就学時面談|特別支援学校や学級など【希望】は通る?いつまでに?|決定までの流れ

自閉スペクトラム症児の就学先はいつまでに決めるのか

自閉スペクトラム症など特別な支援が必要な子の場合、就学先を特別支援学校にするか、地域校の特別支援学級、または学区の普通学級にして通級指導教室・特別支援教室に通わせるかなど、親としてはいつかは決断しなければなりません。

しかし、この決断はとても難しいんですよね。

今回は、就学先を決めるまでのお話の一つとして、事務的な流れや時期のことを中心に見ていきます。就学先を決める際に見ておきたいその他の記事についても、適宜リンク先をご紹介していますので、ぜひご参考になさってください。

誰が決めるの?

教育委員会が決める

子どもの就学先は、下記の複数の観点から、市区町村の教育委員会が最終的に決定します。

  • 本人・保護者の意見
  • 障害の状態
  • 本人の教育的ニーズ
  • 専門的見地(教育学、医学、心理学等)からの意見
  • 学校や地域の状況

たまに「希望先の先生とも相談して」という事も聞きますが、決定権は校長先生や学級の担任などにはありません。

保護者の希望はどのくらい通る?

「可能な限り尊重」される

現代では、障害児であっても「インクルーシブ教育システム」「特別支援教育」の理念に基づき、どの学校、学級を選んでもその子に必要な一貫した教育が受けられるようになっています。(現実は、環境により様々な意見・経験談があるようです。

そのため、障害児の就学先については、障害者基本法により、市区町村の教育委員会から十分な情報提供・ガイダンスがあった上で、本人・保護者の希望は可能な限り尊重されることが原則になっています。

選択肢・目安となる入学基準は?

自閉スペクトラム症児の場合は、知的障害があるのか、程度はどのくらいなのかで選択肢が絞られていきます。具体的な選択肢とそれぞれの入学基準は、下記ページで詳しくまとめていますので、ぜひご参考になさってください。

参考情報

私は息子の就学先を決める頃は、特別支援学校の授業内容の特徴についてほとんど知らなかったので、下記ページも参考情報として載せておきます。ご参考になれば幸いです。

いつ決まるの?

事務的には【10月頃】から動き始める

年長児の子ども達の就学先は、教育委員会の事務的には、就学の前年度の10月頃から動き始めます。

最終的には【1/31までに】各家庭に通知される

その子の就学先は、どんな子でも就学前年度の1月31日までに家庭に決定通知されることが、文部科学省によって定められています。

  • 地域校を選択した場合…市区町村の教育委員会より通知されます。
  • 特別支援学校の場合…都道府県等より通知されます。(特別支援学校の管轄は、市区町村ではなく、都道府県等のため)

健診後、1月31日までに、就学先学校が各家庭に通知される。市町村立小学校の普通学級や特別支援学級に就学する児童は市町村、特別支援学校に就学する児童は都道府県の教育委員会が管轄する。

Wikipedia「就学時健康診断」より引用

希望は【10・11月頃】の就学時面談で伝える

地域や各教育委員会によっても違いますが、本人・保護者の就学先の希望は、10・11月頃に行われる個別の就学時面談(後述)で教育委員会へ伝えます。

それよりも前に就学について相談したい場合は、先に就学時面談をしてくれることもあります。

悩んでいる場合

市区町村の教育委員会から都道府県等へ通知し、都道府県等が事務処理を行うという時間を考えると、保護者は悩んでいて答えが出しにくくても、通知よりも少し前の時期には意向を伝える必要があります。

こんな例もありました①

ママ友さんの中には、3月くらいまで決められなかった方もいましたが、その方の担当者は幸いにも親身に相談に乗ってくれ待ってくれていたようです。

しかし、他のママ友さんの経験では(後述)「親身になってくれなかった」という印象を持ってしまう例もあり、ケースバイケース何だろうなと思います。

こんな例もありました②

息子が小学校6年生の時に、中学校を特別支援学校にするか、地域校の支援学級かにするかで悩んでいる際、たまたま夏休みという少し早い段階で面談できたのですが、出来れば11月までに、遅くてもお正月休み明けにはご意向を聞かせてくださいねと言われました。

就学先決定までの流れ①【普通学級の子/審議対象の子を振り分け】

就学先決定までの流れを、教育委員会の事務的な流れを含めて見ていきます。

1.学齢簿を作る

10/31までに、市区町村の教育委員会が、区域内に住んでる児童のリストを事務的に「学齢簿」という表簿にまとめます。

2.就学時健康診断

10・11月頃(11/31まで)に、子ども達は近くの小学校などで就学時健康診断というものを受けます。すでに市区町村の児童発達支援施設などに通所していても一律に行われます。

主な目的は、特別な支援が必要な子をきちんと見つけてあげることなので、当日は身体の疾患や、知的発達の度合いが検査されます。

参考

●就学時健診、絶対受診しなくてはいけない?

就学時健康診断は、市区町村が実施するのは義務ですが、受診は義務ではありません。

すでに障害認定があったり、児童発達支援施設などに通所している場合であれば、教育委員会と相談の上、受けないで進めることもできます。

逆に発達に不安があるけれども本人・保護者が普通学級に通わせたい場合、あえて就学時健診を受けずにいたという例も聞いたことがあります。特別支援教育の観点からは、就学前の施設からの引継ぎや合理的配慮の環境設定も必要なので、正解かどうかは分かりません。「義務じゃない」という一例として参考までに書いてみました。

3.普通学級へ進学する子を決定

就学時健康診断の結果を受けて、特に問題がない子については普通学級に就学が決定します。

健常児であれば小学校普通学級に就学するが、心身に障害があり特別な支援が必要な児童の場合、障害のある児童を対象とした就学相談を受けるよう指導される場合が多い。

Wikipedia「就学時健康診断」より引用

4.それ以外の子については、別の処理(審議)に入る

就学時健康診断の結果も含めて、一旦審議したほうがいい子、すでに特別な支援が必要と判断されている子を「審議対象」とし、また別の事務処理や就学時面談のを行います。その流れについては、次の章で詳しく説明します。

審議対象になる子はどの位いるの?

参考

平成29年度では、全障害種別を含めてですが、全国で約54,000人がこの審議対象になっています。

平成29年度小学校・特別支援学校就学予定者(新第1学年)として、平成28年度に市区町村教育支援委員会等の調査・審議対象となった者は54,146人。

文部科学省「日本の特別支援教育の状況について」令和元年9月25日

就学先決定までの流れ②【審議対象の子について】

1.選択肢を確認

審議対象となった子については、一人一人その子の就学先にはどの選択肢があるのかを確認していきます。

自閉スペクトラム症児の場合、知的障害があるのか、程度はどのくらいなのかで選択肢が絞られていきます。

具体的な選択肢とそれぞれの入学基準は、下記ページで詳しくまとめています。

2.就学時面談で意向確認

その子の就学先の選択肢が確定したら、市区町村教育委員会の中の「就学指導委員会」「教育支援委員会(仮称)」より、本人・保護者に対して就学先決定のための情報提供(ガイダンス)と意向の確認が行われます

保護者への情報提供

具体的には個別の面談です。教育支援委員会は、その子の障害の状態を継続的に把握した状態で、下記の内容を保護者に伝えてくれ、保護者の質問にも答えながら相談に乗ってくれます。

  • その子の教育的ニーズと必要な支援について
  • その子が必要とする「合理的配慮」の提供の妥当性や調整について
  • 就学後でも必要に応じ「学びの場」を変更できるということ など

参考:文部科学省 初等中等教育分科会 資料1 特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告 1「2.就学相談・就学先決定の在り方について

意向確認

上記を行った上で、本人・保護者の希望を聞いて、最終決定の判断材料にします

本人・保護者の希望は、最終判断の大きな要素

繰り返しになりますが、本人・保護者の希望は可能な限り尊重されることが原則になっています。

本人・保護者の意見を最大限尊重(可能な限りその意向を尊重)し、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とし、市町村教委が最終決定

文部科学省 初等中等教育分科会 資料1 特別支援教育の在り方に関する特別委員会報告 1「障害のある児童生徒の就学先決定について(手続の流れ)」

そのためか、経験上、周りの保護者の声を聞くと、下記のような事例もあり、人によっては「就学先を強制された」と感じてしまう事もあるだろうなと思いました。

こんな例もありました①

ママ友Aさんの体験談

教育委員会は「特別支援学校でどうでしょう」という判断だったが、保護者は地域校の支援学級へ通わせたいと伝えた。

すると「難しいと思う」「その小学校の支援学級へ一回体験入学してみてから決めましょう」と言われ、地域校に連絡を取ってくれて保護者付き添いのもと体験入学をしてみた。

その結果、体験入学をした先の学級担任の言動もあり、その後の面談では最終的に「では支援学校にします」と言わざるを得えなくて悔しかった。

常に支援学級への転校は意識しながらとりあえず特別支援学校で頑張るしかない。

※その後、その子は毎年のように支援学級への転校希望を担任に伝えつつ、小学4年生で無事支援学級へ転校できました。

こんな例もありました②

ママ友Bさんの体験談

教育委員会から「支援学級がいいと思います」言われたが、その子のお姉ちゃんも重度知的障害児で既に特別支援学校に通っており、その子も同じように特別支援学校に通わせたいと伝えた。

しかし、その子の知的障害の程度は軽く、どんなに親が希望しても地域校の支援学級にしか入学できなかった。

3.最終決定

市区町村の教育委員会が、総合的な観点から最終的にその子の就学先を決定します。

障害が,学校教育法施行令第22条の3に規定する程度のもののうち,市町村の教育委員会が,その者の障害の状態,その者の教育上必要な支援の内容,地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して,特別支援学校に就学させることが適当であると認める者を対象として,適切な教育を行うこと。

文部科学省「障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)(平成25年10月4日付け25文科初第756号)

地域の事情で異なることも

そのため、同じようなタイプと程度の子がいたとしても、地域の事情で就学先決定の差が生じることもあります。

さいごに

わが子の就学先は、どこを選択することがベストなのか、考えてもなかなか答えは出ませんよね。

中度知的障害を持つ自閉スペクトラム症児の息子の小学校については、年長さんから小学校を卒業するまで、定期的に「どの選択肢が今の息子にとってベストか?」を考える機会がありました。

就学後も特別支援学校・学級・通級などの在籍先は、発達状態に応じて何度でも学校の担任・特別支援教育コーディネーター・教育委員会らと相談・体験入学もできますので、あまり先のことは考えずに「まずはここから始めよう」という感じで現状でのベストを考えてあげてもいいかもしれませんね。

今回はこの辺で。最後まで読んでくださって、ありがとうございました!