【療育手帳】交付対象|基準|区分|援助措置|申請から交付の流れも解説!

療育手帳の対象

対象は知的障害者

療育手帳は、知的障害と判定された子・人に対し交付される障害者手帳です。※以下、知的障害者とします。

療育手帳は、知的障害と判定された子・人(以下、知的障害者とする)に対し交付される障害者手帳です。

「療育」という文言が使われていているので、無知な私なんかは子ども対象のイメージを持っていましたが、療育手帳は子どもだけが交付されるものではなく、大人でも交付されます

第2 交付対象者

手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者(以下「知的障害者」という。)に対して交付する。

厚生労働省 療育手帳制度について「療育手帳制度要綱

療育手帳の目的

昭和48年に制定された療育手帳制度に基づき、知的障害者に対して、①一貫した指導・相談等が行われるようにすること②援助措置を受けやすくすることです。

ちなみに、療育手帳を取得していなくても、療育の教室へは通えますのでご安心ください。

交付の為によく行われる知能検査

どこに申請して、どのように検査を受けられ、結果がどの程度なら交付対象になるか、は順を追って後の章で詳しく説明しますが、よく疑問に思われる交付の為に行われる知能検査は、田中ビネー知能検査Ⅴが多いです。2歳から受けられる有名な知能検査です。

交付の基準・区分は、地域による

療育手帳の交付基準

療育手帳の交付の基準は、法令上では定義されていません。知的障害が日本の法令では定義されていないのと同様です。

発行元は都道府県等

療育手帳は、知的障害者が住んでいる都道府県が発行しています。政令指定都市の場合は、県ではなく指定都市が発行します。

そのため、都道府県/政令指定都市(以下、都道府県等とする)によって、交付の基準障害の程度区分手帳の様式に違いがあります

ポイント

療育手帳を取得していた人が引っ越した場合、転居先では療育手帳の交付を受けられないケースもあるので、注意が必要です。

交付の基準

総務省の14都道府県と2政令都市に対する療育手帳の交付の基準調査では、下記のような結果になりました。参考:発達障がい者に対する療育手帳の交付について(概要)平成22年9月13日

療育手帳の交付基準
  • 4道府県はおおむねIQ70までの人、12道府県はおおむねIQ75までの人のみ交付
  • 上記IQを超える人は、原則交付対象としない

IQの数値については、下記ページで詳しく説明していますので、是非あわせてご覧ください。

【参考】IQ75以上でも、療育手帳を交付してもらえる自治体もある

療育手帳の交付の基準は、法令上では定義されておらず、発行元の都道府県/政令指定都市にゆだねられています。

そのため、自治体によっては発行してもらえる場合があります。

POINT

【療育手帳交付:発達障害の取り扱い】

発達障害者への対応は、IQ75(またはIQ70)を上回っても、社会適応能力や専門医の診断結果などを総合的に判定し、交付する場合もあるなど、その取り組みはまちまちである

参考:発達障がい者に対する療育手帳の交付について(概要)平成22年9月13日

療育手帳の取得を希望する場合は、一度住んでいる地域の役所に確認してみるといいかもしれません。

程度・区分

療育手帳の区分

療育手帳での障害の程度・区分は、おおまかに国基準で2つに分けられていて、発行元の都道府県等によりさらに4~5段階に分けられています。

国は、大きく2つに区分

厚生労働省の基準によって、区分は大きく「重度(A)」と「その他(B)」に分けられています。

療育手帳の障害の程度の記載欄には、 重度の場合は「A」と、その他の場合は「B」と表示するものとする。

厚生労働省 療育手帳の区分について
  • 重度(A)の基準
    1. 知能指数が概ね35以下、かつ、次のいずれかに該当する者
      • 食事、着脱衣、排便及び洗面等日常生活の介助を必要とする
      • 異食、興奮などの問題行動を有する
    2. 知能指数が概ね50以下、かつ、盲・ろうあ・肢体不自由等を有する者
  • それ以外(B)の基準
    • 重度(A)のもの以外

参考:厚生労働省 療育手帳制度の概要

都道府県等は、独自により細分化

発行元の都道府県等により多少の違いはありますが、多くの都道府県等が、上記の国基準の中を独自に細分化しています。

例として、いくつかの都道府県等をピックアップすると、下記のようになっています。

都道府県等重度(A)その他(B)
北海道A(最重度、重度、
中度+身障1~3級
B(中度、軽度)
茨城県?(最重度)、A(重度、中度+身障1~3級B(中度)、 C(軽度)
埼玉県?(最重度、重度+障害児福祉手当に該当する重複障害)、
A(重度、中度+身障1~3級
B(中度)、 C(軽度)
東京都1度(最重度)、2度(重度)3度(中度)、4度(軽度)
千葉県?(最重度18 歳未満)、
?の1(最重度18 歳以上・常時特別の介助を要する程度の状態)、
?の2(最重度18 歳以上・それ以外)、
A1(重度)、A2(中度+身障1~3級
B1(中度)、 B2(軽度)
神奈川県A1(最重度、重度+身障1~3級)、
A2(重度、中度+身障1~3級
B1(中度)、 B2(軽度)
静岡県A(最重度、重度、中度+身障 1~3 級、てんかんによる日常的介護が必要)B(中度、軽度)
愛知県A(最重度、重度)B(中度)、 C(軽度)
京都府A(最重度、重度)B(中度、軽度)
大阪府A(重度)B1(中度)、 B2(軽度)
兵庫県A(重度、中度+生活面、行動面、看護面で A に該当する場合)B1(中度、軽度+生活面、行動面、看護面でB1に該当する場合)、 B2(軽度)
広島県?(最重度、重度+身障1~2級)、
A(重度、中度+身障1~3級
?(中度)、 B(軽度)
福岡県A1(最重度)、A2(重度)、A3(知能指数がおおむね 50 以下であって、身体障害者手帳の1~3級に該当する者)B1(中度)、 B2(軽度)

国の定める基準以外は、独自の基準で区分されています。

障害の程度は知能測定値、社会性、日常の基本生活などを、年齢に応じて総合的に判定し、1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)に区分されます。

東京都福祉保健局 愛の手帳

様式と名称

療育手帳の名称と様式は都道府県によって異なります

療育手帳の様式や名称も、都道府県等によって異なります。

障害者手帳の色、形状、レイアウト等の具体的な仕様については各自治体で定めているため、自治体ごとに様式が異なります。

厚生労働省 障害手帳

様式は、縦型もあれば横型もあります。色もデザインもそれぞれ異なります。

名称は、多くが「療育手帳」ですが、他には例えば東京都や横浜市では「愛の手帳」、埼玉県では「療育手帳(みどりの手帳)」、青森県や名古屋市では「愛護手帳」としています。

画像の引用元:BIG ECHO西武バス交野市Wikipedia講談社Twitter千葉市、やちよ障害福祉ナビ、郡山情報

交付までの流れ

発行元が都道府県の場合、そこに直接申請しに行くわけではありません。

申請

市民の窓口としては、知的障害者が住んでいる市区町村の役所(障害福祉課など)になります。知的障害者本人または保護者が申請手続きします。

その申請は、役所から地域の児童相談所(18歳以上の場合は知的障害者更生相談所)を通して都道府県等に通知されます。

第3 実施主体

この制度は、都道府県知事(指定都市にあっては、市長とする。以下同じ。)が市町村その他の関係機関の協力を得て実施する。

厚生労働省 療育手帳制度について「療育手帳制度要綱」
私が住んでいる地域では

役所からもらった申請書(要捺印)に写真1枚(タテ4cm×ヨコ3cm)を添えて提出します。

写真は交付判定が出た際に療育手帳に貼られるものです。免許証のような証明写真でなくても、普段の写真から胸上の顔写真を切り取ったようなもので大丈夫です。

療育手帳の申請は、何歳であっても申請可能です。ただし、交付の条件となる知的障害は「18歳未満までに生じること」が要件になっていることから、 18歳前の知的な遅れの情報となる資料の提出が必要なことがあります。母子手帳や通知表、相談支援機関での記録などです。

判定

申請からしばらくしたら、地域の児童相談所(18歳以上は知的障害者更生相談所)から判定実施日時のお知らせが届き、そこへ行き判定検査等が行われます。

私が住んでいる地域では
  • 臨床心理士による知的障害者本人への知能検査(田中ビネー知能検査V)
  • 保護者による社会生活能力検査記入
  • 医師との面談

判定結果

判定結果は当日出るものではありません。

検査後、検査結果や場合によっては判定などの必要な情報が都道府県に送られ、そこで療育手帳の交付の可否が決められます。その後、申請窓口となった地域の役所を通して判定結果が通知されます。

私が住んでいる地域では

判定会議は決まった周期で行っている(例:月1回)ため、検査から通知まで数週間かかるという説明を受けました。

療育手帳の受け取り

交付の判定通知を受けたら役所へ療育手帳を受け取りに行きます。

受け取った直後から、療育手帳を持っている人に対する援助措置を受けられるようになります。(後述)

交付後

原則2年ごとの再判定

交付後は、原則2年ごとに障害程度の確認のため、児童相談所や知的障害者更生相談所で再判定が必要です。

重度の場合など、再判定の時期が異なる場合があります。

次の障害の程度の確認の時期は、原則として2年後とするが、障害の状況からみて、2年を超える期間ののち確認を行ってさしつかえないと認められる場合は、その時期を指定してもさしつかえないものとする。

厚生労働省 療育手帳制度の実施について 令和2年8月3日障発0803第3号

また、東京都では3歳、6歳、12歳(または障害の程度が変化したと思われたとき)で再判定、18歳で更新判定を行うとされています。

受けられる援助措置

厚生労働省は、都道府県等の長に下記の内容について、療育手帳を確認の上、区分に応じてすみやかに援助措置をとるようにとしています。

  • 特別児童扶養手当
  • 心身障害者扶養共済
  • 国税、地方税の諸控除及減免税
  • 公営住宅の優先入居
  • NHK受信料の免除
  • 旅客鉄道株式会社等の旅客運賃の割引

他にも一般的に知られている援助措置もいくつかあります。

  • 高速道路の料金割引
  • 航空会社の日本国内線の航空運賃割
  • 生活福祉資金の貸付
  • NTT番号案内料金無料
  • 携帯電話使用料の割引

いろいろな施設でも障害者割引サービスを行っており、療育手帳や他の障害者手帳の提示でそのサービスが受けられるようになっています。

追記:2021/07/10

上記以外の援助措置について、tvさんよりご質問いただきました☆ありがとうございます!こちらにも記載してみます!

国や地方公共団体の施設(例:動物園、水族館、博物館、公園等):本人や介護者に対し、利用料金が半額や無料になる所が多いです。

民営のレジャー施設:割引措置をしてくれる所がとても多い印象があります。

・例)ディズニーは割引(2020/7~見合わせ中)、レゴランドは入園料無料、アンパンマンミュージアムは半額など。(2021/07/10現在)

・例)ディズニーやUSJ(料金の控除措置なし)は、列以外の場所で待ってていいよという措置も。

乗り物:タクシーは手帳の提示で1割引のことが多いです。

・参考:厚生労働省の求める措置に鉄道の運賃割引もありますが、JRや大手鉄道会社は主に重度対象です。バスや小さめの私鉄会社では区分に関係なく、手帳の掲示で半額になったりします。

上記オレンジの枠内に書かれている国やライフラインに関わる措置は、区分が重度対象のものが多いので、上記に挙げた例の方が我が家(息子は中度)にとっては身近なものになっています。

さいごに

今回は療育手帳のしくみや交付の流れを見てきました。

交付や区分の基準は、都道府県等によって違うので、転居の際は注意が必要ですね。

「療育手帳を取得したくてもできなかった、どうしたらいい?」などの疑問については、「取得するのは【療育手帳】?【精神障害手帳】?|自閉症・自閉スペクトラム症と診断されたら」ページで解説していきますので、そちらもご覧ください。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!