【参考資料】幼稚園や保育所等|障害児をどのくらい受け入れている?

幼稚園、保育園、どのくらい障害児を受け入れているのか

はじめに:障害児が通う園の選択肢は?

詳しくは下記ページで説明していますので、ぜひあわせてご覧ください。

障害を持っている子でも、現代ではインクルーシブ教育の理念のもと、障害をもっていない子と同じ環境で学ぶ権利が守られています。

障害児をどのくらい受け入れている?【幼稚園・保育園】

今回は幼稚園、保育所等がどのくらい障害児を受け入れているか、参考となるデータをまとめました。私が調べられた範囲ですが、どなたかのご参考になれば幸いです。

公立の認可保育所:約8割

市区町村が設置している認可保育所、いわゆる公立の保育所では、多くの園で障害児を受け入れています

平成28年に厚生労働省の「子ども・子育て支援推進調査研究事業」で作成された報告書では、78.6%の市区町村が、特定の保育所を指定することなく全ての公立保育所で受け入れる方針であるという結果が出ています。

8 割弱の市区町村で管内の全ての保育所で障害児を受け入れるという方針を示していた。

みずほ情報総研株式会社「保育所における障害児保育に関する研究報告書」平成 29年3月

厚生労働省の同事業の平成27年度の研究では、公立保育所の65.9%に障害児が在園しているという報告がされています。

参考

全国的な調査ではないのであくまで参考情報なのですが、愛知県瀬戸市が令和2年8月に報告した「障害児保育に関するアンケート調査」では、公立の保育園10ヶ所すべてにおいて「現在障害児保育を実施している」という結果でした。

民間の認可保育所:約5割

認可の保育所には、児童福祉法第35条第3項に基づいて市区町村が設置している公立の保育所以外に、民間の事業所が都道府県の認可を受けて設置した保育所、いわゆる民間の保育所があります。

そのような民間の保育所では、前述の研究において、市区町村管内の全ての民間保育所で障害児を受け入れていると回答した市区町村は46.4%と公立保育所より32.2%も低くなり、その代わり「個別の保育所の対応方針に委ねる」との回答が35.9%(公立では6.9%)でした。

こちらは、園が独自に保育士や職員を雇用しなければならず(※)、公立の認可保育所とは差が出てしまうのは仕方がないと思われます。

一方、民間の保育所ではその割合は 5 割弱に下がり、代わりに「個別の保育所の対応方針に委ねる」との回答が 4 割弱に上った。

みずほ情報総研株式会社「保育所における障害児保育に関する研究報告書」平成 29年3月

また、障害児が在園していると回答した民間保育所は、56.6%と、公立保育所より9.3%少ない結果でしたが、半数の保育所で障害児の受け入れをしていることが分かります。

※園に対する補助金などについては、下記ページもご参考になると思います。

参考(愛知県瀬戸市の場合)

私立の保育園は瀬戸市に16ヶ所あり、うち10ヶ所のアンケート結果では、下記だったようです。

  • 現在障害児保育を実施しているか?
    • 実施していない、また、過去5年以内に実施したことがない…6ヶ所
    • 現在障害児保育を実施している…3ヶ所
    • 現在は実施していないが、過去5年以内に実施したことがある…1ヶ所
  • 障害児保育を実施していない理由は?
    • 実施したいが募集をかけても保育士が集まらず雇用に繋がらない、人員不足の状態なため…4ヶ所
    • たまたま入園希望児や在園児に障がい児がいなかったため…4ヶ所
    • 障害の状態により、集団保育が困難なため…3ヶ所
    • 時間外保育や子育て支援事業等の事業(保育サービス)の運営など、日常業務で手一杯なため…2ヶ所
    • 障害児保育を実施する場所や備品の確保ができないため…2ヶ所

認可保育所では、選考基準で加算される市区町村もある

市区町村によっては、選考基準である指数において、調整指数が加算される所もあります。(私の住んでいる市区町村ではその加算はありませんでした。)

下記に2つの市区町村の認可保育所入所基準指数表の一例を抜粋してみました。

  • 川越市 調整指数
  • 豊島区 調整指数
    • 13☆ 入園を希望する児童本人が、①身体障害者手帳1・2級、②愛の手帳1~3度、③精神障害者保健福祉手帳1~3級のいずれかを所持している場合…+2
    • 14☆ 入園を希望する児童本人が、(1)①身体障害者手帳3・4級又は②愛の手帳4度を所持している場合(2)手帳等は所持していないが、主治医の意見書等により手帳を所持している者と同等と認められる場合(主治医の意見書により、手帳を所持している者と同等と認められる記載がある場合)
    • ☆印の加算には書類の提出が必要  参考:豊島区保育所入所基準指数表(令和3年度)

認可外の保育所

保育所には、法律で定められた諸々の基準外で運営し、選考方法や保育料がその施設に委ねられている認可外の保育所があります。よく無認可保育園と呼ばれています。

こちらは、国や自治体からの補助金の給付がないため、職員の加配や障害児の受け入れは余裕がないと難しいかもしれません。

幼稚園:あまり多くない?

調べている印象では、そもそも希望する障害児が少ない、在籍している障害児が少ないという印象を受けました。

特に、私立幼稚園では、たくさんの障害児を受け入れている園~あまり経験がない園の幅が広いと思われます。

なぜなら、私立幼稚園が障害児を受け入れた場合、都道府県から「障害児への特別支援教育に関わる補助金」が給付される(公立幼稚園では補助金の給付はありません)のですが、その補助金の給付方法が下記のようになっており、そのことも影響していると考えられます。

  • 国から都道府県に対する補助金の条件:園に障害児が2人以上いること
  • 都道府県から幼稚園の補助金(障害児1人当たりの単価)
    • 障害児が2人以上在籍している園…障害児1人当たりの単価は満額(国負担1/2,都道府県負担1/2)
    • 障害児が1人の園…障害児1人当たりの単価は半額(都道府県負担のみ)

そのため為、園に障害児1人では加配職員を雇用できなくても、3人いれば一人雇用できるというような補助金になっています。

※認可保育所や認定こども園でも財源や法律、金額も異なりますが、国や市区町村から補助金が給付されます。

全日本私立幼稚園連合会が報告した「特別支援教育に関するヒヤリング」でも、1~2人の障害児のためには加配の職員を雇うことは難しいと結論づけられています。

■3/助成が少なく、十分な人的配置を達成できない

○1 国の特別支援教育への補助額も低廉である。(2人以上在籍で一人単価784.000円)診断書がとれた場合であっても、障がいを持つ子どもが3人ほど在籍しなければ、加配1名の保育者を雇用することもできない。

文部科学省 初等中等教育局特別支援教育課 「全日本私立幼稚園連合会『しょうがい者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育に関するヒヤリング』」平成22年11月

参考(愛知県瀬戸市の場合)

私立の幼稚園は瀬戸市に7ヶ所あり、うち4ヶ所のアンケート結果では、下記だったようです。

  • 現在障害児保育を実施しているか?
    • 実施していない、また、過去5年以内に実施したことがない…2ヶ所
    • 現在障害児保育を実施している…1ヶ所
    • 現在は実施していないが、過去5年以内に実施したことがある…1ヶ所
  • 障害児保育を実施していない理由は?
    • たまたま入園希望児や在園児に障がい児がいなかったため…3ヶ所

障害のある子どもの保育については、一人一人の子どもの発達過程や障害の状態を把握し、適切な環境の下で、障害のある子どもが他の子どもとの生活を通して共に成長できるよう、指導計画の中に位置付けること。また、子どもの状況に応じた保育を実施する観点から、家庭や関係機関と連携した支援のための計画を個別に作成するなど適切な対応を図ること。

厚生労働省 告示第百十七号 保育所保育指針 3 保育の計画及び評価 ? 指導計画の作成 平成29年3月31日 

障害のある子供たちをめぐる動向として,近年は特別支援学校だけではなく幼稚園や小学校,中学校及び高等学校等において発達障害を含めた障害のある子供が学んでおり,特別支援教育の対象となる子供の数は増加傾向にある。

文部科学省 特別支援学校教育要領・学習指導要領解説 総則編(幼稚部・小学部・中学部)平成 30年3 月 第1編 総説