【自尊感情】とは?なぜ大切?|乳幼児期から発達

自尊感情とは?

自尊感情とは何か正確にご存知ですか?それが何かを知らないと大切にする正確な方法も分かりません。子育てをしていると子どもの自尊心・自尊感情は大切にしないといけないと漠然とは分かっていますが。

そこで今回は、自尊感情とは何か、高い・低いとどうなるか?を解説していきます。

自尊感情とは?

どんな自分も「大好き」と思える感情

自尊感情は、自分の【良い面】だけでなく【悪い面】もひっくるめて、自分自身を「大好き」「大切」と思える感情のことです。

自尊感情チェック

例えば、失敗したとき、こんな風に思えますか?↓

  • 「そんな自分でもいいか」
  • 「自分なら次がんばれる」
  • 「そんな自分でも大好き」

人から批判されたとき、こんな風に思えますか?↓

  • 「そんな考えもあるのか」
  • 「でも自分はこう思うから、そんな自分でいい」
  • 「次こそ期待に応えられるように自分はがんばれる」

そんな風に思えていれば、高い自尊感情を持ってると言えます。

また、自尊感情は、自分が他の人より優れていると感じる、威張るものとは異なります。

参考:創元社出版(2012)飯長喜一郎「人間性心理学ハンドブック」p.323

大切な理由

精神的に安定する

高い自尊感情を持っている人は、人の意見に感情的に左右されにくく、精神的に安定すると言われています。失敗したとき・批判されたときには、自分だけでなく他人の意見も受け入れ「次がんばれる!」と思う事が出来ます。

自尊感情が育まれてこそ、物事に前向きになれたり、他の人への思いやりが持てるのです。その結果、社会の中で幸せに生きていくための大きな力が生まれるため、自尊感情は大切と言われています。

社会適応できる

心理学辞典でも、自尊感情を「精神的健康や適応を作り出す源」としています。

さらに、自尊感情が高い人は人生満足度が高く、みな対人関係が良好とされています。1)

努力できる人になる

自尊感情が高い人は、学習面などで困難に直面しても粘り強く努力ができるとされています。2)

子どもと思春期の子の心理学をご専門としているダーシー・ライネス(D’Arcy Lyness)博士は、自尊感情は子供たちが過ちに対処するのに役立つと述べています。3)

画像はKidsHealthより

自尊感情が低いと?

自尊感情が低い人は他者に依存的で影響を受けやすく、暴力や犯罪などとの関連性も指摘されています。詳しくは下記ページにまとめました。

自尊感情の発達

乳児期から

前述のライネス博士は、自尊感情の発達はとても早い段階、それは乳児期から始まり、時間の経過とともにゆっくりと発達していくと述べています。具体的には「子供が安全で、愛され、受け入れられたと感じるような、積極的な注意と愛情のこもったケアを受けたとき」に始まるとしています。

児童教育について多くの論文も執筆され、所沢市立柳瀬小学校の校長でもあられた金澤広明氏、子どもの自尊感情を育てるためには、どんなに幼い子であっても一人の人間として接する事が大切と述べています。4)

周りに影響される

自尊感情は、生涯を通じ、周りに影響されながら高くなったり低くなったりしながら発達していきます。

セルフ・エスティームの心理学 自己価値の探求」の著者である九州大学などで教授を務めた遠藤辰雄心理士は、自尊感情は「重要な他者」を含む人間関係のなかで形成されるものと述べています。

アメリカ北イリノイ大学のChild Development and Family Centerの教師シェリー・ニューマン(Sherie Newman)氏は、すべての子どもの自尊心は、ポジティブな言葉を介した対話の成功のたびに成長すると述べています。

一方、学校や職場、友人関係を通じて壊れやすい感情でもあります。安定的な自尊感情を維持するためには、土台となる早い段階での適切な自尊感情の確立が重要です。

自尊感情を安定して維持するためのポイントは下記ページにまとめましたので、ぜひあわせてご参考になさってください。

1歳半~3歳が重要

「アイデンティティ」の定義や「エリクソンの心理社会的発達理論」を提唱したことで有名な発達心理学者エリクソンは、1歳半から3歳頃の発達が好ましくない結果になると、子どもの自尊感情が低くなると述べていました。詳しくはこちらで説明しています。

自尊感情が育まれにくいケース

たっぷり愛情を掛けられていても、親が下記のような態度をとっていては、自尊感情は育まれにくいでしょう。

  • 上手くいったときだけ「いい子だねー」という表現で褒められる
  • 「そんな子は、嫌い。いい子にしていれば、大好きだよ」と常にメッセージを送られる
  • 幼いうちから非常に厳しくしつけられる
  • 子どもの選択・意見が尊重されない
    • いつも「こっちの方がいい、こうした方が上手だよ」と親の意見で物事が決められる
    • 子どもが失敗しないように「こうしないと」と先回りして親が手を出す

ぜひ下記ページもご参考になさってください。

【参考】自尊感情と自尊心の違いとは?

心理学者、動物行動学者の東北大学名誉教授である仁平義明教授によると、以前は「自尊心」と言われていたものが近年「自尊感情」と表現されるようになったと述べています。5)

仁平義明教授
画像は東北学院大学より

心理学辞典での「自尊感情」項目の説明にも「自尊心ともいう。」と説明があることから、このふたつは同義で扱ってよい項目と言えるでしょう。

自尊感情の定義は,研究者によって微妙に異なるが,自分自身に対する全体的評価感情の肯定性,すなわち自分自身を基本的に良い人間,価値ある存在だと感じていることであるという点でおおよそ共通している。自尊心ともいう。

コトバンク「自尊感情(最新 心理学事典の解説)」

参考情報・文献の引用

1) 健康や適応を作り出す源

自尊感情は精神的健康や適応を作り出す源

コトバンク「自尊感情」

自尊感情が高い人は幸福感や人生満足感が高く,おしなべて自律的で対人関係も良好であるとされている。

コトバンク「自尊感情」

2) 自尊感情が高いと努力できる

イギリス国立大学マンチェスター大学、神経科学&実験心理学部門の心理学教育助手であるサウル・マクロード(Saul Mcleod)氏は、自尊感情が高い人は成長と改善に重点を置くと述べています。

people with high self-esteem focus on growth and improvement

McLeod, S. A. (2012). Low self esteem. Simply Psychology.

2019年にマレーシアで、大学生を対象に行った自己効力感、自信、自尊心の関係性についての研究でも、高い自尊心を持つ学生は、低い自尊心を持つ学生よりも大学での成績が優れていました参考:International Journal of Educational Psychology Hipatia Press. Vol 8, No 2 (2019) “Psychological Impact of Work-Integrated Learning Programmes in Malaysia: The Moderating Role of Self-Esteem on Relation between Self-Efficacy and Self-Confidence" Amar Hisham Jaaffar, Hazril Izwar Ibrahim, Jegatheesan Rajadurai, M. Sadiq Sohail

3) 自尊感情は過ちに対処するのに役立つ

Kids who feel good about themselves have the confidence to try new things. They are more likely to try their best. They feel proud of what they can do. Self-esteem helps kids cope with mistakes. It helps kids try again, even if they fail at first. As a result, self-esteem helps kids do better at school, at home, and with friends.

KidsHealth “Your Child’s Self-Esteem" D’Arcy Lyness, PhD
↑ 和訳概要

自分の気持ちが良い子供たちは、新しいことに挑戦する自信があります。彼らは最善を尽くす可能性が高くなります。彼らは自分にできることを誇りに思っています。自尊心は子供たちが過ちに対処するのに役立ちます。たとえ最初は失敗したとしても、子供たちがもう一度試すのに役立ちます。その結果、自尊心は子供たちが学校で、家庭で、友達関係において、より良い行いをすることを助けます。

4) 幼いころから発達する

自尊感情を育てるために親がすべきことは、どんなに小さくても子どもを独立した一人の人間として扱うことである

金子書房出版「子どもの自尊感情を育む親・教師 (特集 自尊感情を育てる) — (自尊感情を高めるために)」 金澤広明(2007)

5) 自尊心と同義

日本でself-esteemの研究が本格的に行われるようになった1970年代、訳語は「自尊心」だった。ところが、近年は「自尊感情」という表現が多数派に変わった。とくに現在の教育界、臨床界は「自尊感情」一本槍のような状況である。

白?大学教育学部論集 原著論文 2015,?9(2),?Pp.357-380「「自尊感情」ではなく「自尊心」が“Self-esteem” の訳として適切な理由」p.357

文部科学省や心理学辞典、心理学テキストや学会発表時のタイトルでも「自尊感情」を使用しているとのことです。

ちなみに仁平教授としては英語での「self-esteem」は「自尊感情」よりも「自尊心」と訳した方が適切だと結論付けています。

さいごに

自尊心と自尊感情は同義であり、それは自分の良い面も悪い面も含めて自分自身を大好き、大切と思える感情ということが分かりました。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!