子どもの自尊感情|高めるための【10箇条】
親は子どもの自尊感情を損なわないように、失敗しないように、先回りして成功体験だけを与えればいいものでないことは、これまでの子どもの自尊感情を育てようシリーズの記事を読んでいただければ想像できると思います。
今回は、自尊感情の高い子どもの親の言動、そして専門家の具体的提言から【親がとるべき言動】をまとめましたので是非ご覧ください。
親がとるべき言動
- 【その1】子どもの意見を言えるようにする
- 【その2】否定しない
- 【その3】たくさん褒める
- 【その4】厳しい批判をしない
- 【その5】ミスをする自由を与える
- 【その6】役に立つ存在という事を理解してもらう
- 【その7】強みに焦点を当ててあげる
- 【その8】子供が物事を学ぶのを手伝う
- 【その9】子どもの良いお手本になる
- 【その10】親自身についてもケアをする
専門家の先行研究結果を交えながら、詳しく見ていきましょう。
【その1】子どもの意見を言えるようにする
親は子どもに対して、指示的・命令的な対応をとっていることが多いと思います。しかし、そのような態度が続くと、子どもは自分の感情を理解、表現、コントロールする力を育めないと言われています。それでは自尊感情は高まりません。
米国国立科学財団で社会心理学のプログラムディレクターを務められているスティーブン・ブレックラー(Steven Breckler)博士らは、自尊感情の高い子の親は、自分の意見を言えるようにしていると述べています。1)
茨城キリスト教大学の発達心理学や保育臨床学をご専門としている中島美那子教授の自尊感情に関する研究でも、同様の報告がなされています。2)
脳トレで有名な川島隆太教授の研究でも「家の人に話を聞いてもらっている」と思う子ほど、自己肯定感が高いという結論に至っています。量ではなく、子ども自身が満足する会話の質が大切とのことで、親が子どもの意見をしっかり聞くことの大切さが分かります。参考:Active Brain CLUB「親子の会話の質が子どもの自己肯定感を高める」2020.02.21
【その2】否定しない
親は子どもの気持ちを無視した否定的な対応をしてはいけません。
時に否定したいこともありますが、そんな時は否定も肯定もせずに「そうなんだね」「そう思ったんだね」と一旦子どもの意見を受け入れてあげてください。
しかし、わが子の気持ちを受け入れてあげるためには、親もまた「私の子どもはこれでいい」と受け入れている必要があります。そう思えるためには親自身の健全な自尊感情が大切です。そうでないと理想の子ども像との乖離に苦しみ、子どもの意見を否定してしまいます。
【その3】たくさん褒める
子どもと思春期の子の心理学をご専門としているダーシー・ライネス(D’Arcy Lyness)博士は、子どもの自尊感情を育むために、たくさん褒めたたえるべきとしています。褒めることは子どもを誇りに思っていることを伝える方法だとしています。
しかし、褒め方にはポイントがあります。誤った褒め方は、褒めないことよりも悪い影響を与えることが分かっています。詳しくは下記ページで説明しています。
【その4】厳しい批判をしない
子どもが他の人から自分のことについて聞く意見は、子どもが自分自身についてどのように感じるかに直結します。
なので「あなたはとても怠け者ね(怒)!」などの厳しい言葉は有害でしかなく、結果、やる気も起こさせません。具体的な根拠を見ていきましょう。
自尊感情を傷付ける
ライネス博士は、親が自分自身についての否定的な意見を聞くことは、自尊感情を傷つけることだとしています。
「アイデンティティ」の定義や「エリクソンの心理社会的発達理論」を提唱したことで有名な発達心理学者エリクソンは、1歳半から3歳頃が自尊感情(Self-esteem)に関わる時期だとし、その時期に、子どもたちが批判されたり、過度に統制されたり、自分の意志を主張する機会が与えられなかったりする場合、自尊感情を欠くと論じました。3)
行動を正したい時は、忍耐強く
子どもの行動を正したい時は「忍耐強く」がポイントです。
ライネス博士は、現在の批判ではなく「次回彼らにしてもらいたいこと」に集中する、必要に応じて、その方法を示しましょう、と述べています。
【その5】ミスをする自由を与える
子どもには失敗やミスをする自由を与えましょう。もちろん、その際に批判してはいけません。
常に完璧を求められると
常に完璧であると期待され、ミスした時に批判されていると、自尊感情が低くなってしまうのは前項目で説明したとおりです。すると子どもは、ミスしたことについて嘘をついたり隠そうとするようになります。
ミスを受け入れる
親は子どもがミスをしても「失敗したあなたでも、私にとっては大切な存在よ」という気持ちが伝わるようにしなければいけません。
そうすることで「失敗してしまっても自分は愛される存在なんだ」と自己受容感が高まります。自己受容は自尊感情の構成因子なので、結果、自尊感情が高まります。すると「次はもっと努力しよう」と失敗から前進していくことができるのです。
ミスの対処法を教える
子どもがミスや失敗をしてしまった際、親はその対処法を伝え、時に一緒に考えてあげてください。
失敗や問題を解決できた時、子どもは「自分は自分の人生をうまく処理することができるんだ」と自信が持て、結果、自尊感情が高まります。
【その6】役に立つ存在という事を理解してもらう
ライネス博士は、子どもが「自分は他の人にとって役に立つ存在なんだ」ということを理解すると、自尊感情が成長すると述べています。
お手伝いも効果的
簡単な方法は、子どもたちに家でお手伝いをお願いしたり、兄弟姉妹のサポートの協力を促したりすることです。
フィードバックも大切
「ありがとう」「助かったよ」「嬉しいよ」など、言葉でのフィードバックは大切です。
周りの人からのフィードバックは、自尊感情の構成要素と言われている「自己効力感」を高め、結果、自尊感情が高まります。
その自己効力感は、多くの人とつながることでより強化されます。
そのため、学校や地域での奉仕活動や多様な体験も、自尊感情を高めるためには効果的です。
【その7】強みに焦点を当ててあげる
子どもが自分自身について気分を良くさせるためには、弱点よりも強みに焦点を当てます。それは素行を改善させることにもなります。
強みとは、わが子が上手に楽しんでいることです。
ライネス博士は、自分が獲得できたと理解していることについて、賞をとったり良い成績をとることは、自尊感情を高めると述べています。
親は子どもの強みを伸ばしてあげる機会があることを確認してみてください。
【その8】子供が物事を学ぶのを手伝う
赤ちゃんが幼児や幼児になると、少しずつ自分で出来ることが増えてきます。
例えば、初めて物を握る、身体を動かしているうちに寝返りに成功する。もう少し大きくなれば、洋服をひとりで着たり、自転車の乗り方などを学んでいったり。何歳であっても子どもは新しく学ぶことが日々あります。
優越感、喜びの感覚が刺激される
ライネス博士は、子どもがそのような物事を学ぶ最初の一歩を踏み出す時、優越感や喜びの感覚が刺激される、その刺激が自尊感情が成長するチャンスであると述べています。
その時親が笑顔を見せる、つまり、新しい物事を試せた子どもを誇りに思っていることを示すことでも、子どもの自尊感情が高まるとのことです。
手伝い方
最初に見せて教える
物事のやり方を教えるときは、最初に見せてから手伝うことがポイントです。もし子どもがミスをしても、できることをさせましょう。ライネス博士は、学ぶこと、試すこと、そして自分を誇りに思うことの機会を確実に得ることが大切であると述べています。
難易度の見極め
新しい挑戦は、簡単すぎたり、難しすぎたりしないこともポイントです。
Don’t make new challenges too easy ? or too hard.
KidsHealth “Your Child’s Self-Esteem" D’Arcy Lyness, PhD
【その9】子どもの良いお手本になる
ライネス博士は、親が元気に、不平不満を言わずに仕事をする、親自身がよくできた仕事に誇りを持てた時、それは子どもにもそうする事を教えていることになる、と述べています。
正しい態度をモデル化することも重要です。仕事以外でも、例えば、食事を作る、皿を片付ける、玄関を掃除する、車を洗うなどです。
すると子どもは、宿題をすること、おもちゃを片付けること、または布団やベッドを整えることに力を入れることを学び、正しい生活スタイルが自尊感情を高めることに繋がります。
【その10】親自身もケアをする
親が子どもの自尊感情に及ぼす影響はとても大きいです。
自尊感情の高い親が、自尊感情の高い子を作り出す
親の自尊感情も、子どもに相対的に影響すると言われています。詳しくは下記ページにまとめました。
親自身の余裕が大切
先述した中島教授は、母親に余裕がないと子どもの自尊感情に影響を及ぼすと述べ、白梅学園大学や東洋大学で教授も務められた、保育楽や乳幼児期の学びをご専門としている鈴木佐喜子先生も、親の喜びや満足は、親の余裕がないと容易に発達できないと述べています。4)
親自身についてもケアすることが、子どもの自尊感情を高める結果に繋がります。
参考情報・文献の引用
1) 子どもの意見を聞く必要性
Students in elementary school who have high self-esteem tend to have authoritative parents who are caring, supportive adults who set clear standards for their child and allow them to voice their opinion in decision making.
Wikipedia Self-esteem より引用 参考: Olsen, J. M.; Breckler, S. J.; Wiggins, E. C. (2008). Social Psychology Alive (First Canadian ed.). Toronto: Thomson Nelson.
自尊心の高い小学校の生徒は、権威ある親が思いやりのある親を持ち、子どもたちに明確な基準を設定し、意思決定において自分の意見を表明できるようにする傾向があります。
2) 親の自尊感情の影響
下記ページにまとめました。
3) エリクソンの心理社会的発達理論
エリク・ホーンブルガー・エリクソン(Erik Homburger Erikson)の心理社会的発達理論では、1歳半から3歳頃が心理社会的発達段階の第2段階であり、自律性や意思を育む時期だとしています。もし、この段階の発達が好ましくない結果になると子どもは生き残る能力がないと感じて恥(恥ずかしさ)や疑念を抱き、自尊感情を欠き、他者に過度に依存してしまう(つまり自律性や意思が好ましく育まれない)のです。この段階の子どもたちが自律を深めることで励まされ、支えられれば、子どもたちは世界で生き残るための自分の能力においてより自信と安全が確立されるとされています。
If children are criticized, overly controlled, or not given the opportunity to assert themselves, they begin to feel inadequate in their ability to survive, and may then become overly dependent upon others, lack self-esteem, and feel a sense of shame or doubt in their abilities.
McLeod, S. A. (2018, May 03). Erik erikson’s stages of psychosocial development. Simply Psychology.
子どもたちが批判されたり、過度に統制されたり、自分を主張する機会が与えられなかったりすると、生き残る能力が不十分だと感じ始め、他者に過度に依存し、自尊心を欠き、自分の能力に恥や疑念を感じます。
4) 親の余裕が大切
母親の気持ちに余裕が無く不安定な状態であることが,自らの自尊感情の低下に影響し,ひいては子どもの自尊感情へも影響する。
参考:茨城キリスト教大学紀要第45号 人文科学Pp.119-129「母親の自尊感情と養育態度― 子どもの自尊感情を育むために ―」加藤悠・中島美那子
「よい親として機能するためには、親の役割に喜びを見いだすことが必要」であり、「親の喜びや満足は時間がないとか、精神的に圧迫されるとか、責任の重さにおしつぶされるように感じる時には、容易には発達させることができない。人は分かち合えるような人々を必要とする」
日本赤ちゃん学会「シンポジウム2 3歳児神話を検証する2~育児の現場から~」p.5 白梅学園短期大学 鈴木佐喜子教授
さいごに
今回は、子どもの自尊感情ために【親がとるべき言動】を専門家の具体的提言からまとめてみました。
自尊感情を安定して維持するためのポイントも下記ページにまとめましたので、ぜひあわせてご参考になさってください。
最後まで読んで下さって、ありがとうございました!