自閉症とペット|ネコを飼ったら息子がとても落ち着いた

2021年4月21日

知的障害を伴う自閉スペクトラム症(自閉症)の息子は、5歳頃からこだわりとそれに伴うパニックやかんしゃくが非常に強くなり、日常生活にとても支障をきたしていました。「わざわざぐずるネタを探しているのか」と思うほど常にアンテナが張り巡らされていて、見ていても生きるのが大変そうに感じていました。

そこで自閉症とアニマルセラピーの話しを知ってから、いろいろな場所で主に犬、ネコと触れ合い、悩んだ結果、息子が7歳の頃からネコを2匹飼いはじめました。

今回は、自閉症児がネコを飼うまでの経緯と、飼ったことで息子がどう変わったかをお伝えしていきます。

【はじめに】自閉症とペットについて

自閉症のことを調べていると、アニマルセラピーについて聞く機会もあると思います。テレビなどでもエピソードが紹介されていたります。

動物による効果で自閉症が治ることはありませんが、動物好きな自閉症児にとっては、動物と触れ合うことは、動物好きな定型発達児同様、楽しい時間になるのだと思います。

以前から、自閉症児への療法の一つでして、アニマル・セラピーが紹介されています。(中略)自閉症の原因自体が明らかになっていない以上、こうしたアニマル・セラピーが自閉症児の治療に有効かどうかは、まだ明らかになっているとは言えないでしょう。
ただ、動物が人間にとっての癒しの効果を持っていることは、人間とペットとの長いつきあいの歴史のなかで間違いないとも言えると思います。したがって、自閉症に特有の効果があるかどうかはわかりませんが、アニマル・セラピーも、適切に行われれば自閉症児にとってもプラスに働くと思います。

NHKぶっくす『 アニマル・セラピーとは何か 』横山 章光:著 

動物介在活動(AAA)中の 6 名の自閉症スペクトラム障害児(ASD 児)について、笑顔,ポジテイブな社会的行動(PSB),ネガテイブな社会的行動(NSB)の関連性の研究などもありました。

ASD 児を笑顔が生起する社会的な環境に導くとPSB が促進し,逆に NSB は減少すること,また動物介在活動は ASD 児の社会的コミュニケーション行動を促進する有効な手段であることが示唆された。

第 7 回動物介在教育 ・ 療法学会学術大会(2014.9.19 ~ 21.)「動物介在活動中に自閉症スペクトラム障がい児に生起する笑顔の定量的解析─笑顔識別インタフェイスを用いて─」愛知県心身障害者コロニー 舟橋厚 etc.

我が家がペットを迎えた理由

癒しの時間を

冒頭でも書いたように、パニックやかんしゃくが多い息子に、少しでも癒しの瞬間を増やしてあげたかったことが一番の理由です。

2歳半からの難治性てんかんによる大発作も続いていた為、脳波検査を見ても、他の子よりも頭がすっきりしない状態だったようで、余計かもしれないなと。かつ、いつもパニックでいるより、リラックスした方が、発作自体が軽減されるかなという甘い期待もありました。

てんかん者に見られる精神症状(中略)発作後の精神症状
• 発作後のもうろう状態,意識変容,失見当識,不安,焦燥,興奮状態
• 時に幻覚,妄想を示し,持続も数十分から数時間,時には数日から数週間のこともある

東邦大学医療センター佐倉病院市民公開講座「てんかんと精神症状」メンタルヘルスクリニック 桂川修一(2015)

抗てんかん薬によっては、異常な行動や精神症状を引き起こしたり、発作を悪化させたりする事もあります。そのような場合には、抗てんかん薬を適切に調整する必要があります。また不安、うつ、幻覚、不眠などの精神症状があっても、それをうまく表現できない方(児)は少なくありません。少量の向精神薬や抗うつ薬、睡眠薬、精神刺激薬等を使って、異常な行動や精神症状を改善することも必要です。

医療法人ベテール「てんかんはどのような病気?」2018年1月28日

息子が動物好きだった

息子は小さいころから、街で見かけるお散歩中の犬によく興味を示していました。

そこで、まだこだわりなど出ていなかった小さい頃(多動はあるが、大人しく手が掛からなかった)からワンちゃんの触れ合いや、レンタルお散歩のサービスのある所へよく遊びに行っていて、ずっとなでなでしている姿を見てきました

自閉症児とアニマルセラピー

なので、ペットを迎えることは、息子にとって、癒しの時間が増えることになると考えていました。

「思い通りに動いてくれない動物」で訓練になるかも

自閉症とペットのことを調べている時、「動物は人間のようには思い通りには動いてくれない、嫌なことをされた時の反応がシンプルで分かりやすい、など、対人関係の訓練の一つにもなる」というような記事か何かを見聞きした記憶がありました。(出典元を探し出せず、そんな話をきいたことがあるというレベルですみません…)

ちょうど小学一年生のとき、その担任(ベテランの特別支援学校教諭)からは、息子について改善すべき点をいくつか指摘され、思い通りにいかない時の感情のコントロールについても言われました。

  • 指摘された改善すべき点
    • 自尊感情の低さ
    • 大好きなお友達によく抱きついてしまう(幸い同性で少し安心した笑)
    • 何でも順番は一番がいいという、自閉症児によくある衝動
    • 思い通りにいかないとき(例:一番になれない時)、教師にパンチするジェスチャーをする(実際は殴らないのは救われた)

特別支援学校なので、自閉症という特性を理解したうえで、一緒に改善策を取ってくれていましたが、下記2点については、ペットで訓練できるかも、という淡い期待も芽生えた記憶があります。

「ネコ」と決めたのは息子自身

当初は、「自閉症と犬」のステキな関係を聞いたことがあったので、親は一択で考えていました

重度の自閉症にとらわれた息子デールをかかえ、途方にくれていた一家のもとに、1匹の子犬、ヘンリーがやってきた。それまで誰とのコミュニケーションも拒んでいるかのように見えたデールは、ヘンリーとだけは奇跡的に心を通わせはじめた。

Amazon「ありがとう、ヘンリー―自閉症の息子とともに育った犬の物語」2008/8/1 ヌアラ ガードナー (著), Nuala Gardner (原著), 入江 真佐子 (翻訳) より引用

長い期間をかけ、触れ合いや検索などで、どの犬種がいいのかなど考えていました。

自閉症児とアニマルセラピー
自閉症児とアニマルセラピー

しかし、よく遊びに行っていた犬の触れ合いのサービス施設には、ネコの触れ合いゾーンもあり、いつしか、息子は犬の方はいかずに、ネコの部屋にだけいるようになりました。

自閉症児とペット猫

小学2年生にもなり、意思疎通が多少とれていたので、ある程度の期間を掛けて、何度も「飼うのは、犬より猫がいいのよね?」と確認をしました。結果、ペットとして迎える動物は「ネコ」と、息子本人決めました

たまたまの出会ったネコを家族に

しかし、猫を迎えようと思っても「生き物を飼う」という責任の重さや、大変さが頭をよぎり、なかなか実行に移せずにいました。

自閉症児と猫

いいなと思った猫カフェ兼ブリーダーさんの所(↑)に通い、親猫ちゃんが次の子猫ちゃんを生んだらお願いしようかな、なんて思いながら。

そんなこんなで時間だけが過ぎて行っていたときのことです。

自閉症児と猫

たまたま行った大きなショッピングモールにペットのエリアがあり、息子が一匹のオスの子猫ちゃんのウィンドウ前から動かなくなったのです。

どうやら、その猫は、息子がじゃらした手によく反応してくれて、とても愛おしく感じたようでした。今まで見てきた子には、ここまでの執着は示していませんでした

自閉症ならではの集中力(共同注意少なめのマイワールド)でその子と気持ちを通じ合わせ、息子の即決でその子を家族の一員として迎えることになりました。

自分でパートナーに選んだ子は格別

自閉症児_二匹目のネコを探す

一ヶ月後、多頭飼いをしてあげたいという親の希望のため、何匹かの子猫ちゃんに会いに行きました。

しかし、上記のような反応はありませんでした。

結局、母がメスの子猫ちゃんを決め、最初のオス猫ちゃんから1ヶ月遅れて、その子も家族に迎えました。

もちろん最初からその子のことも大好きですが、自分で選んだオスのネコちゃんのようには未だにべたべたはせず。

やはり、自分で「この子」と決めたことは、(息子の心に癒しを与える面で)影響は大きいようです

息子はその日からネコにべったり

幸い、息子が選んだオス猫ちゃんは、家に迎えた初日から、ゴロゴロと喉を鳴らして、エサもよく食べ、トイレもひとりで上手にしてくれるタイプでした。(もう一匹のメス猫ちゃんは、数日ずっと泣いていて、水も飲んでくれず、性格の違いを感じました。)

ネコも息子になついてくれた

猫が自閉症児になつく

慣らしの後、部屋で過ごすようになったら、寝る時も息子の側で寝たり、息子に抱っこされてなでなでされたり、一番息子になついてくれました

ウィンドウ越しに、息子の手にじゃれてくれただけのことはあります(笑)

しかし、ネコはあくまでネコ

自閉症児かんしゃくをおこさないように

しかし、もちろんネコです、嫌な時にはすぐ噛もうとしたり、逃げたり、全く息子の思う通りにはなってくれません

それでも息子は、そのネコちゃんのことが愛おしいようで、それについて息子がパニックやかんしゃくを起こすことはありませんでした

それは当時の息子からしたら意外な反応で、安心した記憶があります。

毎日、ネコにべったり

自閉症毎日猫にべったり

息子は毎日、何かの合間合間でそのネコちゃんと過ごすネコタイムを何度も行うようになりました。

ネコのおもちゃで遊んでもあげますが、主に、抱っこして、なでなでして、息子のおもちゃ(プラレールやトミカを転がせて)で一緒に遊んでいました。

宿題する時、鉛筆のにおいを嗅ぎによく机に乗ってくるので、ひらがななどを教えてあげていました。

そして、毎日お風呂に入る時と寝る時は、抱っこして脱衣所や寝室に連れて行っており、ネコちゃん自身もすっかりそのルーティンに慣れ、そこで待ったり、一緒に寝て幸せそうです。

もう一匹のメス猫ちゃんは、脱衣所や寝室は共にしてくれません。

お世話をする気持ちが育った

切りやフラッシングなど時の抑える時や、予防接種に行くときも、怖がる猫にお兄さん風を吹かせて大丈夫と声を掛けたり。

12歳になった今では、猫トイレの始末や水替え、エサやりも毎日してくれるようになっています。

息子の変化

自閉症児がペットを飼ったら
  • ずっとネコの側にいる
  • ネコにくっついている間、動かず穏やかにしている
  • 結果、落ち着いて過ごす時間がかなり増えた
  • その結果、パニックやかんしゃくが減り、穏やかになった
  • さらにその結果、思い通りにいかない時の感情のコントロール少し上手くなった

ネコを迎えてから、ヤヘにいる時はずっとネコの側に行ったり、一緒にいるので、常に張られていたアンテナの電波が弱くなっているのは、すぐに実感できました。ネコちゃんに集中してくれているので、これは息子には、非常に意味があったと思いました。

また、思い通りにいかない時のパニックも少し減ったように思えました。息子の小学校に行く機会があったとき、小学一年生の時に担任をしてくれていた先生からも、ネコを飼って半年くらい経ったころ(その時はもう担任ではなかったが、支援学校なので一緒に活動をする機会も多かった)、最近息子くん変わったね!と興奮気味に言ってもらいました。

ネコを飼ってずっとべったりしていて穏やかになったこと、ネコを通して思い通りにいかない時の感情のコントロールを少しずつ学べているのかななど、少し立ち話をした記憶があります。

もちろん、ネコだけで改善出来たわけでなく、毎日の療育、認知面の発達なども関わっている結果です。

まとめ

今回は、自閉症の息子が今もべったりして幸せそうに一緒に暮らしているネコちゃんを、どんな経緯でお迎えして、どんな結果になったのかという一つの例としてお話をしました。

最後まで読んで下さって、ありがとうございました!