【障害受容】肯定的になれる時期|論文事例まとめ

3つの論文から肯定的になれる時期の情報をまとめてみました。【障害受容】シリーズの参考資料として。

【例1】自閉症児の母8人

九州産業大学大学院の8人に対する「自閉症の子を持つ母親が体験する『子のライフステージの推移に伴う心理過程』」についての研究では、子どもが自閉症の場合は完全に「受容」するのは難しいという結論ながらも、就学期あたりから徐々に肯定的な気持ちが増えたと述べられています。1)

【例2】自閉症児の母55人

障害種別による親の障害受容の過程の差異について、自閉症の母親55名とダウン症の母親17名を対象に調査した研究では、「障害受容」までに要する時間的長さの差の検証もされていました。2)

その結果、自閉症児の母親の疑いから障害受容までの平均は約3年(37.7ヶ月)後と報告されていました。ちなみにダウン症児の母親の場合は約1年半(17.6ヶ月)後でした。

自閉症の疑いが2~3歳前後だとすると、障害受容は5~6歳頃となるでしょうか。

【例3】自閉症児の母2人

日本の「作業療法の母」と呼ばれ、広島大学の名誉教授や、国際医療福祉大学大学院の教授も務められた鎌倉矩子医学博士、山崎せつ子助手の障害受容の研究では、自閉症児の母親2名は、5~6歳頃に肯定的に捉えられるようになったと報告しています。3)

参考・引用情報

1)

『障害の認知』には就学前後までには到達し,就学期あたりから徐々に肯定的な感情が増加し否定的な感情が減少する傾向はどのケースでも見られ,最初に大きな『混乱』を受けた時に比べると徐々に安定した状態へ移行するとようである。

九州産業大学大学院 宇津貴志ら (2019)「自閉症の子を成人に育てるまでの母親心理」人間科学 1巻 Pp.15-26

※しかし、この研究では、肯定的になれてからも、思春期などの発達を節目に否定的は感情が強まり、周囲のサポートが適切でないと感じることも多く、結局母親は全員「受容」には至っていないとの結論だったようです。

本研究では『受容』にわずかではあるが至ったと思われるのは 1 ケースのみであり,その 1 ケースも子の状態の悪化によって否定的な気持ちが高まり一時的に『受容』状態ではなくなった。

宇津貴志ら (2019年)

2) 東京都立大学大学院人文科学研究科 夏堀摂(2001)「就学前期における自閉症児の母親の障害受容過程」一般社団法人 日本特殊教育学会 特殊教育学研究 39(3), p.11-22

3)

対象1:育児に対し肯定的になったのは子どもが5歳の時(中略)
対象2:母親は、小学校に我が子を入学させた後「この子の親で悪くない」と思うようになった。

広島大学医学部保健学科 山崎せつ子,鎌倉矩子(2000)「自閉症児の母親が自分の子どもの障害を受容する過程を語った生活物語の分析」作業療法 19巻5号 p.434-444

まとめ

簡単なまとめでしたが、どなたかのご参考になれば幸いです。

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最後まで読んで下さって、ありがとうございました!