【耳をふさぐ】【手を繋がせてくれない】この子は自閉症なの?|感覚の特徴

2021年5月2日

感覚過敏は自閉症なのか?

耳をふさぐのも、手を触られたくないのも、感覚が他の人と違うことが原因です。「感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ」は自閉スペクトラム症の診断基準の一つになります。

今回は、そのような行動をする子が自閉症・自閉スペクトラム症なのかどうか考えてみます。

はじめに

自閉症と自閉スペクトラム症の違いについては、【自閉症】【自閉スペクトラム症】【発達障害】の違いとは?ページに詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

感覚刺激への過敏さ、鈍感さとは?

感覚とは、主に、触覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、平衡感覚などにあげられるものです。

大多数の人よりも感度が高い場合(過敏)を【感覚過敏】、低い場合(鈍感)を【感覚鈍麻】と言います。

【感覚過敏】の例

  • 触覚過敏…ベタベタな感触が苦手、シャワーや風でも痛みを感じる、手を繋ぐのが苦痛、人に触られるのが苦手、着られる衣類の素材が限定的
  • 視覚過敏…光や画面がまぶしく感じる、白い紙の文字がにじんで読めない
  • 聴覚過敏…音がとても大きく感じる、特定の音に対する苦痛、実際にはその音が出ていないのに苦痛に感じるほど聞こえる
  • 味覚過敏…舌触りや温度、味が敏感で食べられないものがある、偏食になる
  • 嗅覚過敏…特定のにおいが苦痛、実際にはそのにおいはないのに苦痛に感じるほど感じる
  • 平衡感覚過敏…乗り物酔いしやすい
  • 温度感覚過敏…温度差が苦痛

【感覚鈍麻】の例

  • 触覚鈍麻…体感できる強い刺激を求めて、身体を叩くなど傷付けたりする、病気やケガの痛みを感じず危険
  • 聴覚鈍麻…   〃   、耳を叩く
  • 嗅覚鈍麻…においを感じにくい、自己衛生に鈍感になる、異臭に気が付かず危険
  • 平衡感覚鈍麻…グルグルと回っていたくなる
  • 温度感覚鈍麻…厚い、寒いが感じられず、衣服の調整が困難、やけどや熱中症の危険と隣り合わせ

【感覚過敏】【感覚鈍麻】は、自閉スペクトラム症の特徴?

感覚刺激の情報は、外部からの刺激を受けた感覚器官自体が感じるものではなく、感覚器官から脳へ伝えられることで感じています。

感覚鈍麻というのは、感覚を処理する脳に原因があるのではないかと考えられています。発達障害の人の脳は、神経のネットワークが弱いことがわかっていて、それが原因で、自分の体に危険な事態が起こっていても気付かないという問題が起きている可能性があります

NHK サイカル 2019.11.01 “骨折しても痛くない” ~知られざる発達障害「感覚鈍麻」~ 長崎大学 岩永 竜一郎 教授

なので、脳の機能障害とされている発達障害や自閉スペクトラム症において、【感覚過敏】や【感覚鈍麻】は、よく見られる特性として現れます。

割合としては、過半数以上という研究結果もあります。

非定型的な感覚の特徴の問題がASDにおいて認められる頻度は、調査の対象の年齢や診断などによっても異なるが、標準化された感覚の特徴に関する尺度を用いて評価された場合、69~95%と推定される。

精神神経学雑誌 第120巻 第5号(2018)Pp.369-383「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」高橋 秀俊、神尾 陽子 p.371

原因が明白になっていない自閉スペクトラム症は、世界的に共通している診断基準(操作的診断基準)が設けられていますが、その最新版であるDSM-5でも、診断基準の1つとして「感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ」と記載されていることから、多くの自閉スペクトラム症の人が【感覚の特徴】を持っていることが分かります

しかし、【感覚の特徴】がある=自閉スペクトラム症ではない

しかし、【感覚の特徴】がある=自閉スペクトラム症とはなりません。

自閉スペクトラム症の診断は、それ以外にも診断基準が複数該当することでなされます。

自閉スペクトラム症の診断基準内容は、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

自閉スペクトラム症では【感覚探究】という特徴も

自閉スペクトラム症の人の中には、【感覚過敏】【感覚鈍麻】以外にも【感覚探究】という特徴を持っている人もいます。

ASDの感覚の特徴の問題には、他にも「感覚探究」というものがあります。(中略)感覚探究では、特定の感覚に関する経験を強く望んだり、没頭したりする。

精神神経学雑誌 第120巻 第5号(2018)Pp.369-383「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」高橋 秀俊、神尾 陽子 p.370

【感覚探究】の例

  • 自分の指のにおいを繰り返し嗅ぐ
  • 食べ物ではないものを繰り返し口に入れる

【感覚の特徴】の症状・程度

症状・程度は人それぞれ

【感覚過敏】【感覚鈍麻】【感覚探究】がある場合でも、症状や程度は、人によって異なります。

なので、「聴覚過敏がないから自閉スペクトラム症ではない」や「偏食だから自閉スペクトラム症だ」「ベタベタな感触が苦手だから自閉スペクトラム症だ」というようには判断しません

The symptoms of hyperesthesia vary between individuals. They depend on which of your senses are affected and how severely. Some people with touch sensitivity can experience severe pain when their nerves are triggered. People with auditory sensitivity can hear painfully loud noises, when in truth no such noise has been made. People with smell sensitivity often report a wide range of smells, when in reality there is no such stimulus present. And some people will experience a combination of these symptoms.

Healthline “Hyperesthesia" Dr. Cynthia Cobb
↑和訳概要

感覚過敏の症状は個人によって異なります。それらはあなたの感覚のどれが影響を受けているか、そしてどれほど深刻かによって異なります。触覚に敏感な人の中には、神経が刺激されると激しい痛みを感じる人もいます。聴覚に敏感な人は、実際にはそのような音が出ていないのに、痛々しいほど大きな音を聞くことができます。匂いに敏感な人は、実際にはそのような刺激が存在しないのに、しばしば広範囲の匂いを報告します。そして、一部の人々はこれらの症状の組み合わせを経験します。

顕著に見られるのは、嗅覚、味覚、触覚、嗅覚と言われています。

程度は体調や場面で変わる

感覚過敏の程度は、不安や疲れ、ストレスが強いときに酷く現れることもあります。

感覚過敏は、そのときの体調や気分によっても大きく左右されます。同じ感覚刺激であっても、体調が悪かったり、緊張や不安、イライラがあるときには、感覚過敏が出やすくなります。
好きなこと集中できることに取り組んでいるときや、安心できる相手のときは、苦手な刺激があっても大丈夫なこともあります(例 好きなゲームに集中しているときは、苦手な大きな音がそれほど気ならない)。

【感覚の特徴】はいつから現れる?

乳幼児期から現れる

【感覚過敏】【感覚鈍麻】は、乳幼児期から認められます。

ASDの感覚の特徴の問題は、乳幼児期から重要とされる。自閉症の同胞研究 17) では、乳児期の感覚の特徴も問題の有無が、後の自閉症診断に影響した。

精神神経学雑誌 第120巻 第5号(2018)Pp.369-383「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」高橋 秀俊、神尾 陽子 p.371

下記動画は、新生児の頃から認められていた感覚過敏の例です。

感覚過敏の自閉症児の赤ちゃんの動画
Youtube【自閉症の特徴 No.1/12】生後5ヶ月 手を触らせてくれない|感覚過敏

感覚鈍麻は気付かれにくい

感覚過敏は気付かれやすいですが、感覚鈍麻は気付かれにくいとされています。

感覚過敏があれば本人が不快感を訴えますし、たとえば音がうるさく感じたときに耳を塞ぐなど周囲も気付きやすい一方、「感覚鈍麻」は「感じない」というのが特徴なので本人が自覚していないことも多く、周囲の人も気付きにくいのです。

NHK サイカル 2019.11.01 “骨折しても痛くない” ~知られざる発達障害「感覚鈍麻」~

自分の感覚がほかの人と違うと感じたのは、小学生のとき。力加減が分からず、けんかで過度にやり返してしまうことがあったそうです。

NHK サイカル 2019.11.01 “骨折しても痛くない” ~知られざる発達障害「感覚鈍麻」~ 菊地啓子さん

年齢で変化する?

6~9歳頃がピーク

そして、その【感覚の特徴の問題】は、乳幼児期よりも少し年齢が上がった方が、感じられやすくなります。

6~9歳頃がピークになり、9歳以降は少し気にならなくなっていくという研究結果があります。

0~3歳、3~6歳、6~9歳、9歳以上の4郡に分けた場合、出生後年齢が上がるに従い、ASDと定型発達との間で奸悪過剰反応と感覚探究の問題の違いが大きくなり、6~9歳でピークを迎え、9歳以上で低下することが報告されている。

精神神経学雑誌 第120巻 第5号(2018)Pp.369-383「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」高橋 秀俊、神尾 陽子 p.371

なぜ変化する?

自閉スペクトラム症の他の特性も、発達に従って変化し、例えば少し前ですと「以前は自閉症と言われていたが、今ではアスペルガー症候群と言える」と表現される人もいます。

なので、【感覚の特徴】も発達に従い変化する部分もあると考えられます。

乳幼児期よりも少し年齢が上がった子どもの方が目立つ理由は、発達に伴い、自分の快・不快に気づけるようになったり、表現の手段をより多く獲得することで、周りの人から認められやすくなるなどもあると思います。

幼児期と成人期とで、このような違いが生じる要因としては、感覚情報処理の発達的変化の存在も可能性としては推測されるが、一方で、児童期には保護者による他者評価が中心であるのに対して、成人期には自己評価がほとんどであるため、評価方法のちがいというアセスメント・バイアスの可能性も指摘されている。

精神神経学雑誌 第120巻 第5号(2018)Pp.369-383「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」高橋 秀俊、神尾 陽子 p.371

問題の程度

【感覚の特徴の問題】の程度は、自閉症の重症度と関連性があると言われています。

ASDの感覚の特徴の問題の重症度に影響する要因として、年齢や自閉症の重症度が知られている。

精神神経学雑誌 第120巻 第5号(2018)Pp.369-383「自閉スペクトラム症の感覚の特徴」高橋 秀俊、神尾 陽子 p.371

自閉症の息子の例

中度知的障害を伴う自閉スペクトラム症(自閉症)の息子の【感覚の特徴】の例です。

  • 新生児期
    • 触覚過敏…手を触られるのを嫌がる(小学生までは手を繋いだこともなかった)
  • 2歳頃~
    • 触覚過敏…ひどくなった。くすぐったがりが目立ち、着替えさせるのが本当に大変になった(くすぐったがりは今も変わらずで、服装では襟があるタイプは苦手)
    • 味覚過敏…偏食
  • 小学生
    • 温度感覚鈍麻なのかな?と思うことが多々あるが、知的障害との区別が難しい
    • 小学生のいつからかは、手を繋げるようになっていた

本人は他にも何か感じているかもしれませんが、私の理解している範囲では、他の感覚の特徴はありません。ベタベタも嫌がらないし、耳をふさいでうるさがったりしたこともありませんでした。

対応例は?

【感覚の特徴】に関わらず、自閉スペクトラム症児の基本の対応方法は、怒ったり無理強いすることではなく、周囲の大人が環境設定してあげることからはじまります。

聴覚過敏→イヤーマフ、騒がしい所へ行かない

聴覚過敏の対応方法でよく見かけるイヤーマフも、大人がしてあげられる環境設定の一つですね。息子のお友達でも、幼稚園頃から使う子が何人かいました。

また、騒がしい所に行かないというのも、大人がしてあげられる環境設定です。

視覚過敏→サングラス、白い紙に書かない

視覚過敏の子で、サングラスを掛けられるのであれば掛けさせてあげましょう。

また、集団の中で園庭や校庭に出るのが嫌な場合、その子は違う場所ですごせるように対応してあげることも環境設定です。

その子へは、暗い色の紙に文字を書いて提示してあげるのもいいですね。

触覚過敏→無理に触らない、洋服に配慮する

触覚過敏の場合は、嫌いな感触なものには無理して触らせない、嫌がるなら極力本人に触らないであげる、洋服の素材や形、タグなどに配慮してあげましょう。

味覚過敏→無理に食べさせない、食事内容を工夫

味覚過敏の偏食では、無理して食べさせようとしても食べられません。

息子も2歳頃から偏食がひどくなり、食べる量も必然的に減りました。

栄養が偏らないか毎日不安でしたが、てんかん専門医であり発達専門医でもある主治医から、20年くらい同じものしか食べられなくても、血液検査でひっかかったこともない例を聞き、仕方ないかと思うことがました。(骨はもろくなるかもねーなんて言われましたが笑)

息子は、家では食べられるものを食べて、年中さんから通った通所施設の給食を療育の一環として、徐々に何年もかけて食べられる品数を増やしたことで、今では給食ではなんでも完食できるようになっています。家では、偏食というより、好き嫌いがかなり多いという程度まで食べられる料理の幅が広がっています。

感覚探究→口に入れないように配慮

息子のお友達は、【感覚探究】で、ペットボトルのキャップやシール、ピロンと出ていて千切れるビニールを口にいれてしまう・食べてしまうので、家でも学校でも、そのようなものが手にできないように環境を整えていました。授業参観の日、その子が体育館に昔から貼られているビニールテープを爪ではがして食べている姿を見て、お母さんは笑っていましたが(笑)

イギリス自閉症協会の動画

「自閉スペクトラム症」概念の提唱者で「アスペルガー症候群」の名付け親でもあるローナ・ウィング医師が設立したイギリスの自閉症協会は、2016年に自閉症児の世界観を表現した約1分半の動画を公開しています。

感覚過敏の子がショッピングモールにお母さんと入り、最終的にはパニックになってしまうのですが、モールの中の景色や音、光が自閉症児の目・耳にはどのように捉えられるのかが分かります。

Youtube イギリス自閉症協会 “Can you make it to the end?"
※この動画には、点滅するライト、明るい色、突然の大きなノイズが含まれています

I’m not naughty. I’m autistic.

For autistic people like me, the world can be a terrifying place. Sometimes sounds feel like my head is exploding. Clothes feel like my skin is burning. And when a tiny thing changes, it feels like my world is ending.

Youtube イギリス自閉症協会 “Can you make it to the end?" より引用
↑ 和訳概要

私は言うことを聞かない(行儀が悪い)わけではありません。 自閉症なのです。

私のような自閉症の人にとって、世界は恐ろしい場所になる可能性があります。 頭が爆発しているように聞こえることがあります。 服が焼けているような気がします。 そして、小さなことが変わると、私の世界は終わりを告げているように感じます。

まとめ

このように【感覚の特徴】がある子との日常生活はなかなか大変です。

発達に伴い、【感覚の特徴】も軽減、変化していくので、気長に付き合っていくしかないものです。

今回はこの辺で。最後まで読んで下さって、ありがとうございました!