自閉症スペクトラムの【診断基準】とは?ICD-10、DSM-5の項目を解説!

2020年8月6日

今回は、【ICD-10】と【DSM-5】による、自閉症・自閉スペクトラム症(ASD)の診断基準の内容をご説明します。

まずは、より細かい基準や、具体的な例が記載されている【DSM-5】(2013年- アメリカ精神医学会 発効)からご説明します。

【DSM-5】の ASD 診断基準

自閉スペクトラム症╱自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • A.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。
    • (1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。
    • (2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
    • (3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。
  • B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。
    • (1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語独特な言い回し)。
    • (2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)。
    • (3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭過度に限定・固執した興味)。
    • (4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)。
  • C.症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。
  • D.その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。
  • E.これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害自閉スペクトラム症しばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。

DSM-5の自閉スペクトラム症診断基準は、少し複雑ですよね。その理由は、自閉スペクトラム症の原因は解明されておらず、操作的診断基準を設けることでしか、信頼性のある診断を下せないためです。原因については、下記ページをご覧ください。

【DSM-5】補足

自閉スペクトラム症(自閉症)の診断基準(DSM-5)

DSM-5での診断基準の内容について、少し補足をしていきます。

中心障害は2つ

DSM-5の自閉スペクトラム症診断基準のうち、中心的な障害は下記の2つです。上記リストのA.B.にあたります。

  • ASDの中心的な障害
    • 社会的コミュニケーション、対人的相互反応の欠陥
    • 行動、興味、活動の限定された反復的な様式

具体的な行動例は後ろの方でリストアップしています。

言語発達・運動発達の遅れ、多動は?

よく混同されがちですが、下記項目は、自閉スペクトラム症の診断基準に含まれていません

  • ASDの診断基準ではない項目
    • 言語発達の遅れ
    • 運動発達の遅れ
    • 多動

多動

多動は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)という発達障害であり、自閉スペクトラム症とは異なります。ADHDと自閉スペクトラム症は頻繁に併発する、また、両者とも社会的コミュニケーションに問題が見られるため混同されがちです。

自閉スペクトラム症児の言葉

自閉スペクトラム症児の場合、言語発達の遅れはよく見られる特徴ですが、多くの研究からそれは定義的なものではないことが明らかになっています。過去には「異常な言語発達と言語使用」も自閉症スペクトラム障害の中心的な障害とされていましたが、現在はASDの一部の人の特徴とされるようになっています。詳しくは下記ページをご覧ください。

運動発達の遅れ

運動発達の遅れは、自閉スペクトラム症とは関係ありません。運動発達が遅い子も、人一倍早かった子もいます。

運動発達の遅れは、知的障害がある場合によく見られます。そして知的障害は自閉スペクトラム症に最も多く見られる合併症です。両者の幼児期の特徴も似ています。言語発達の遅れもみられます。そのため誤解されやすい項目です。詳しくはこちらをご覧ください。

どの位が知的障害を併発?

「E.(中略)知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり」の「しばしば」はどの位でしょうか?具体的な研究内容や数字はこちらに記載しています。

【2歳】くらいまでに存在

「C.症状は発達早期に存在していなければならない」は、大体2歳くらいまでを意味します。詳しくはこちらにまとめています。

POINT

自閉スペクトラム症の症状は、見た目で明らかになっていなくても、2歳くらいまでには存在している

具体な行動例は?

小さい頃に表出する分かりやすい代表例を挙げてみます。参考になるページのリンクも貼っておきます。

A. 社会的コミュニケーション、対人的相互反応の欠陥の一例

B . 行動、興味、活動の限定された反復的な様式の一例

(4)感覚の特徴は、以前のDSMには含まれていませんでしたが、このDSM-5にて自閉スペクトラム症診断基準に含まれ、非常に注目されている点です。

参考動画の一覧

動画で上記の様子をご覧になりたい方は下記ページをご参照ください。

【ICD-10】の 自閉症 診断基準

続いて、ICD-10(2013年版)準拠の診断基準です。政府からの内容提示の情報を、引用として載せています。

※ICD-10自体は1990年に発効されたもので、まだ「自閉症スペクトラム」の表記はありません。(もうすぐ公開されるICD-11では自閉スペクトラム症と変更されます)◆参考◆ICD-10とDSM-5の【最新版の発効年】が大幅にちがう件について

自閉症の診断基準(ICD-10)

F84 広汎性発達障害
Pervasive developmental disorders

対人的相互作用とコミュニケーションにおける質的な機能障害及び, 制限された, 常同的で反復性の興味と行動のレパートリーによって特徴づけられる障害の一群である。これらの質的な異常は, すべての状況における個人の機能の広汎な特徴となっている。関連する何らかの医学的病態や知的障害<精神遅滞>の分類が必要な場合は, 追加コードを使用する。

F84.0  自閉症
広汎性発達障害の一つの型であり,

a) 病的なあるいは損なわれた発達の存在が3歳未満に認められること
b) 精神病理の三つの領域, すなわち, 対人的相互作用, コミュニケーション及び制限された常同的で反復性の行動のすべてにおいて認められる異常な機能の特徴的な型

で定義されている。 これらの特異的な診断特徴に加えて, その他の非特異的な一連の問題が見られるのが普通である。 たとえば恐怖症, 睡眠と摂食の異常, かんしゃく発作,(自己に向かう)攻撃性である。

厚生労働省サイト「疾病、傷害及び死因の統計分類」> 2.基本分類表及び内容例示表>イ.ICD-10(2013年版)準拠内容例示表>第5章 精神及び行動の障害(F00-F99)

広汎性発達障害、自閉症、自閉スペクトラム症の違い

詳しくは下記ページで説明しています。

【ICD-10】と DSM-5 の比較

【ICD-10】は【DSM-5】とは完全に一致はしませんが、意味合いはほぼ共通しています。

ICD-10 と DSM-5 の比較
  • 【ICD-10】「a) 病的なあるいは損なわれた発達の存在が3歳未満に認められること」は【DSM-5】「C.症状は発達早期に存在していなければならない」とほぼ共通している
  • 【ICD-10】「b)精神病理の三つの領域(※)すべてにおいて認められる異常な機能の特徴的な型」は【DSM-5】「『A.社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥がある』『B.行動、興味、または活動の限定された反復的な行動が2つ以上あること」が中心的な障害である』」とほぼ共通している
CHECK

※:精神病理の三つの領域とは、ローナ・ウィング医師が定義した「ウィングの三つ組み」と呼ばれ、下記を特徴としている状態です

  • 対人的相互作用…周りの人の意図が理解できず、その場に応じた正しい行動ができない
  • コミュニケーション…言語発達が定型発達と異なる
  • こだわり…異常なほどで、常にそうしないとパニックになる

さいごに

今回は、【ICD-10】と【DSM-5】による自閉スペクトラム症の診断基準を記載しました。

概要はWikipedia、厚生労働省のe-ヘルスサイトにも載っています。

このように自閉症・自閉スペクトラム症には詳細な診断基準が存在するということから、田中ビネー知能検査Vなどの検査結果で診断されるわけではない事もよく分かりました。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!