一文字一文字指しながら自分の思いを伝えています。

文字盤さえあれば、内面を表出できるわけではありません。僕が、本当の自分の言葉を人に伝えられるようになるまでに、長い時間がかかりました。

東田直樹オフィシャルサイトのProfileページ「Tool -文字盤ポインティング-」より引用

知的障害を伴わない例

「知的障害を伴わない自閉スペクトラム症」の場合は、こんな感じの言語の特徴をもつ子もいます。分かりやすいように、箇条書きのタイトルを少し前の言い方で書きます。

●20歳で高機能自閉症と診断された米津玄師さんの場合

…小さい頃は、お友達と遊ぶのが好きで饒舌に話し冗談で笑い合ったり出来ていた。しかし、成長すると学校が嫌いになっていった。クラスメイトの言っていることがよく分からない。小学校高学年では居心地の悪さを感じ、中学・高校の時も外国の中に日本人が一人みたいな感覚は続き、どんどんどんどんきつくなっていった。クラスメイトに「同じことしか言わないね」と言われショックだった。自分の頭の中で架空の人物(明確な自分の友達になっている)と話すことが、心のよりどころで、今なおある。

何を返すと相手が喜ぶかとか、会話っていうのが成り立つか、まったくわかんなくて、日常会話のしょうもない話題を投げかけられたところで、相手に返したい言葉なんてひとつもないんですよ。だけどそれっぽい言葉を投げかける必要がある、でもそれが何かわかんない。こんな難しいことを人はあたりまえのようにやってるんだなって考えた時に、自分はものすごいバカな人間だなって。

ROCKIN’ON JAPAN 2015年11月号 2015/09/30発売 Pp.58-59

●他の高機能自閉症の一例…発話はなく、パっと見で自閉症という感じだが、小さい頃からこちらの言う事は年相応に分かっている。

●アスペルガー症候群を公表したアメリカの有名な実業家イーロン・マスク(民間宇宙ロケ​​ットメーカーSpaceXやオンライン決済システムのPaypal社の前身X.com社、電気自動車メーカーのテスラモーターズなどの創設者)の場合

マスク氏は、以前からTwitterの投稿で批判を浴びたり、訴訟を起こすと言われたりしていたが、それを「私は時々変なことを言ったり投稿したりするけど、それは脳の働きによるものだ」と話した。

マスク氏は観客の前に登場すると、「私のしゃべり方には抑揚や変化があまりない(中略)それでコメディー向きだと言われている」とジョークを飛ばした。

そして、「SNLの司会を務める、アスペルガー(症候群)の最初の人物として今夜、歴史をつくっている」と続けた。

BBC JAPAN「イーロン・マスク氏、アスペルガー症候群だと明かす 米人気番組で」2021年5月11日

●他のアスペルガー症候群の一例…言語発達は普通だが、言葉をそのままの意味で受け取ってしまう。また、相手の表現やアイコンタクトの意味、気持ちの読み取りが困難なため場に応じたやりとりができない。

まとめ

今回は、自閉症(知的障害を伴う自閉スペクトラム症)とその他の自閉スペクトラム症(知的障害を伴わない自閉スペクトラム症)に分けて、言語の特徴についてまとめてみました。

言語理解の低さは知的障害の影響で、オウム返しや独り言は自閉スペクトラム症の影響であり知的障害とは関係がないことが分かりました。

また、言葉の遅れは自閉症児によくある特徴ではあるが、自閉スペクトラム症の診断基準ではなく、知的障害がなければ言語発達に遅れはない可能性が上がるという、なんともややこしいまとめになりました。

今回はこの辺で。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!