【自閉スペクトラム症】だと【知的障害】となるの?

2020年8月8日

ASDとIDの関連

自閉スペクトラム症児だと、その子は知的障害児になるのでしょうか?

そうではありません。

今回は、【自閉スペクトラム症】と【知的障害】の関連性、そして、その2つの見分け方を見ていきます。

【自閉スペクトラム症】と【知的障害】は違う

【自閉スペクトラム症】(ASD)と【知的障害】(ID)は違います。下図が両者の関係性を表したものです。

自閉スペクトラム症とは?

【知的障害】は、【自閉スペクトラム症】の親カテゴリーである発達障害」と同じ並びの分類です。

さらにその「発達障害」と、【知的障害】、さらに「精神疾患」というくくりを合わせると、「精神障害」という大分類になります。

このあたりは複雑で混乱してしまうポイントです。下記ページに詳しく解説していますので、是非あわせてご覧ください。

【自閉スペクトラム症】の人は、2通り存在

上記の通り、【自閉スペクトラム症】の人の中には

  • 【知的障害】を併発している
  • 【知的障害】を併発していない

の2通りが存在するのです。

【自閉スペクトラム症】だと【知的障害】となるわけではない事が、お分かりいただけたと思います。

混同されやすい【理由】

「【自閉スペクトラム症】だと【知的障害】なのかな?」と勘違いしやすいのは、理由があります。

【理由1】多くの人が併発しているから

大きな理由は、【自閉スペクトラム症】の多くの人が、【知的障害】持ち合わせているためです。

POINT

【自閉スペクトラム症】の合併症の内、最も多いものが【知的障害】

様々な併存症が知られていますが、約70%以上の人が1つの精神疾患を、40%以上の人が2つ以上の精神疾患をもっているといわれています。特に知的能力障害(知的障害)が多く、その他、ADHD(注意欠如・多動症)、発達性協調運動症(DCD)、不安症、抑うつ障害、学習障害(限局性学習症、LD)がしばしば併存します。

厚生労働省 e-ヘルスネット「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」最終閲覧日2020.08.08

自閉スペクトラム症の操作的診断基準であるDSM-5でも、下記のように記載されています。

知的能力障害と自閉スペクトラム症はしばしば同時に起こり、自閉スペクトラム症と知的能力障害の併存の診断を下すためには、社会的コミュニケーションが全般的な発達の水準から期待されるものより下回っていなければならない。

米国精神医学会 発行、日本精神神経学会 日本語版用語監修「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」2014年06月

併発している人の割合は?

現代の精神医学において、世界中で最も広く使用されている精神科のテキスト「Kaplan & Sadock’s Comprehensive Textbook Of Psychiatryカプラン&サドックの精神医学の包括的な教科書)」を執筆したニューヨーク大学医学部精神科の教授であるベンジャミン・サドック(Benjamin James Sadock)博士は、下記のように述べています。

ベンジャミンJサドック教授
ベンジャミン・サドック教授 画像はNYU Langone Healthより

Approximately one third of children meeting the current DSM-5 diagnosis of autism spectrum disorder, exhibit intellectual disability (ID).

KAPLAN & SADOCK’S SYNOPSIS OF PSYCHIATRY Behavioral Sciences/Clinical Psychiatry" ELEVENTH EDITION Benjamin J. Sadock. Virginia A. Sadock. Pedro Ruiz (2014) p.1152
↑ 和訳概要

自閉スペクトラム症の、現在のDSM-5診断に対応する子供の約3分の1は、知的障害(ID)を示しています。

その他の研究結果は、下記のとおりです。

  • 2014年にスウェーデンで行われた研究では、​​14,516人のうち5,689人と約40%の数値。参考:The Familial Risk of Autism
  • Wikipediaでは、自閉スペクトラム症児の4560%が、知的障害を併発しているとの記載。
  • アメリカでは、知的障害のある人の約40にも自閉スペクトラム症の特性があり、逆に自閉スペクトラム症のある人の約70にも知的障害があるとも言われている。参考:Wikipedia “Intellectual disability

【理由2】特徴が似ている

ノースダコタ大学のアニタ・ペダーセン(Anita L. Pedersen)博士は、この2つは特徴が似ていると述べています。

アニタ・L・ペダーセン博士
アニタ・ペダーセン博士 画像はANOVAより

Clinical characteristics of autism spectrum disorder (ASD) and intellectual disability (ID) overlap, creating potential for diagnostic confusion. 

Pedersen, A.L., Pettygrove, S., Lu, Z. et al. “DSM Criteria that Best Differentiate Intellectual Disability from Autism Spectrum Disorder.Child Psychiatry Hum Dev 48, 537–545 (2017).
↑ 和訳概要

自閉スペクトラム症と知的障害の重複する臨床的特徴は、診断上の混乱の可能性がある

特に【幼少期】の発達遅延が共通

特に幼少期は、【自閉スペクトラム症】【知的障害】、共に発達が遅いという共通点もあります。

特に、言語発達遅延は共に最もみられる特徴なのです。

【自閉スペクトラム症】と【知的障害】の言語発達

【自閉スペクトラム症】の言語発達については「1歳半で言葉が出ない…1歳半で言葉を喋らないと自閉症?」ページで、【知的障害】の言語発達については「【知的障害】の定義・程度の具体例:ASDの併発で最も多い障害」で解説していますので、そちらをご参照ください。

【理由3】広汎性発達障害→自閉スペクトラム症への統合

【自閉スペクトラム症】は少し前まで存在していませんでした。

【自閉スペクトラム症】が出てくる前は、広汎性発達障害というカテゴリーが活用されていました。

広汎性発達障害の中で

  • 知的障害併発している人は「自閉症」
  • 知的障害がない人については「高機能自閉症」や「アスペルガー症候群」

診断されていました。

それが2013年に操作的診断基準である【DSM-5】で、広汎性発達障害という概念がなくなりました。

自閉症の人も、高機能自閉症の人も、アスペルガー症候群の人も、みんな自閉スペクトラム症】という診断名になるように統合されました。

そのことで、先述した通り、診断名は同じ【自閉スペクトラム症】でも、知的障害伴う人と、伴わない人存在する形になったのです。

なぜ統合されたの?

知的障害があってもなくても、同じように社会生活の適用が難しく、同じような支援が求められる中、有名な「自閉症」と診断された人しか手厚い支援を受けられない現実があったためです。

アスペルガー症候群」の名付け親でもあり、自身の娘も重度の自閉症であるローナ・ウィング医師も、娘の子育てや研究を通してそのことを実感し、全てを連続体として捉える「自閉スペクトラム症」という定義を提唱した、という経緯があるのです。

【自閉スペクトラム症】と【知的障害】を見分けるポイント

【その1】自閉スペクトラム症の特性から考える

【自閉スペクトラム症】と【知的障害】を見分ける重要なポイントは、【自閉スペクトラム症】の中心的な障害特性知ることです。

POINT

【自閉スペクトラム症】の特徴から考える

つまり、知的障害だけ持っている人には見られない特徴となりますが、それは、下記の2点です。

  • 社会的コミュニケーションの欠陥
  • 制限された反復行動

具体例は下記が分かりやすいと思います。

具体的ポイント
  • ボディーランゲージを使って自分の気持ちを伝えようとする
  • 視線を合わせてコミュニケーションをしようとする
  • 同一性の保持あまり固執しない

2017年、ペダーセン博士はアメリカ14州の人口を調査し、2816人の8歳までの知的障害児について研究発表しました。そこから【自閉スペクトラム症】と【知的障害】で最も区別された特徴を、下記のように述べています。

impaired non-verbal social behavior and lack of social reciprocity,(中略)restricted interests, strict adherence to routines, stereotyped and repetitive motor mannerisms, and preoccupation with parts of objects

Pedersen, A.L., Pettygrove, S., Lu, Z. et al. “DSM Criteria that Best Differentiate Intellectual Disability from Autism Spectrum Disorder." Child Psychiatry Hum Dev 48, 537–545 (2017).
↑ 和訳概要

非言語的な社会的行動の障害と社会的相互関係の欠如、(中略)制限された関心、ルーチンへの厳格な順守、常同的で反復的な運動マナー、およびオブジェクトの一部への専念

【自閉スペクトラム症】の具体的な診断基準項目について、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

【その2】知的障害の定義からから考える

知的障害の定義については、下記ページで説明しています。乳幼児期の特徴や、日常生活能力水準の具体例も詳しく載せていますので、是非あわせてご覧ください。

つまり、【自閉スペクトラム症】でも「療育手帳」を取得できない場合がある

【自閉スペクトラム症】だと【知的障害】ではないということは、つまり、【自閉スペクトラム症】でも「療育手帳」を取得できない場合がある、ということにもなります。

「療育手帳」の交付対象者が、【知的障害】がある子(人)だからです。知的障害があるかどうかは、田中ビネー知能検査ⅤWISC-Ⅳから求められるIQから判別できます。

「療育手帳」については、下記ページで詳しく説明しています。下記疑問についても解消できますので、是非あわせてご覧ください。

  • ↓解決できる疑問↓
    • 療育手帳を取得したくてもできなかった、どうしたらいい?
    • 療育の教室に通うには、「療育手帳」を取得しないと通えない?

まとめ

今回は、教育機関や医療機関でも混同されがちな、【自閉スペクトラム症】だと【知的障害】となるのか?また、その2つの見分け方を見てきました。

【自閉スペクトラム症】と【知的障害】は違う、しかし特徴が似ており、併発の頻度も高いことから、表題のような疑問が生まれることが分かりました。

気になる方は、発達の専門の外来を受診すると安心ですね。

発達外来について

「お子さんが小さいうちは検査結果が正確に出ないことが多いので、お母さんの聞き取りが重要なポイントになる」などのポイントを、下記でも詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。

また、自閉スペクトラム症の診断基準や、関連用語を理解したうえで、お子さんをよく観察し、受診するとスムーズだと思いますので、この記事にあるリンク先についても一読されることをおススメします。

今回はこの辺で。読んで下さってありがとうございました!