ICD、DSMは「広汎性発達障害」から「自閉スペクトラム症」へ

2020年11月24日

ICDとDSMにおける、広汎性発達障害と自閉スペクトラム症の使用歴

【広汎性発達障害】と【自閉スペクトラム症】の関係性は、精神障害の世界的な操作的診断基準である【ICD】と【DSM】内での使われ方を見るとよく分かります。

広汎性発達障害とは?

ICD-10_広汎性発達障害

【自閉スペクトラム症】導入前が【広汎性発達障害】

「広汎性発達障害」は、自閉スペクトラム症(ASD)という概念が導入される前の、自閉症の親カテゴリーとして使用されていた用語です。

ICDとDSMでの分類表記

国際疾病分類表であるICDとDSMでの「広汎性発達障害」の分類表記です。

ICD-10

  • F84 広汎性発達障害
    • F84.0 自閉症
    • F84.1 否定型自閉症
    • F84.2 レット症候群
    • F84.3 その他の小児<児童>期崩壊性障害 
    • F84.4 知的障害<精神遅滞>と常同運動に関連した可動性障害
    • F84.5 アスペルガー症候群
    • F84.8 その他の広汎性発達障害
    • F84.9 広汎性発達障害、詳細不明

DSM-Ⅳ

  • 299 広汎性発達障害
    • 299.00 自閉性障害
    • 299.80 アスペルガー障害
    • 299.80 特定不能の広汎性発達障害
    • 299.10 小児期崩壊性障害
    • 299.80 レット障害

最新バージョンに載っている?

ICD、DSMともに最新バージョンには載っていません。ICD-11(2022年2月WHO発効)

診断基準

もう古い概念なのですが、ICD-10の広汎性発達障害の診断基準を書いてあるページがあるので、リンクを貼っておきます。新しい概念の自閉症スペクトラムの診断基準も載せていますので、ご参考になれば幸いです。

DSM-5から消えた

「自閉スペクトラム症」の初導入

「自閉スペクトラム症」は2013年に発効されたDSM-5から使用されています。これをきっかけに自閉スペクトラム症という概念・言葉が世界に広く知れ渡るようになり現在に至ります。

DSM-5では自閉スペクトラム症となる

DSMから「広汎性発達障害」が消えた

DSM-5での【自閉スペクトラム症】の導入は、DSM-Ⅳ(4) での 自閉性障害、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害、小児崩壊性障害 の4つの小分類を含む「広汎性発達障害」のカテゴリー名を「自閉スペクトラム症」のカテゴリー名へ変更した形で行われました。

※レット障害については、原因が遺伝子(X染色体の異常:MeCP2異常)が特定されたため、広汎性発達障害からは除外されました。

そのことにより、広汎性発達障害という文言は、DSMから消えました。

DSM-IVでは自閉性障害(299.00)やアスペルガー障害(299.80),小児期崩壊性障害(299.10)などのサブカテゴリーを含みPDDと呼ばれていたものが,DSM-5ではASD(299.00)という1つの診断名に統合された.

日本精神神経学会 精神経誌 123(4)「ICD-11における神経発達症群の診断について―ICD-10との相違点から考える―」森野百合子 他
POINT

【自閉スペクトラム症】Autism Spectrum Disorder(ASD)という言葉と概念自体は、アスペルガー症候群の名付け親でもあるイギリスの精神科医ローナ・ウィング医師のよって1998年には提唱されていました。

彼女自身も重度自閉症児の親でもあり、熱心な研究の成果です。

詳しくは「自閉症|80年の歴史まとめ」ページページで説明しています。

ICD-11から消えた

ICD-11では「自閉スペクトラム症」となる

ICD-11が2022年に発効されました

1990年に発効されたICD-10が最新版だったICDですが、ついに2022年2月、WHOによりICD-11が発効されました。日本語版は現在準備中のようです。参考:公益社団法人 日本精神神経学会「連載 ICD-11「精神,行動,神経発達の疾患」分類と病名の解説シリーズ」更新日時:2022年6月14日

日本語版は準備中のようです。WHOが2018年6月にを公表したICD-11は、日本でも2019年5月に厚労省からWHOへ提出した和訳版が承認され、それから厚労省・総務省が国内適用のために作業しているようです。参考:厚生労働省サイト「国際疾病分類の第11回改訂版(ICD-11)が公表されました, 厚生労働省サイト「ICD-11 の日本への適用について

「自閉スペクトラム症」へ

ICD-11では「広汎性発達障害」表記はなくなり、「自閉症スペクトラム」と変更されました。(英語表記は「Autism spectrum disorder」、日本語表記の案としては「自閉スペクトラム症」)

診断名も「広汎性発達障害」(ICD-10)から「自閉スペクトラム症」へと(中略)変更になっている

精神神経学雑誌「ICD-11における神経発達症群の診断について―ICD-10との相違点から考える―」成増厚生病院精神科 森野百合子 他
  • 自閉スペクトラム症(1.3)
    • 1.3.1 自閉スペクトラム症、知的発達症を伴わない、かつ機能的言語の不全がない、または軽度の不全を伴う
    • 1.3.2 自閉スペクトラム症、知的発達症を伴う、かつ機能的言語の不全がない、または軽度の不全を伴う
    • 1.3.3 自閉スペクトラム症、知的発達症を伴わない、かつ機能的言語の不全を伴う
    • 1.3.4 自閉スペクトラム症、知的発達症を伴う、かつ機能的言語の不全を伴う
    • 1.3.5 自閉スペクトラム症、知的発達症を伴わない、かつ機能的言語がみられない
    • 1.3.6 自閉スペクトラム症、知的発達症を伴う、かつ機能的言語がみられない
    • 1.3.7 自閉スペクトラム症、他の特定される
    • 1.3.8 自閉スペクトラム症、特定不能

参考:公益社団法人 日本精神神経学会

さいごに

今回は、ICD-10、DSM-Ⅳ、DSM-5、ICD-11においての「広汎性発達障害」「自閉スペクトラム症」の移行歴を見てきました。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!