論文でみつけた【自閉症児の発達の様子】まとめ

論文での症例で上がっていた、自閉症児の発達の様子などをまとめてみました。
「この子は自閉症なの?」と不安になっている時は、自閉症児の発達の様子は気になりますよね。どなたかの参考になれば幸いです。
はじめに
論文での症例には、自閉症の他、自閉スペクトラム症、広汎性発達障害、ADHD、知的障害、IQ、発達性言語障害などの用語が出てきます。読みながら混乱する事もあると思いますので、その際は、下記リンクで情報をご確認ください。
◆自閉症の他、自閉スペクトラム症、広汎性発達障害
◆ADHD(注意欠陥・多動性障害)について
◆知的障害、IQについて
◆発達性言語障害について
論文での実例
診断された月齢が小さい順でまとめていきます。
診断された月齢 | 診断名 | 確認できた問題ない項目 | 障害特性・発達遅延項目・補足 |
---|---|---|---|
1歳10ヶ月 | ・自閉症 | ・オウム返し:ない | 障害特性 ・多動 ・社会性の欠如:名前を呼んでも反応しない。ひとりで絵本を見ている際に母が横へ行くと、スーッといなくなる。 ・かんしゃく:予期できない事態が起こった際(目に余るほどの攻撃性、破壊性はない) ・場所見知り:初めての場所ではいつも一時間くらい泣き続ける。 ・睡眠障害:夜中に突然起きて遊び出す。 ・言語表出:2歳3ヶ月頃 「タッチ」「オンブ」「ダッコ」「マンマン」などと喋りはじめた。その後徐々に消失し2歳6ヶ月頃よりまったく喋らなくなったという。4歳になってもジャーゴン様発声を時折する程度。 ・言語理解:音声言語の理解(例:コップちょうだい)はない、社会音(救急車の音、動物の声など)の認知もない。 ・クレーン動作:要求行為自体が少ない、要求はクレーン動作で表すか自力で解決しようとする。 療育で形成できた項目(4歳9ヶ月) ・「パターン化した日課」「大人の非言語的援助が手がかりとなる状況」に限って、簡単な指示の理解が可能 ・名前を呼ばれると反応はする ・動作の模倣や身振りは、指示すればなんとか可能。ただし意味理解はされていない 参考:日本コミュニケーション障害学会「話しことばをもたないある自閉症児の言語獲得過程 コミュニケーション技能と生活技能の発達を通して」聴能言語学研究 8巻(1991)1号 p.28-38 みなみ子ども診療所臨床言語室 中島 雅史 |
2歳8ヶ月 | ・自閉スペクトラム症 | ・共同注意:1歳6ヶ月時にあった | 障害特性 ・言語表出:1歳半で有意味語が3語言えなかった。2歳になっても変化なし。 ・多動:2歳児で目立つ。テレビを見ている間は静かだった。 ・社会性の欠如・かんしゃく:公園に連れて行き、ブランコを見つけるとやりたくて待っていられず、かんしゃくがすごかった。 ・反復行動:2歳11ヶ月では自己刺激行動(顎を自身の手の甲で打ち付ける)、偏食 ・こだわり:外出前に、帽子・カバン・服などにこだわりごねた。 補足 ・2歳11ヶ月で集団療育に通い始める。初めの頃は、部屋に入ることもしたがらず、抱っこを求めることが多かった。(抱っこすると母親の肩に顎をぶつけてくることが多い) ・3歳6ヶ月頃から集団療育に落ち着いて参加できるようになってき た。しかし、我慢が苦手で、よくかんしゃくを起こしていた。 新版 K 式発達検査2001(2歳8ヶ月) 領域|発達年齢(DA)|発達指数 姿勢・運動領域|3歳1ヶ月|113 認知・適応領域|1歳11ヶ月|70 言語・社会領域|1歳5ヶ月|53 全領域|1歳11ヶ月|69 新版 K 式発達検査2001(3歳9ヶ月) 領域|発達年齢(DA)|発達指数 姿勢・運動領域|3歳1ヶ月|81 認知・適応領域|2歳7ヶ月|68 言語・社会領域|2歳4ヶ月|62 全領域|2歳6ヶ月|66 |
2歳10ヶ月 | ・自閉症 ・発達性言語障害 | ・ひとり歩き:11ヶ月 ・初語:1歳6ヶ月 | 発達遅延項目 ・指さし:1歳の時点ではしなかった。3歳0ヶ月で獲得した。 障害特性(7歳時点) ・オウム返し:少ないがある(発話の0.1割) ・感覚遊び:あるが少ない。(ぬいぐるみを投げる、飛び込む) ・おままごとなどのごっご遊び(象徴遊び)、構成的遊びができる。 ・言語理解:良好。コミュニケーションはおおむねとれる。 ・言語表出:明瞭。自分の行動や物の状態を「とことこ」「じゅー」など擬音語・擬態語を使って表現できる。しかし、一語発話が多く(発話の8割以上)3語分文以上の発話はみられない。不明瞭な発語もある(発話の0.7割)。 補足(7歳時点) ・3歳から私立幼稚園へ通う。 ・療育の中で自閉症の基本症状が軽減した。 ・当初の診断は自閉症だったが、自閉スペクトラム症と発達性言語障害の境界にいる。 ・小学校は通常学級在籍。 ・野球、かくれんぼなどのルール遊びがある程度出来る。日常生活の中で友達と遊ぶことで獲得した。 参考:岐阜大学教育学部研究報告「自閉症スペクトラムの子どもの初語言語と遊びの発達」榊原弘子、小山正 人文科学 第52巻 第2号(2004年) |
3歳0ヶ月 | ・自閉症 ・軽度知的障害 | ・ひとり歩き:11ヶ月 | 発達遅延項目 ・指さし:1歳の時点ではしなかった。3歳0ヶ月で獲得した。 ・言語発達遅延:初語は3歳3ヶ月。 障害特性(6歳時点) ・独り言:あり。自分のしていることを言葉にすることが多い。 ・オウム返し:多い(発話の1割以上) ・感覚遊び:あるが少ない。(音を鳴らす) ・ごっご遊びやブロックやプラレールなどの構成的遊びができる。 ・言語理解:あり ・言語表出:人とやり取りしている時に発語が多い。一語発話が多い(発話の6割以上)。特定のフレーズを多用する。「(ぼく)上手?」と親に聞き、「やった!」という感情表現も多い。「わぁー!」という驚きの表現などもある。要求する際に「たすけて」「まって」「あけて」など言える(発話の3割以上)。 補足 ・3歳10ヶ月から言語療育を始める。 ・4歳から保育所に通い始める 参考:岐阜大学教育学部研究報告「自閉症スペクトラムの子どもの初語言語と遊びの発達」榊原弘子、小山正 人文科学 第52巻 第2号(2004年) |
3歳 | ・自閉症 ・中度知的障害 | ・ひとり歩き:11ヶ月 ・初語:1歳6ヶ月 | 発達遅延項目 ・指さし:1歳の時点ではしなかった。4歳0ヶ月で獲得した。 ・言語発達遅延:4歳半から言語療育を始める。 障害特性(5歳時点) ・独り言:多い ・オウム返し:あり(発話の0.5割) ・感覚遊び:おもちゃを口に入れる、おもちゃを繰り返し落として遊ぶ、電車のおもちゃの車輪を自分の顔にあてる、レジのおもちゃのボタンを押し引き出しを開けすぐ閉めるのを繰り返して遊ぶ。 ・見立て遊び(象徴遊び)はあるが、積木などの構成遊びはない。 ・言語表出:一語発話が多い(発話の6割以上)。要求する際に「もういっかい」「おしまい」「おねがい」など言える(発話の3割以上)。 ・言語理解:あり。「それなに?」「〇〇ありますか?」などの質問に対応する。 補足 ・4歳から保育所に通い始める 参考:岐阜大学教育学部研究報告「自閉症スペクトラムの子どもの初語言語と遊びの発達」榊原弘子、小山正 人文科学 第52巻 第2号(2004年) |
保育園年中 | ・自閉スペクトラム症 | ・知的障害:なし ・5歳でのWISCのFIQは96 | 0~1歳頃 ・こだわり ・育児サークルの参加を嫌がる ・着替えを嫌がる 4~5歳頃 ・保育園登園を嫌がる ・着席ができない ・ルールや約束事の理解が難しい ・言葉で自分の気持ちを説明できない 小学2年生頃 ・1番にならないとカッすることが減ってきた ・好きな教科と嫌いな教科の差が激しい 補足 保育園在園中に療法センターで、心理個別指導、OT個別指導を開始 参考:埼玉大学紀要 教育学部,66(2):401-413(2017)「知的障害のない自閉症スペクトラム障害児の初期発達に関する研究」根岸 由紀、細渕 富夫 |
保育園年長 | ・自閉スペクトラム症(当時、広汎性発達障害) ・ADHD | ・知的障害:なし ・6歳でのWISCのFIQは100 | 0~1歳頃 ・言語発達遅延 ・特定の音に対する感覚過敏 ・こだわり 4~5歳頃 ・保育園登園を嫌がる ・みんなと同じ行動がとれない ・教室の中に入れない ・友達と関われない 小学2年生頃 ・1年生で登校を渋る ・通級指導教室で短時間登校に ・ADHD治療薬のコンサータの服薬開始 補足 小学校に入学後、医療機関でのペアレントトレーニングと通級指導を開始 参考:埼玉大学紀要 教育学部,66(2):401-413(2017)「知的障害のない自閉症スペクトラム障害児の初期発達に関する研究」根岸 由紀、細渕 富夫 |
まとめ
ひとり歩きや初語が特に遅くなかったケースもあることが印象的でした。
発語がある自閉症児の場合、大きくなってからも1語発話が多いようです。言語発達の情報は、下記ページにて詳しく説明していますので、併せてご覧ください。
また、多くの場合、共同注意である指さしの獲得が遅かったですね。指さしについては、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。
また情報を見つけたら追加していきます。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました。