自閉スペクトラム症は【血液検査】や【脳波】からすぐ診断できる?

自閉症は血液検査や脳波検査で診断できる?

出来ればすぐにわが子が自閉スペクトラム症か、そうじゃないのか、答えが欲しい。

それは「わが子が自閉スペクトラム症かもしれない」と一度でも頭をよぎったことのある親であれば、みな思う事だと思います。

自閉スペクトラム症ではないと証明されない限り、その不安はかき消されることは難しいからです。

今回は、自閉スペクトラム症は血液検査や脳波検査などで、すぐに診断できるのかどうかをご説明いたします。

自閉スペクトラム症は【生理学的検査】で診断できる?

多くの身近な疾病、例えばアレルギーや糖尿病なら血液検査、肺炎や脳梗塞なら画像検査などを組み合わせて明確な診断が下りますよね。

インフルエンザや溶連菌などであれば、検査キットを使用することで、多くの病院で当日検査も可能です。

では、自閉症・自閉スペクトラム症(ASD)も生理学的検査で診断可能でしょうか

答えは、ノーです。血液検査や脳波検査、脳機能画像検査自体では、自閉スペクトラム症とは診断できないのです。

お茶の水女子大学大学院の教授であり、NHKのすくすく子育てやハートネットTVの解説でもおなじみの榊原医師も、下記のように述べています。

榊原洋一教授
画像はNHKより

血液検査,脳波,脳画像検査,遺伝子検索などどんな臨床検査を行っても,自閉症児(者)を確定診断することはできない。

日本音響学会誌63巻7号〔2007)P365?369 「特集―小特集言語障害を通して再考する音声言語情報処理― 自閉症児の言葉」P366 https://doi.org/10.20697/jasj.63.7_365

昔から、脳画像検査については、多くの研究がされているが

多くの研究により、自閉スペクトラム症の人の脳機能画像検査遺伝子検査特徴があるという結果も報告されていますが、残念ながら、定型発達の人と明確に分けることが出来ないレベルのもなのです。

診断には使えない程度の低下

榊原教授は、脳機能画像検査により、注意欠陥多動性障害の人が、脳の前頭前野や尾状核の機能が低下していることが多いことが分かっているが、それは機能の平均値が統計的に低いという程度であり、診断には使えないと結論付けています。

榊原洋一教授
画像はCRNより

注意欠陥多動性障害や自閉症スペクトラムの患者さんの脳機能画像や遺伝子検査で特徴的な知見がえられていますが、診断には使えません。(中略)遺伝子検査についても同様です。

チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)「何か変だよ、日本の発達障害の医療 【前編】過剰検査」2018年4月 6日掲載

明確な病理ではない

国際自閉症学会の自閉症研究ジャーナルの編集長も務められ、有名な精神学者であるカリフォルニア大学精神行動科学科のデビッド・アマラル(David G. Amaral)教授は、自閉症研究を促進するために死後の脳組織も分析しています。

デビッドG.アマラル博士
画像はUC Davis Healthより

アマラル教授らによる2008年の研究では、前頭葉、扁桃体および小脳が自閉症の病理学的関連性が見られたが明確一貫した病理ではないと結論付けています。

Postmortem and structural magnetic resonance imaging studies have highlighted the frontal lobes, amygdala and cerebellum as pathological in autism. However, there is no clear and consistent pathology that has emerged for autism.

Amaral DG, Schumann CM, Nordahl CW ( 2008) “Neuroanatomy of autism." Trends Neurosci 31: pp.137?145 DOI: 10.1016/j.tins.2007.12.005

根拠はまだ分からない

多くの先行研究から、自閉症における総脳容積の増加や、脳成長の早期加速についてしばしば報告されています。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校の子供の神経心理学をご専門とされているヘザー・ハズレット(Heather Hazlett)助教授は、長年、脳のMRIスキャンを使用して自閉症や関連障害のある子どもたちの脳の発達研究を行っています。典型的な脳の発達とどのように比較されるかを調べるための特殊な画像分析ツールも使用して分析を行っていらっしゃいます。

ヘザー・ハズレット助教授
画像はUNCより

ハズレット助教授らによる2005年の研究では、51人の自閉症児の脳と定型発達児25人の脳の比較から、脳の肥大がこの障害の特徴である可能性があることを示す証拠があるとしつつ自閉症の神経解剖学的根拠はまだ分かっていないと結論付けています。

2006年のハズレット助教授らによる別の研究でも、自閉症の人では左側の灰白質の体積が不釣り合いに増加、前頭葉と側頭葉で葉体積の拡大が検出されましたとしています。(頭頂葉、後頭葉では検出されず)その一部の脳領域が不均衡に影響を受けていると考えられているが、この拡大が小児期に限定されているか、成人期まで続くかは研究により相違があると結論付けています。

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結局今でも、自閉スペクトラム症は原因不明

自閉スペクトラム症は、精神障害の1つに分類でき、他の多くの精神障害と同様、明確な原因が分かっていません

自閉症・自閉スペクトラム症の原因については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

なので、血液検査脳波、脳画像からの数値比較からは「自閉スペクトラム症です」と診断が出来ないことがお分かりいただけたと思います。

病院によっては、自閉症の検査に血液検査や脳波を必須にしている所もあるかもしれません。しかし、それはあくまで他の病気が隠れていないかの確認です。

脳波については、自閉スペクトラム症の子はてんかんを合併している子が多いので、補助的な意味で検査を必須化しているという理由です。

てんかんの有病率は、一般的には100~ 150人に1人くらい (0.8%)と言われています。自開症の方のてんがん合併率は、報告者によつて大きく開きがありますが、 13~ 46%と一般の方に比べて高い頻度でみられます。

茨城県自閉症協会 自閉症とてんかん Q&A最終閲覧日 2020.7.28

医師はどうやって自閉スペクトラム症を診断しているの?

それは専門医による問診と観察から診断が行われています。

実際の診断方法については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

まとめ

自閉症・自閉スペクトラム症は、血液検査や脳波検査、脳機能画像検査では診断できないことが分かりました。

自閉スペクトラム症の診断基準項目の内容については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

今回はこの辺で。読んで下さってありがとうございました!