自閉症児【こだわり】の発達過程
自閉症スペクトラムの子は、何かに【こだわり】をもっている場合が非常に多いです。そしてその「こだわり」というのも、発達に応じて変化していくことが分かっています。
今回は自閉スペクトラム症の「こだわり」の発達過程を見ていきましょう。
自閉スペクトラム症と【こだわり】
精神障害の操作的診断基準のDSM-5では、自閉スペクトラム症の診断項目の一つに「行動、興味、または活動の限定された反復的な様式」を含めています。これが「こだわり」と表現される項目です。
【こだわり】の発達過程
自閉スペクトラム症のこだわりは、ある順序で発達、つまり変化します。
こだわりの内容から、その子の発達具合が分かるということです。
一段階ずつ見ていきましょう。
【1】自己刺激行動
自閉スペクトラム症児の場合、成長に伴い、指をひらひら動かしてじっとみる、横目で何かをじっと見る、耳をふさぐ、ぐるぐる回る、奇声をあげるなどをして、周りの情報を遮断する「自己刺激行動」が見られ始めます。
最初に現れる「自己刺激行動」とは、情報の洪水の中で立ち往生している自閉症児が、自ら恒常的な刺激を作りだし、刺激入力を遮断している姿に他ならない。
杉山登志郎(2016)「自閉症の精神病理」The Japanese Journal of Autistic Spectrum 2016, Vol.13-2, p.5-13
【2】興味の限局:はじめてのこだわり
続いて初めて「こだわり」と言えるものが出現します。最初の「こだわり」は、回転するものや、記号・ロゴマークなどに対することが多いです。
そのような、混沌とした情報・刺激の中から、識別が簡単なものを手が掛かりに、「認知」というものをしはじめたということです。
下記の例えがとても分かりやすいです。
我々がロシアの街角を歩いている。看板はすべてロシア語で書かれていて何も分からない。遠くに日本語で「日本レストラン」と書かれた看板が見える。するとその看板に向かって我々は突進するだろう。同じように、混沌とした世界の中に、換気扇だけがポツンと見える。するとそれが体育館だろうがスーパーマーケットだろうがそこに向かって自閉症児は突進する。
杉山登志郎(2016)
知的障害を伴う自閉スペクトラム症(自閉症)の息子は、2歳頃から4歳頃まで、柵や連続した模様を横目をしながら走る視覚刺激がこだわりになっていました。自分で歩いている時や移動時の8割は横目をしながら視覚刺激遊びをしていました。
また、よく回転するものを見ていました。
【3】順序固執
世界に秩序があることが分かるようになると、つぎは順序の「こだわり」がでてきます。
数字の並びも理解し、カレンダーへの固執も出てきます。
息子は、それまでなかった順序のこだわりは、年中さんの頃から一気に出てきました。
【4】質問癖
対人関係が発達してくると、何度も何度も同じ質問をしてくるようになります。
先のことに不安があって「今日音楽ある?」等と何回も同じ事を確かめる場合もあるし、分かっている答を期待して、分かっていることでも何回も質問することがあります。
世界自閉症啓発デー 日本実行委員会<公式サイト>「自閉症の人たちの特性と困難さ」
ある子は「長谷川先生何線乗ってきた?」と聞き、埼京線に乗ったという答を聞くとにっこりです。分かっているのに一日に何回も質問されます。
息子も年中頃から小学2年生頃まで、その状態でした。特に日付や予定に関してが多く、たくさんの絵カードを掲示し、確認する方法を伝えていました。そして、小学4年生頃には異常な質問は亡くなっていたと思います。
【最後】ファンタジーへの没頭(高機能の場合)
これは高機能の場合にはなりますが、【こだわり】はファンタジーへの没頭へと発達していきます。
アニメのキャラクターや電車・バスなどの乗り物にこだわり、それに応じた独り言を繰り返すことに代表される行動です。
テレビのセリフや本人の過去の経験を基に、いつも同じ流れやセリフを枠組みにして、少し内容を変え再構成したりするケースもあります。
自閉スペクトラム症特有のファンタジーへの没頭です。
アニメの「ワンピース」のキャラクターになりきって、ぶつぶつとつぶやきながら、ふり動作を随伴させます。さまざまな場所でこうした行動が出現しますが、この行動はほぼパターン化されています。(小4・I)
神園ら(2011)「広汎性発達障害のある児童生徒に出現するファンタジーへの没入現象」琉球大学教育学部発達支援教育実践センター紀要(2), p.33-45
広汎性発達障害におけるファンタジーの出現は、筆者らの評定による吟味を経た後でも、86.4%の高い出現率を示した。(中略)広汎性発達障害に出現するファンタジーはその起源が彼らのこだわり行動にあることが確認された。
神園ら(2011)
【こだわり】とパニック
自閉症児のこだわりに起因するパニックは頻繁にあります。
ASD患者は自分の心情を伝えることが難しく周囲からの理解を得難い。また固執性や常同性から、普段と異なる環境に置かれるとパニック状態に陥る。
安藤めぐみ 他(2016)「自閉スペクトラム症とてんかん」日本薬理学会 日本理試148, p.121-122
さいごに
今回は、こだわりの発達の流れを見てきました。
こだわりも言語のように一定の発達を辿ることが分かりました。
自閉症である息子のこだわりの実例や対応方法などは、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました!