児童発達支援センターの支援例|幼・保育園との目標の違い
障害を持っている子、または発達が気になる子は、幼稚園や保育園の他に、地域の児童発達支援センターの通所施設に通うという選択肢もあります。幼稚園や保育所等での生活はイメージしやすいと思いますが、児童発達支援センターの通所施設の生活はなかなか連想しにくいと思います。そこで今回は、児童発達支援センターの通所施設と、幼稚園・保育所等の目標などの違いと、センターの通所施設の支援例を見ていきます。
目標の違い
児童発達支援センターの通所施設
はじめに
児童発達支援センターは障害診断がなくても通えます。詳しくは下記ページで詳しく説明しています。
目的
文部科学省が管轄の「児童発達支援ガイドライン」で定められています。
- 発達上の課題を達成させていくための本人への発達支援
- 日常生活における基本的な動作の指導
- 知識技能の付与
- 集団生活への適応訓練
- その他の便宜
- 家族への支援
- 家庭は子どもの発達の基盤となるため、保護者との連携が必須
- 例)障害児と家族の安定した関係性の確立に気を配ってくれる
- 例)連絡帳のやり取りが毎日あり、施設で頑張ったことの報告や、家での困ることの解決策を書いてくれる
- 例)心理士から直接、検査のフィードバックがある
- 例)心理士、理学療法士、作業療法士等、専門職の先生を招いた講習会を開いてくれる
- 家庭は子どもの発達の基盤となるため、保護者との連携が必須
- 専門性を有する職員が支援を行う
- 地域の様々な社会資源との緊密な連携もとる
- 医療機関との連携
- 福祉サービスの活用
- 心理士や理学・作業・言語療法の活用
- 例)定期的に心理士による子ども達の知能発達検査が行われる
- 例)定期的に子ども達に理学療法士、作業療法士による直接指導がある
支援例
「本人への発達支援」の具体的な支援の例は下記になります。
- 「健康・生活」面の支援
- 食事、トイレ、睡眠などの支援
- 食事時の咀嚼・嚥下、姿勢保持、自助具などの支援
- リハビリテーション(身体的、精神的、社会的訓練)の実施
- 学習環境を整える
- 「運動・感覚」面の支援
- 姿勢と運動・動作の基本的技能の向上
- ↑の補助的手段の活用
- 感覚の特性(感覚の過敏や鈍麻)への対応
- 「認知・行動」面の支援
- 認知機能の発達を促す支援
- こだわりや偏食等に対する支援
- 感覚や認知の偏り、コミュニケーションの困難性から生ずる行動障害の予防、及び適切行動への対応の支援
- 「言語・コミュニケーション」面の支援
- 言語の形成と活用、受容言語と表出言語の支援(参考:自閉症の言葉のこと)
- 指差し、身振り、サイン、絵カードを用いて、環境の理解と意思の伝達ができるよう支援
- 共同注意の獲得等を含めたコミュニケーション能力の向上のための支援
- 「人間関係・社会性」の支援
- 周囲の人と安定した関係を形成するための支援
- 模倣を促し、社会性や対人関係の芽生えを支援
- 周囲に子どもがいても無関心である一人遊びの状態から並行遊びを行い、大人が介入して行う連合的な遊び、役割分担したりルールを守って遊ぶ協同遊びを通して、徐々に社会性の発達を支援
- 集団に参加するための手順やルールを理解し、遊びや集団活動に参加できるよう支援
本人への発達支援は、特別支援学校の教育課程と似ています。(特別支援学校は、知的障害の確定診断が必要、かつ、入学基準が法律で定められている点が児童発達支援センターの利用と大きく異なります。)
下記ページは、知的障害児対象の特性支援学校(小学部)の特徴をまとめたものですが、ご興味のある方はご参考になさってください。
幼稚園
目的
文部科学省か管轄の「学校教育法」で定められています。
- 義務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして、幼児を保育する
- 幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長する
目標
そのために、下記を目標として日々の保育が行われます。
- 身体諸機能の調和的発達を図る
- 自主性や協調精神、そして規範意識の芽生えを養う
- 社会生活や生き物・自然への正しい理解・思考力の芽生えを養う
- 言葉の正しい使い方と話を聞こうとする態度を養う
- 音楽や工作を通して豊かな感性と表現力の芽生えを養う
一 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
学校教育法より引用
二 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
三 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
四 日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
五 音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。
保育所等
目的
厚生労働省が管轄の児童福祉法で定められています。
- 保育を必要とする子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図る
目標
基本的には幼稚園の目標と同じです。
(ア) 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。
(イ) 健康、安全など生活に必要な基本的な習慣や態度を養い、心身の健康の基礎を培うこと。
(ウ) 人との関わりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自主、自立及び協調の態度を養い、道徳性の芽生えを培うこと。
(エ) 生命、自然及び社会の事象についての興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培うこと。
(オ) 生活の中で、言葉への興味や関心を育て、話したり、聞いたり、相手の話を理解しようとするなど、言葉の豊かさを養うこと。
(カ) 様々な体験を通して、豊かな感性や表現力を育み、創造性の芽生えを培うこと。
その他の違い
児童発達支援センターと幼稚園などとの違いには、上記以外に、このようなものも挙げられます。
- 児童発達支援センターは、幼稚園や保育所等に発達支援の方法を指導する役割を担っている
- 先生や施設の環境設定が、障害児の発達支援に特化している
- 先生は、毎日障害児一人一人の対応方法について朝と放課後に会議をしている、研修も積極的に行われている
- 通所バスが送迎してくれる所が多い
幼稚園・保育所等の障害児のための加配について
幼稚園や保育所等では、障害児のための先生を加配するという考え方が、昭和の時代から行われています。
ただし、全てのケースで加配してもらえるとは限りません。また、障害児に対して先生がマンツーマンとも限りませんし、加配された先生の障害児の有無、幼稚園教諭・保育士の資格がない場合もあります。
詳しくは下記ページにまとめていますので、必要に合わせてご確認ください。
利用者の母の印象
中度知的障害を伴う自閉スペクトラム症児である息子が、幼稚園(年少)から児童発達支援センターの通所施設へ移った時、幼稚園や保育所等との違いとして下記のような印象を持ちました。
これは幼稚園や保育所等によっても違う点はあると思うので、あくまで一個人の感想です。
教室
●教室が「何もない」というくらい、とてもスッキリしている。
- 気が散らない環境設定
- 必要な時に必要なものだけを取り出し、使い終わったら目の届かない場所へ収納、掲示物もない
室内のレイアウトや装飾にも心を配り、子どもが心地よく過ごせるように工夫することが必要である。(中略)備品については、遊具のほか、障害種別、障害の特性及び発達状況に応じた支援ツールを備えることも考慮していくことが必要である。
厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」
●適正に構造化された環境。
- 絵カードなどを活用して、見て理解しやすいような工夫がされている
- スケジュールの提示で、今何をしているのか、いつ終わるのか、次に何をするのかを分かりやすいように工夫されている
このクラスの様子は下記動画でもご覧いただきます。
子どもへの接し方
職員は、児童発達支援の提供すべき支援の内容等について理解するとともに、児童発達支援計画に沿って、それぞれの子どもたちの障害種別、障害の特性、発達の段階、生活状況や課題に細やかに配慮しながら支援を行うことが必要である。
厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」
- 上手くいった時、出来て当たり前のことや細かいことでも、とにかく褒める(自尊心を育てる)
- 上手くいっていない時は「怒る」「注意して言う事を聞かせる」ではなく、「この方法じゃダメか」「じゃあどう支援したらいいかな」と、先生側の支援方法を随時改善する
- 子どもの気持ちを常に言語化している(共感してあげながら、子どもは自分の気持ちの理解を深め、言語発達にもつながる)
- 例)不必要に動き出した時「あっちに行きたくなっちゃったね、次までの見通しが分かりにくかったもんね」
- 例)「嫌だったね、この感触が嫌だったね、やらなくても大丈夫よ」
- 指導方法に自信を持てていて、先生の態度が安定している
- 先生は児童発達支援には、専門的な学校を卒業している方や、家族に自閉症の人がいる方もいる
- 若くても専門的知識のある先生が、周りの先生にも随時指導を行っている。年配の先生でもその先生に「こうでいいかしら?」と確認を行い、それが先生方が子どもに接する際の自信につながっている
- 「こうすれば、この子はどの位の期間でどう変化していく」という見通しをもって支援しており、それが家族支援へもつながっている
給食の時間
児童発達支援センターの通所施設では給食でした。給食の時間も「健康の増進」の支援の時間で下記のような配慮がされていました。
- 一人一人、合ったカトラリー・食器・自助食器を用意してくれていた
- 椅子の高さ、椅子につける姿勢保持のための補助具、足置きなど、全て一人一人違うものが設置されていた
- 息子が通っていた園では、担任の先生だけではなく、園長や主事、栄養士、時に作業療法士などの先生も給食の時間に教室に入り、先生1~2人と子ども2~3人で一緒に食べていた
- 食べている途中も、常に姿勢やカトラリー・食器の使い方を指導し、大きければほぐしてくれたり、苦手な物の食べ方についてや三角食べの指導をしてくれていた
- 給食をどのくらいどのように食べたか、指導内容、成果も毎日の連絡帳に記載する欄があり、家庭と並行できる
健康な生活の基本となる食を営む力の育成に努めるとともに、楽しく食事ができるよう、口腔内機能・感覚等に配慮しながら、咀嚼・嚥下、姿勢保持、自助具等に関する支援を行う。
厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」
参考:幼稚園での息子
息子は身体障害はなく、幼稚園ではお弁当ということもあって、皆と同じテーブルとイスで、母が用意したお弁当(息子が食べられるもののみ詰めたもの)と普通のカトラリーを使用していました。
多動もあった息子は幼稚園のお弁当の時間は、下記のような感じでした。
お弁当の時間も大変そうでした。先生が息子を腕で肩組ししながら、一瞬でパパっと食べさせないと、すぐ席を立つとのことでした。
ASDの森「自閉症児の発達例」幼稚園での様子
すぐ立ち上がり、偏食がひどかった息子も児童発達支援センターの先生方・補助具のおかげで、座ってゆっくり正しい持ち方で完食できるようになりました。
ですが、家では変わらず偏食&ほぼ食べない息子なのは変わらず。先生と相談し「園で頑張っているから家では無理しないでいいんじゃない?」(食事が嫌いにならないように)とのご指導もあり、食事の練習は園だけでやっていただいたようなものです。
さいごに
今回は、児童発達支援センターの通所施設と幼稚園、保育園との違いについて見てきました。
幼稚園や保育所等は保育をする上での目標は似ていましたが、児童発達支援センターは専門的な知識をもつ先生方から直接支援をしてもらえることや、家族への支援も一部とされていることが大きく違うことが分かりました。
児童発達支援は、センター以外でも、児童発達支援事業所でも受けられます。
幼稚園や保育所等に通いながら、療育のお教室に通うイメージです。詳しくは下記ページで詳しく説明していますので、ぜひあわせてご覧ください。
最後まで読んでくださって、ありがとうございました!