自閉症と【てんかん】|てんかん発作で自閉症・知的障害は重くなる?

2021年4月20日

てんかんと自閉症

息子は2歳6ヶ月で難治性てんかんを発症しました。難病に指定されているレンノックス・ガストー症候群でした。

先日パソコンのデータを整理していたら、3年半くらいの記録(てんかん発症~なかなか治らず大変だった時期)が出てきたので、まとめてみました。てんかんと自閉症についても改めて調べてみました。

今回はまず、てんかんと自閉症の部分について見ていきます。参考までに、治療法、分類なども簡単にまとめました。

てんかんと自閉症・知的障害

てんかんは、一般の人よりも、自閉症・自閉スペクトラム症知的障害を持っている人の方が発症率高いことが以前より明らかになっています。

てんかんの有病率は、一般的には100~ 150人に1人くらい (0.8%)と言われています。自開症の方のてんがん合併率は、報告者によつて大きく開きがありますが、 13~ 46%と一般の方に比べて高い頻度でみられます。

茨城県自閉症協会 自閉症とてんかん Q&A最終閲覧日 2020.7.28

ASD患者におけるてんかん発症率は約30%(3)、てんかん患者におけるASD発症率は約5%である(4)。

日本薬理学会 日本理試148,Pp121-122「自閉スペクトラム症とてんかん」安藤めぐみ etc.(2016)

また、知的障害の程度が重くなるほど、発症率も高くなります。

てんかんと発達障害が合併する場合、多くは知的障害を伴っています。(中略)重度の身体障害と重度の知的障害を併せ持つ重症心身障害はおよそ30~60%にてんかんを合併し、特にほぼ寝たきり状態の重度障害者ではおよそ80%まで増加するとされています。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?

てんかんと精神遅滞が高率に合併することはよく知られている(中略)
• てんかんに罹患している子どもの31〜41%が精神遅滞を合併
• 軽度精神遅滞児の8〜18%が、また重度精神遅滞児の30〜36%がてんかんを合併(中略)
• 精神遅滞児では,その程度が重いほどてんかんを合併する割合が高い

東邦大学医療センター佐倉病院市民公開講座「てんかんと精神症状」メンタルヘルスクリニック 桂川修一(2015)

てんかんの中には、良性と表現されるもの(ローランドてんかん)もあり、その場合、定型発達児でもよく見られます。

「ローランドてんかん」は、(中略)小児期の代表的な良性てんかんです。特別な脳障害の無い発達が正常な子どもで、3歳から14歳にかけて、とくに5歳から8歳に多くおこり、年齢と供に治ります。

一般社団法人 日本小児神経学会「Q19:ローランドてんかんは治るのでしょうか?

なぜ併発しやすい?

後で説明する「てんかんの原因」の章で詳しく解説していますが、原因は両者ともに脳部位でるため、脳に起因する症状は必然的に併発しやすいくなるためです。

症候性全般てんかんには知的障害を認めることがありますが、それは脳の障害のためにてんかん発作と知的障害が起こっていると考えることができます。

てんかんinfo「てんかんに特有の合併症は?

てんかんのせいで、自閉症や知的障害になる?

てんかんのせいで、自閉症・自閉スペクトラム症や知的障害になることはありません。ご安心ください。

てんかん発症までは普通に思えていたとしても、それはおそらく幼少期特有の特性から気がつけていなかったためです。定型発達児と接する機会が多いほど、その気づきは明確になると報告されており、第一子の場合、気づくのが遅めになることもあります。参考:埼玉大学紀要 教育学部,66(2):401-413(2017)「知的障害のない自閉症スペクトラム障害児の初期発達に関する研究」根岸 由紀、細渕 富夫

てんかんのせいで、自閉症や知的障害は重くなる?

てんかんの発作は、種類はたくさんありますが、意識を失うような大発作を見たり、その際の脳波の乱れを見ると、脳に影響がないはずがないというような印象を受けますよね。

てんかん発症そのものが、自閉症や知的障害を重くしてしまうのでしょうか?

実は、現代の研究でも、てんかんの発作そのものが知的障害になるかは明らかになっていません。

脳のてんかん活動そのものが精神遅滞になりうるか否かという疑問がもたれてから100年以上経過しているがまだ定説はない

東邦大学医療センター佐倉病院市民公開講座「てんかんと精神症状」メンタルヘルスクリニック 桂川修一(2015)

しかし、繰り返されるてんかん発作は、「認知機能の発達」という部分に焦点をあてると、影響する可能性があると言われています。

認知機能とは、いろいろな情報を知覚し、判断し、記憶する情報処理の機能のことで、対人関係を築くこと、計算をすること、計画を立てること、文章を理解すること、ものを考えることなどに関係してきます。特に小児期には認知機能の基礎的な機能が急速に発達しますので、この時期に発作が頻繁に起こると認知機能の発達に影響する可能性があります。(中略)さらに、抗てんかん薬が眠気などを起こし、昼間に十分な活動ができないことで、それが脳の発達に影響する場合もあります。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?

また、発達障害の1つであるADHD(注意欠陥・多動性障害)では悪化することがあるようです。

自閉症や知的障害など発達障害のある方(児)は、てんかん発作や脳波のてんかん波が頻発することで、発達の退行やADHDの悪化が見られる事があります。

医療法人ベテール「てんかんはどのような病気?」2018年1月28日

定型発達児がなりやすい良性のローランドてんかんでは、発作回数も少なく、経過も良好のため、多くの場合知能には影響しないと報告されています。

通常発作回数は少なく、合計でも数回以下の患者さんが大半です。(中略)通常は知能にも影響しませんが、一部の患者さんで行動の問題や軽度発達障害を合併することはあります。

てんかんinfo「小児てんかんで合併することの多い病気は?」

てんかんの原因は?

てんかんはいろいろな種類に分類できる病気ですが、その原因は、脳の損傷要因と、遺伝要因との2つと考えられています。

発作の起こる脳部位、持続時間、電気的活動の伝播の仕方は多様である。発症原因としては、脳損傷と遺伝的要因の2つがある。

日本薬理学会 日本理試148,Pp121-122「自閉スペクトラム症とてんかん」安藤めぐみ etc.(2016)

遺伝的な要因といっても、すべてのてんかん発作で原因遺伝子が特定されているわけではありません。特定されている発作は、ごくわずかです。

てんかんは単純なメンデル遺伝形式をとるのではなく、多くの因子が重なって発症する多要因遺伝形式をとるとされている。(中略)現時点では、てんかんの遺伝子診断が可能な疾患は非常に限られている。症候性てんかんである進行性ミオクローヌスてんかんの一部、Rett症候群やAngelman症候群の一部、West症候群の原因となるCDKL5変異などの特殊先天奇形症候群であろう

一般社団法人 日本小児神経学会「第17章 てんかんの遺伝と遺伝子診断 」Pp.142-144

つまり、自閉症・自閉スペクトラム症と同様、原因が脳とは分かっていても、医師が患者に伝える時に「原因不明です」と表現されるものです。

参考として、自閉症の原因の遺伝的要因について下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

自閉症との併発について

前に述べたように、自閉症や知的障害の場合、てんかん発症率が高くなります。

遺伝的レベルでの研究では、共通の原因遺伝子が発見されており、併発原因神経回路形成の異常の結果と考えられることが報告されています。

ゲノムワイド解析や遺伝子改変モデルを用いた研究により、ASDとてんかんに共通の遺伝子変異として、FmrlやMeCP2、Shank3、SCN2Aなどが報告された(6)。FmrlとMeCP2はそれぞれ脆弱X症候群とレット症候群の責任遺伝子であり、これらの患者はASDとてんかんの両方の症状を示す。ASDとてんかんに共通の遺伝子変異の多くがシナプス関連遺伝子であることから、近年ではASDにおけるてんかんの併発の原因として神経回路形成の異常が示唆されている。

日本薬理学会 日本理試148,Pp121-122「自閉スペクトラム症とてんかん」安藤めぐみ etc.(2016)

しかし、脳分野は多くの精神障害をはじめ、原因が明白になっていないため、研究が続けられています。

【参考】てんかんは治せる?

てんかんは、発作の様子や脳波・MIR検査などで医師が抗てんかん薬を調整し、数年間かけて治療していきます。服薬期間は数年間と長いですが、難治性てんかんでなければ、目に見える発作は服薬開始から長くかからずに止まっているはずです。

てんかんも治療は抗てんかん薬による対症療法が主である。

日本薬理学会 日本理試148,Pp121-122「自閉スペクトラム症とてんかん」安藤めぐみ etc.(2016)

一部の難治性てんかんの場合を除いててんかんは治せる病気と言われています。

以前に、私達の病院で治療したすべての小児てんかん患者さんの長期経過を調査しましたが、8割の患者さんで発作は抑制され、そのうちの半数以上の患者さんで無事に薬を中止出来ていました。このことからも、根気よく治療するとてんかん、特に子どものてんかんはほとんどの場合治るといえます。

一般社団法人 日本小児神経学会「Q9:てんかんは治るのですか?

薬剤抵抗性てんかんの場合は、検査でてんかん焦点を特定し、その脳部位を手術で除去し、てんかん発作を抑えることができる場合もありますが、ケースバイケースです。

病巣が確定している場合の病巣切除や半球離断では発作が止まる率が高いのですが(60-80%)、MRIで異常がない場合は止まる率は低くなります。

一般社団法人 日本小児神経学会「Q5:てんかんは手術で良くなりますか?

こどものてんかんの治療では、発作を止める事はもちろんですが、発達を注意深く見守る事が大切です。こどもの脳の発達には、頻回のてんかん発作と大量の抗てんかん薬は良くないことがわかっています。治療を開始する時には、どのようなてんかんか(てんかん症候群)を診断し、発作と発達が先々どのようになるか見通しをたてる必要があります。またその際、手術可能なてんかんではないのか、MRIで腫瘍や皮質異形成あるいは海馬硬化などの異常はないか確認し、発作が止まらない時には時期を逸せず手術を受けられるように準備しておく事も必要です。

医療法人ベテール「てんかんはどのような病気?」2018年1月28日

【参考】てんかんの分類

てんかんは、脳に明らかな異常がない場合【特発性】と、明らかな異常を有する(と考えられる)場合【症候性】と、大きく2つに分けられます。

さらに、発作のタイプで、脳の一部から発作が始まる【部分てんかん(焦点性てんかん)】と、脳全体が一気に発作を起こす【全般てんかん】にも分けられ、「症候性全般てんかん」などのように組み合わせて分類されています。

発作の種類特発性(原因不明)症候性(病変が認められる)
【部分てんかん】
・単純部分発作(ねじれる等)
・複雑部分発作(口もごもご、自転車こぎ様など)
・二次性全般化発作(上記2つの発作から全般へ)
※経過が良い
ローランドてんかん(生後18ヶ月~13歳)
・良性後頭葉てんかん(学童期後半)  など
・側頭葉てんかん
・前頭葉てんかん
・頭頂葉てんかん
・後頭葉てんかん  など
【全般てんかん】
(脳全体)
・強直間代発作(強直:手足が伸び力が入る、間代:手足がガクガク)
・脱力発作
・欠神発作
・ミオクロニー発作(ピクッとする)
小児欠神てんかん(4~10歳)
・若年ミオクロニーてんかん
・覚醒時大発作てんかん  など
※発作回数が多い、
※発症前から知的障害はなどの精神障害がみられる
ウェスト症候群(点頭てんかん)(乳児期、おおむね発達遅滞が認められる、指定難病)
レノックス・ガストー症候群(2~8歳、ほぼ発達遅滞が必発、指定難病)  など

※太字は、小児てんかんで代表的なもの

参考:独立行政法人国立病院機構 静岡てんかん・神経医療センター、てんかんinfo

まとめ

今回は、自閉症・自閉スペクトラム症や知的障害の関連性について見てきました。

両者とも、ほとんどの場合で原因が明白にはなっていないが、ともに脳の障害であり、併発する割合が高いのは、必然的であることが分かりました。

息子の難治性てんかんの発症~治療経過は下記ページからご覧いただけますので、ご参考になれば幸いです。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!