【ICD-11】【DSM-5】ってなに?違いは?|分類表、診断基準
自閉症・自閉スペクトラム症との関連性も含めて「ICD-11」と「DSM-5」について見ていきます。
ICD、DSM
精神障害の診断基準
ICD-11もDSM-5も、精神障害の診断基準(操作的診断基準)が載っています。
自閉症・自閉スペクトラム症も、精神障害の一つなので、その操作的診断基準も載っています。
最新バージョンは?
最初に最新バージョン(2022年6月現在)を載せておきます。◆参考◆【ICD】【DSM】の改訂年一覧
最新版 | 発効年 | 備考 |
---|---|---|
ICD-11 | 2022年 | ICD-11はWHOが2022年2月11日に発効、日本語版も準備中 |
DSM-5 | 2013年 |
数字はバージョン
ICDとDSMのハイフンの後ろについている数字はバージョンです。
「ICD10」もまだよく見るバージョンですね。ICD10は1990年に発効され、ICD11になるまで約32年使用されていたためです。ICD10では「自閉スペクトラム症」という言葉はまだ使用されておらず、「広汎性発達障害」「自閉症」という少し前の表現が使用されています。◆参考◆ICD、DSMは「広汎性発達障害」から「自閉症スペクトラム」へ
最初のバージョンと創刊目的は「【ICD】が創刊されるまで」「【DSM】が創刊されるまで」ページで詳しく解説しています。
色んな病気の分類表でもある
ICDもDSMも、精神障害の診断基準の他に、疾病と障害の分類表でもあります。病気や障害ごとに数桁のコード化がなされています。(精神障害だけではなく全てのです。)
国際的な統計をとるため
医師は、そのコードを用いてカルテや報告書をまとめています。それにより、各方面で国際的な比較でき、様々な統計がとれるようになっています。
はじめは分類表だけだった
ICDもDSMも、創刊時は分類表だけの役割でした。その後、操作的診断基準が導入されました。(→経緯はこちら)
国際的なもの
ICDもDSMも、国際的なものです。
各国で政府や適正な機関により正式に翻訳され、世界中で使用されています。
本でも出版され、医師でなくても購入することができます。
ICD-11 は完全にデジタル化されています。
ICD も DSM も 略称
正式名称は下記です。
- ICD …International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems
- DSM…Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders
日本語訳では下記です。
- ICD …疾病及び関連保健問題の国際統計分類/よく「国際疾病分類」と言われます
- DSM…精神障害の診断と統計マニュアル
ICD-11、DSM-5 違いは?
発効元
ICDとDSMでは発効している団体が異なります。なので、いろいろな違いもあります。発効元は下記です。
- ICD …世界保健機関(WHO)
- DSM…アメリカ精神医学会(APA)
両者とも、世界的な権威を持つ機関です。
適用範囲
- ICD …全ての疾患(身体疾患+精神障害)
- DSM…精神障害
改訂時期
ICD は 第1~9版までは約10年 ごとに、DSM は12~19年 ごとに改訂されています。ICD と DSM が改訂される時期は、一致していません。
ICD-11は、ICD-10から22年振り、ICD-10(2013年版)から9年後の2022年2月に発効されました。(2024年2月現在、日本語版は準備中)
内容:完全には一致していない
上記でみてきたように、【DSM】と【ICD の精神障害部分】の内容は、最初に作られた目的や発効元、改訂時期が違うことから、完全には一致はしていません。
※もちろん、1980年に発効されたDSM-Ⅲは、ICD の命名法と一致させるために6年も前から改訂法を検討されていたり、DSM-Ⅲ と ICD-9 の比較研究から、DSM-Ⅳ と ICD-10 を更に近づける作業が行われたり、精神医学診断の均一性と妥当性、国際的に標準化必要性のために、一貫した基準の確立は行われています。
参考:wikipedia “Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders“ /医学書院出版 精神医学 22巻12号(1980年12月15日)Pp.1263-1274「うつ病の国際的協同研究?特に診断分類について」長崎大学医学部精神神経科 高橋 良
「ICD-10(2013年版)準拠」ってなに?
ICD-10では、よく「ICD-10(2013年版)準拠」とも表記されていますよね。これはICD-10とは違うのでしょうか?
- 「ICD-10」は、1990年に発効されたバージョンです。
- 「ICD-10(2013年版)」は、2013年にICD-10が改正された内容です。
ICD-11は2022年発効予定ですが、改正は毎年行われています。改正内容は、基本分類表に変化が及ばない索引がメインです。
毎年その改正版を使用するのでは大変なので、WHOは主要な改正時に「今回は更新してください」と勧告を出しています。
ICD-10は2003年と2013年にその勧告があったため、最新版が2013年に改正された内容になります。
つまり、「ICD-10(2013年版)準拠」は、最新版の国際疾病分類の基準に従っていますよ、という意味合いでの表記です。
参考:日本診療情報管理学会「webを用いてのICD-10改正(アップデート)の専用ページについて」http://www.jhim.jp/icd_voice/index.html
WHO が使用を勧告した 2013 年までの改正分について、我が国においても最新の分類を用いた統計を作成することとするため、平成28年1月1日よりICD-10(2013年版)に準拠した「疾病、傷害及び死因の統計分類」(平成 27 年2月 13 日総務省告示第 35 号)を適用することとしました。
参考:厚生労働省サイト「疾病、傷害及び死因の統計分類の正しい理解と普及に向けて(ICD-10(2013年版)準拠)」厚生労働省政策統括官(統計・情報政策担当)付 参事官(企画調整担当)付 国際分類情報管理室https://www.mhlw.go.jp/toukei/sippei/dl/ICD-10_2013_2802.pdf
さいごに
今回は、ICD と DSM という国際的な分類表について見てきました。
この2つのことを詳しく知っておくと、今後ネット検索する際や、医療機関に相談する際に混乱がなくなり強みになります。
最後まで読んでくださってありがとうございました!