自閉症の子は話さない?いいえ、話す子もたくさんいます

自閉症の子は話さない?

自閉症の人は話さない、というイメージを持っている方は多いかもしれません。

ならば、愛しのわが子が「自閉症」かもしれないと不安を覚えた時、もしこの子が一言でも意味のある言葉(有意味語)を話せていたら「自閉症」じゃないという証明になるのでしょうか?

今回は「自閉症の人は話せるかどうか」について詳しく見ていきます。

はじめに

自閉症と自閉スペクトラム症は違います。それらの違いについては「【自閉症】【自閉スペクトラム症】の違いは?|発達障害、ASD、ADHD などの用語説明も」ページで詳しく解説していますので、是非あわせてご覧ください。

「自閉症 = 話さない」ではない

私は自閉症について学ぶ前は、自閉症の人は話さない笑わない目を合わさないというイメージがありました。

なので息子の発達のおかしさに気付き始めた頃は、ネット検索で「自閉症」の文字を見て不安になりながらも、「息子は話す、よく笑う、こちらの顔も見てくる」と不安を打ち消す日々でした。

しかし、そのイメージが当てはまる自閉症の人は、先行研究からも、自分で経験しても、自閉症スペクトラムの中の一部の方々でした。

どの程度の自閉症児が話すか、その特徴は後ろの方でお話しします。

【言語障害】は一部の人の特徴

どういうことでしょうか。自閉症児の【言語発達】について、専門家の研究結論をご覧ください。

中心的な障害とは考慮されていない

現代の精神医学において、世界中で最も広く使用されている精神科のテキスト「Kaplan & Sadock’s Comprehensive Textbook Of Psychiatryカプラン&サドックの精神医学の包括的な教科書)」を執筆したニューヨーク大学医学部精神科の教授であるベンジャミン・サドック(Benjamin James Sadock)博士は下記のように述べています。

ベンジャミンJサドック教授
ベンジャミン・サドック教授 画像はNYU Langone Healthより

Aberrant language development and usage is no longer consid-ered a core feature of autism spectrum disorder.

KAPLAN & SADOCK’S SYNOPSIS OF PSYCHIATRY Behavioral Sciences/Clinical Psychiatry" ELEVENTH EDITION Benjamin J. Sadock. Virginia A. Sadock. Pedro Ruiz (2014) p.1152
↑和訳概要

異常な言語発達と使用は、自閉症スペクトラム障害のコア機能としてはもはや考慮されていません。

最大の症状ではない

NHKの番組でもよく拝見する、お茶の水女子大学の榊原洋一教授は下記のように述べています。

榊原洋一教授
榊原洋一教授 画像はNHKより

自閉症の最大の症状は,言語遅滞ではなく,対人的な相互作用の障害である。言語的コミュニケーションが可能になる(会話ができる)人もいる,ということからも,言語的コミュニケーションの障害が「最大」の症状ではないことは明らかである。

日本音響学会誌63巻7号〔2007)P365?369 「特集―小特集言語障害を通して再考する音声言語情報処理― 自閉症児の言葉」p.366
POINT

多くの最近の研究から、「異常な言語発達と言語使用」は自閉スペクトラム症の定義的なものではなく自閉症スペクトラム障害を持つ一部の人の特徴とされるようになっている

どのくらいの自閉症児が話せるの?

息子が通う特別支援学校の生徒や、勤務先の障害者就労支援施設でも、よく喋る自閉症児(者)も数名います。語彙数が少ない自閉症児(者)も含めると【有意味語を話す自閉症児(者)】は「結構いる」という印象です。

具体的な比率ではどうでしょうか?

約半数

東京大学病院の精神神経科にいらした臨床心理士の仙田周作先生、染谷利一先生方の研究論文に、東京大学医学部付属病院精神神経科小児部デイケアにおいて治療教育を受けた3歳6ヶ月~7歳1ヶ月(平均6歳4ヶ月)の自閉症児62人(男女比は男49人、女13人)について調査したものがあります。

そこでは62人の言語表出やシンボル表象機能(※)の発達水準の評価などを行っています。

※シンボル表象機能:物には名前があり、例えば実物でもイラストでも同じ「ネコ」と呼ぶということを認識できる機能のこと

言語表出の結果では、年齢に関係なく、約半数の自閉症児が有意味語を話すというものでした。

対象児62例の有意味語の有無では,有意味語無しは29例,有意味語有りは33例であり,有意味語無しが47%を占めていた.

日本コミュニケーション障害学会出版 コミュニケーション障害学 1993年10 巻1号 Pp.27-34 「〈自閉症児のことばの問題〉自閉症児の表出言語と表象機能との関係: 自閉症児の言葉の発達を促す指導」仙田 周作, 染谷 利一, 亀井 真由美, 松永 しのぶ, 太田 昌孝
POINT

自閉症児も有意味語を話す

自閉症児のオウム返しは?

自閉症の人は、話せてもオウム返しが多かったり、独り言が多いイメージもありますよね。それは反響言語と言われるものです。

自閉症児のオウム返しについては、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

まとめ

今回は、自閉症児でも話すということについて見てきました。

話せるから、という理由でうちの子は自閉症・自閉スペクトラム症じゃない、とは言えない事が分かりましたね。

私の息子は自閉症児ですが、それなりに会話が成立しているように話す息子について、周りの人たちから「自閉症じゃないよ」と理解されず、辛かった経験があります。

この辛い経験は、息子が自閉症であることの中で、1、2を争う苦労した点です。

わが子の言語発達が遅く、自閉症に対して不安がある方は、下記ページ「その子が自閉症かどうか」を考えるポイントをまとめていますので、是非あわせてご覧ください。

自閉症児かどうかは、下記のポイントもとても重要なので、そちらもどうぞ。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!