自閉症と【てんかん】|発作でASD・知的障害は重くなる?

てんかんと自閉症

自閉症スペクトラムの息子は、2歳6ヶ月で難治てんかんを発症しました。今回は、てんかんと自閉症はどんな関連性があるのかを改めて調べたので、簡単にまとめておきます。どなたかのご参考になれば幸いです。

てんかんについて

てんかんと精神障害の関連性

発症率は高い

てんかんは、一般の人よりも、自閉症・自閉スペクトラム症(以下、ASD)や知的障害を持っている人の方が発症率が高いことが以前より明らかになっています。

てんかんの有病率は、一般的には100~ 150人に1人くらい (0.8%)と言われています。自開症の方のてんがん合併率は、報告者によつて大きく開きがありますが、 13~ 46%と一般の方に比べて高い頻度でみられます。

茨城県自閉症協会 自閉症とてんかん Q&A

ASD患者におけるてんかん発症率は約30%(3)、てんかん患者におけるASD発症率は約5%である(4)。

日本薬理学会 日本理試148,Pp121-122「自閉スペクトラム症とてんかん」安藤めぐみ etc.(2016)

知的障害が重いほど発症しやすい

また、知的障害の程度が重くなるほど、発症率も高くなります。

てんかんと発達障害が合併する場合、多くは知的障害を伴っています。(中略)重度の身体障害と重度の知的障害を併せ持つ重症心身障害はおよそ30~60%にてんかんを合併し、特にほぼ寝たきり状態の重度障害者ではおよそ80%まで増加するとされています。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?

てんかんと精神遅滞が高率に合併することはよく知られている(中略)
? てんかんに罹患している子どもの31?41%が精神遅滞を合併
? 軽度精神遅滞児の8?18%が、また重度精神遅滞児の30?36%がてんかんを合併(中略)
? 精神遅滞児では,その程度が重いほどてんかんを合併する割合が高い

東邦大学医療センター佐倉病院市民公開講座「てんかんと精神症状」メンタルヘルスクリニック 桂川修一(2015)

◆参考◆【知的障害】とは?定義と診断|乳幼児期の特徴|4段階区分

なぜ併発しやすい?

両者ともに原因が脳部位であるため、脳に起因する症状は必然的に併発しやすくなります。

症候性全般てんかんには知的障害を認めることがありますが、それは脳の障害のためにてんかん発作と知的障害が起こっていると考えることができます。

てんかんinfo「てんかんに特有の合併症は?

近年の研究では、共通の原因遺伝子が発見されており、併発原因は神経回路形成の異常の結果と考えられることが報告されています。

ゲノムワイド解析や遺伝子改変モデルを用いた研究により、ASDとてんかんに共通の遺伝子変異として、FmrlやMeCP2、Shank3、SCN2Aなどが報告された(6)。FmrlとMeCP2はそれぞれ脆弱X症候群とレット症候群の責任遺伝子であり、これらの患者はASDとてんかんの両方の症状を示す。ASDとてんかんに共通の遺伝子変異の多くがシナプス関連遺伝子であることから、近年ではASDにおけるてんかんの併発の原因として神経回路形成の異常が示唆されている。

「自閉スペクトラム症とてんかん」安藤めぐみ etc.

しかし、脳分野は多くの精神障害をはじめ、原因が明白になっていないため、研究が続けられています。

参考:良性は定型発達児でもよく見られる

てんかんの中には、良性と表現されるもの(ローランドてんかん)もあり、その場合は、定型発達児でもよく見られます。

「ローランドてんかん」は、(中略)小児期の代表的な良性てんかんです。特別な脳障害の無い発達が正常な子どもで、3歳から14歳にかけて、とくに5歳から8歳に多くおこり、年齢と供に治ります。

一般社団法人 日本小児神経学会「Q19:ローランドてんかんは治るのでしょうか?

てんかんのせいで、自閉症になる?

てんかんのせいで、自閉症・自閉スペクトラム症になることはありません。ご安心ください。

自閉症・自閉スペクトラム症については、下記ページをご参考にしてください。

発作で自閉症や知的障害は重くなる?

定説はない

現代の研究でも、どの程度てんかん発作そのものが知的障害に影響するかは明らかになっていません。

脳のてんかん活動そのものが精神遅滞になりうるか否かという疑問がもたれてから100年以上経過しているがまだ定説はない

東邦大学医療センター佐倉病院市民公開講座「てんかんと精神症状」メンタルヘルスクリニック 桂川修一(2015)

影響があることは濃厚

しかし、繰り返されるてんかん発作は、「認知機能の発達」に影響する可能性があると言われています。

小児期には認知機能の基礎的な機能が急速に発達しますので、この時期に発作が頻繁に起こると認知機能の発達に影響する可能性があります。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?

日本に2ヶ所ある国立のてんかんセンターの1つである西新潟中央病院のサイトでは、発作が減ることで、知的能力が改善する例が多く見られるという記載もありました。参考:国立病院機構 西新潟中央病院 てんかん外科治療Q&A

精神発達障害や異常な行動がある場合、手術によって発作が消失すると、これらの状態も改善することが知られており、早期の外科手術で発作を抑えることが勧められます。

UCB Japan  てんかんinfo 外科手術治療

そのため子どものてんかんでは、抗てんかん薬でコントロール出来ない場合、手術も積極的に検討すべきとしている専門医もいます。手術の適応基準は限られてはいるのですが。◆参考◆難治てんかんの手術について

抗てんかん薬の影響も

抗てんかん薬の処方量も発達に影響します。抗てんかん薬そのものは発達を阻害するものではありません。

発作が止まらないからと量や種類をむやみに増やしてしまうと、副作用で眠くなってしまい、本来日中に活動して発達するべき機会が失われてしまうということです。そのため、てんかん専門医のもとで適切な処方が必要になってくるのです。

抗てんかん薬が眠気などを起こし、昼間に十分な活動ができないことで、それが脳の発達に影響する場合もあります。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?」

難治てんかんの息もてんかん専門医である主治医からそのような説明を受け、ある程度発作はあるけれども、日中元気に活動できるようなバランスの処方をしてもらっています。

ADHDは悪化することがある

また、発達障害の1つであるADHD(注意欠陥・多動性障害)も悪化することがあるようです。

自閉症や知的障害など発達障害のある方(児)は、てんかん発作や脳波のてんかん波が頻発することで、発達の退行やADHDの悪化が見られる事があります。

医療法人ベテール「てんかんはどのような病気?」

参考:良性発作は影響ない

定型発達児がなりやすい良性のローランドてんかんでは、発作回数も少なく、経過も良好のため、多くの場合知能には影響しないと報告されています。

通常発作回数は少なく、合計でも数回以下の患者さんが大半です。(中略)通常は知能にも影響しませんが、一部の患者さんで行動の問題や軽度発達障害を合併することはあります。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?」

まとめ

今回は、自閉症や知的障害の関連性について見てきました。

息子の難治性てんかんの発症~治療経過は下記ページからご覧いただけますので、ご参考になれば幸いです。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!