自閉症スペクトラムの【診断基準】とは?2022年最新版ICD-11、DSM-5の項目を解説!

2020年8月6日

最新版の自閉症スペクトラムの診断基準

2022年最新版のICD-11と、DSM最新版のDSM-5による、自閉スペクトラム症 (ASD) の診断基準の内容をご説明します。

ASD 診断基準

DSM-5

2013年にアメリカ精神医学会から発効された「DSM-5」の診断基準は下記です。

自閉スペクトラム症╱自閉症スペクトラム障害(ASD)
  • A.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥があり、現時点または病歴によって、以下により明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。
    • (1)相互の対人的・情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方通常の会話のやりとりのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ。
    • (2)対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりの悪い言語的・非言語的コミュニケーションから、視線を合わせることと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ。
    • (3)人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、様々な社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他人と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ。
  • B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式で、現在または病歴によって、以下の少なくとも2つにより明らかになる(以下の例は一例であり、網羅したものではない)。
    • (1)常同的または反復的な身体の運動、物の使用、または会話(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同運動、反響言語独特な言い回し)。
    • (2)同一性への固執、習慣へのかたくななこだわり、または言語的・非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)。
    • (3)強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭過度に限定・固執した興味)。
    • (4)感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音、感覚に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)。
  • C.症状は発達早期に存在していなければならない(しかし社会的要求が能力の限界を超えるまで症状は明らかにならないかもしれないし、その後の生活で学んだ対応の仕方によって隠されている場合もある)。
  • D.その症状は、社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に臨床的に意味のある障害を引き起こしている。
  • E.これらの障害は、知的能力障害(知的発達症)または全般的発達遅延ではうまく説明できない。知的能力障害自閉スペクトラム症しばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。

中心的な障害は?

A~Eの5つのうち、中心的な障害はA、Bの2つです。

  • ASDの中心的な障害
    • 社会的コミュニケーション、対人的相互反応の持続的な欠陥
    • 行動、興味、活動の限定された反復的な様式

文字で読んでも想像しにくいと思います。具体例は後ろの方に載せましたので、ご参考になれば幸いです。

年齢は?

C.の「発達早期に存在」は、大体2歳くらいまでを意味します。幼児期の特徴とも重なるため、気が付かれていない事もあります。詳しくはこちらにまとめています。

自閉スペクトラム症(自閉症)の診断基準(DSM-5)

ICD-11

2022年にWHOから発効されたICD-11でも、自閉スペクトラム症の診断基準は上記DSM-5の内容に準拠していますが、何点か補足となる情報を記載します。

中心的障害の条件

ICD-11では、自閉症スペクトラムの中心的障害に下記条件を付けています。

  • 社会的コミュニケーション、対人的相互反応の欠陥…「年齢と知的発達レベルに対して期待される範囲を逸脱している」
  • 反復的な様式…「年齢、性別、社会文化的背景に比べて明らかに非典型的または過度に」

参考:日本精神神経学会 精神経誌 123(4)「ICD-11における神経発達症群の診断について―ICD-10との相違点から考える―」森野百合子 他

正常との境界

ICD-11では、自閉症スペクトラムと正常の境界についての解説を設けています。簡単にまとめてみました。

  • 対人的相互反応の欠陥…内気とは違う。内気であれば、身近な状況では、適切な社会的コミュニケーションが可能。
  • 社会的コミュニケーションの欠陥…幼児期に言葉の遅れがあっても、上記条件でない限り、自閉症スペクトラムの可能性が高いわけではない。
  • 反復的な様式…反復的、常同的な行動は、定型発達児でも多くの子どもたちに見られる。これだけでは自閉症スペクトラムの可能性が高いとは言えない。診断には「社会的コミュニケーション、対人的相互反応の持続的な欠陥」が必要。

努力で適応できていてもASD

ICD-11は,「格別の努力により多くの場面で適切に機能しているASD者」に対しても,ASDの診断は適当であると記している.

日本精神神経学会 精神経誌 123(4)

他疾患との境界

ICD-11では、自閉症スペクトラムと下記疾患の境界についての解説を設けています。

発達性協調運動症(DCD)、発達性語音症を除く神経発達症、統合失調症、統合失調型症、社交不安症、場面緘黙、強迫症、反応性アタッチメント症、脱抑制性対人交流症、回避・制限性食物摂取症、反抗挑発症、パーソナリティ症、チック症群、二次性神経発達症候群

乳幼児期にASDと間違われやすいDCDについては、後日別ページにまとめます。簡単にだけ↓。

発達性協調運動障害(DCD)の子どもは、「ミルクを飲むときにむせやすい」「寝返りがうまくできない」「ハイハイがぎこちない」など、乳児のうちからその兆候は現れてきます。

てんかんと発達の横浜みのる神経クリニック「DCD:発達性協調運動障害

診断基準が複雑な理由

自閉症スペクトラム診断基準は、複雑ですね。その理由は、自閉症スペクトラムの原因は解明されておらず、操作的診断基準を設けることでしか、信頼性のある診断を下せないためです。原因については、下記ページをご覧ください。

診断基準の補足

言語発達・運動発達の遅れ、多動は?

よく混同されがちですが、下記項目は、自閉スペクトラム症の診断基準に含まれていません

  • ASDの診断基準ではない項目
    • 言語発達の遅れ
    • 運動発達の遅れ
    • 多動

多動

多動は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)という発達障害であり、自閉症スペクトラムとは異なります。ADHDと自閉症スペクトラムは頻繁に併発する、また、両者とも社会的コミュニケーションに問題が見られるため混同されがちです。

最新のICD-11でもDSM-5でも、自閉症スペクトラムとADHDの併発を認めています。ADHDの診断基準については、下記ページで詳しく解説しています。

自閉スペクトラム症児の言葉

自閉スペクトラム症児の場合、言語発達の遅れはよく見られる特徴ですが、多くの研究からそれは定義的なものではないことが明らかになっています。過去には「異常な言語発達と言語使用」も自閉スペクトラム症の中心的な障害とされていましたが、現在は一部の人の特徴とされるようになっています。詳しくは下記ページをご覧ください。

運動発達の遅れ

運動発達の遅れは、自閉症スペクトラムとは関係ありません。運動発達が遅い子も、人一倍早かった子もいます。

運動発達の遅れは、知的障害がある場合によく見られます。そして知的障害は自閉スペクトラム症に最も多く見られる合併症です。両者の幼児期の特徴も似ています。言語発達の遅れもみられます。そのため誤解されやすい項目です。詳しくはこちらをご覧ください。

どの位が知的障害を併発?

DSM-5「E.(中略)知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり」の「しばしば」はどの位でしょうか?具体的な研究内容や数字はこちらに記載しています。

具体な行動例は?

小さい頃の具体例、参考ページのリンクをまとめてみました。ご参考になれば幸いです。

A. 社会的コミュニケーション、対人的相互反応の欠陥の一例

B . 行動、興味、活動の限定された反復的な様式の一例

(4)感覚の特徴は、以前のDSMには含まれていませんでしたが、このDSM-5にて自閉スペクトラム症診断基準に含まれ、非常に注目されている点です。

参考動画の一覧

動画で上記の様子をご覧になりたい方は下記ページをご参照ください。

【参考】ICD-10 自閉症 診断基準

先日までこちらに載せていたICD-10 広汎性発達障害の自閉症の診断基準は、下記ページに移動しました。

さいごに

今回は、自閉スペクトラム症の診断基準を記載しました。

概要はWikipedia、厚生労働省のe-ヘルスサイトにも載っています。

このように自閉スペクトラム症には詳細な診断基準が存在するということから、田中ビネー知能検査Vなどの検査結果で診断されるわけではない事もよく分かりました。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!