【障害受容】自閉症とダウン症では受容過程が違う

障害受容_段階的モデル

障害受容のモデルとしては「段階的モデル」がとても有名ですが、それはダウン症候群の子の親には当てはまっても、自閉症スペクトラムや知的障害の子の親には当てはまらないと多くの研究者が結論付けています。

今回は、その理由をまとめていきます。

ダウン症は「段階的モデル」

ダウン症候群や先天性奇形の子どもに対する親の障害受容の研究では、必ず受け入れられる日がくるとする「階階的モデル」が有名です。1)

最初はとてもショックで否認もするけれど、徐々に受け入れることが出来るようになってきて、最終的には再起をするという仮説です。

詳しくは「有名な3つの受容モデルまとめ」ページにまとめています。

自閉症は当てはまらない

理由

ダウン症候群の子と自閉症児の親の障害受容の過程が違う大きな理由は、障害を認識する過程が大きく異なるためです。2)

親がわが子の障害を認識するまでの様子は、下記のようにかなり違います。

  • ダウン症候群・先天性奇形の場合
    • 生後間もないころ、親がまだ気が付いていない段階で医師から障害を告知
    • 自閉症や知的障害の親御さんに比べて障害告知の衝撃が強い
    • 検査や見た目で明らかであり、否定もできない
  • 自閉症スペクトラム・知的障害の場合
    • 1歳~2歳頃にまず親が気が付くことが多い
    • 診断より前、気づきと同時にショックや否認を経験し始める
    • 診断される3歳頃までには、すでに様々な感情と苦しさを経験している

自閉症の母親55名とダウン症の母親17名を対象に調査した研究でも、自閉症児の場合は、最初の段階であるショックや否認を、薄々おかしいと思い始めている頃から経験し始めていたという報告がされています。そして、自閉症児の親にみられた心理的特徴は段階的モデルでは説明することが難しいという結論でした。3)

自閉症は「螺旋形モデル」

自閉症児の親の障害受容モデルとしては「螺旋形モデル」、知的障害児では「慢性的悲哀」が有名な仮説です。

親はどのようにして受け入れていくのか、周りの人はそんな親御さんにどう接したらいいのかなど、下記ページに詳しくまとめましたので、ぜひあわせてご覧ください。

さいごに

以上のように、自閉症スペクトラムや知的障害児の親の障害受容の過程は、ダウン症候群の場合とは異なるようです。

簡単なまとめでしたが、どなたかのご参考になれば幸いです。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!

参考・引用情報

1)

病理群の経過から明かなことは、早期診断が可能な障害では、(中略)障害の告知による衝撃とその後の混乱、またそれから回復する過程は段階説で述べられていることとかなり一致する。

中田洋二郎(1995)「親の障害の認識と受容に関する考察-受容の段階説と慢性的悲哀」障害保健福祉研究情報システム(DINF)早稲田心理学年報 第27号p.83-92

2)

ダウン症と自閉症では親の障害認識の過程が明らかに異なります

古屋健,中田洋二郎(2018)「発達障害の家族支援における『障害受容』―その概念の変遷を巡って―」日本応用心理学会第84回大会 特別講演, 応用心理学研究44巻2号 p.131-138

3)

参考:東京都立大学大学院人文科学研究科 夏堀摂(2001)「就学前期における自閉症児の母親の障害受容過程」一般社団法人 日本特殊教育学会, 特殊教育学研究 39(3), p.11-22

ダウン症児の母親と自閉症児の母親を比較検討した夏堀(2001)によると,ダウン症児の母親は,「診断」以後,約18ケ月の間に「現実否認」「育児不安」「劣等感」「葛藤・混乱」「育児に焦る」「健常児との違いが気になる」「育児困難」といったネガティブな心理状態を経験するのに対して,自閉症児の母親では,「障害の疑い」から「診断」までの期間に同様の反応が集中していた。このことより,自閉症児の母親は「診断」までの間に大きな困難にぶつかっていることがわかる。段階モデルを「障害の診断・告知を受けたこと」あるいは,「親の気づき」から始まる心理的反応の変化過程として捉えるならば,従来の段階モデルでは自閉症児の親にみられた心理的特徴を説明することは難しい。

九州大学大学院 桑田左絵,神尾陽子(2004)「発達障害児をもつ親の障害受容過程についての文献的研究」九州大学学術情報リポジトリ, 人間環境学九州大学心理学研究 5, p.273-281